2018.05.21

横須賀美術館で「集え!英雄豪傑たち 浮世絵、近代日本画にみるヒーローたち」を見る

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横須賀美術館で「集え!英雄豪傑たち 浮世絵、近代日本画にみるヒーローたち」(900円:2018/4/28-6/17)を見た。タイトルの通り、武者絵をテーマにしてます。Webでは「江戸後期には、浮世絵の「武者絵」が爆発的な人気を呼び、多くの作品が生まれました。明治に入ると彼らの勇姿は、民族的な意識を高めるため「歴史画」という新たな絵画ジャンルへと組み込まれていきます。その後歴史画は、戦争の気配が強まるなかでその意義や性格を変えていきます」とのこと。時代を追って、その変遷を見てみようという趣旨らしい。美術家の野口哲哉さんが、解説のイラストを担当していて、これが妙にはまっており、なかなかな感じ。撮影用の絵も飾ってありました(写真上:高解像度版はこちら)。

江戸期の浮世絵というか武者絵、合戦を描いた大判の浮世絵に始まり、明治初期の古事記や日本書紀に題材をとった日本画や洋画、明治後半の歴史画と大正期から戦時下かけての歴史画の変遷を時代背景を追いながら、展示されていました。メインとなる絵の展示の後は、子供用の双六などに描かれた英雄豪傑達や戦前の教科書を取り上げ、甲冑や変り兜ときて、最後に野口哲哉さんの作品が並んでました。

英雄豪傑たちの絵画が、江戸時代は庶民の娯楽、明治は天皇制の浸透のため神話の絵画化、さらに明治政府が体制を整える過程で「歴史画」というジャンルができあがってきた、ということらしい。カタログの解説「『歴史画』の誕生 ―歴史教育のための一高絵画―」によると、明治22年に開校した東京美術学校(現在の東京藝術大学教)の授陣や当時の学生が「歴史画」を明治23~26年に描いていて、その作品が第一高等学校の納品されていたらしい。解説のタイトルにある「一高絵画」とは旧制高等学校の第一高等学校のことで、東京大学の教養学部の前身となる学校です。どうやら一高での歴史教育や倫理教育の一環として制作されたらしい。ここで言及している歴史画は、それこそ学校とか役所とか公共生の高い場所に掲げて、大勢で鑑賞できる絵画という意味になる。いわゆる巻物ではない。そういう意味での歴史画は明治20年代までは存在しなかった、という事実が興味深い。

このほかに、この展示会では、いくつか知らなかったことを教えてくれました。、印象に残ったのは、以下の2点です。まず、ヤマトタケルの妃、オトタチバナヒメのこと。古事記ではヤマトタケルの東征の途中に、オトタチバナヒメが荒海に身を投じて、海を静めるのですが、それが横須賀だったのね。そういうこともあって、オトタチバナヒメの投身する絵が展示されてました。もう一つは三浦義明という武将についてです。まったく知りませんでしたが、源平合戦で源氏に味方した三浦一族の長とのこと。89歳の長寿で、最後は平家方と戦って戦死するという、豪胆な武将です。そして、江戸中期には忠義の士というよりは、長寿のシンボルとして扱われるようになり、鶴とか亀と一緒に描かれるようになる、というのが面白いところです。

あと、今回の出品作品で気になったのが、その作品の提供元です。わりと見たことない作品が多かったのですが、当然、提供元もあまり知らないところです。「中右瑛」と「額縁のタカハシ」がわりと目立ってました。「中右瑛」さんは個人名でした。美術家で「なかうえい」と読むそうです。浮世絵の収集家としても高名な方です。「額縁のタカハシ」さんは名前の通り、額縁制作の企業です。歌川国芳などが描いた川中島の合戦図をかなりの数、出展しておりました。なんと、本店が長野市川中島町にある企業でした。


ところで、横須賀美術館には、初めて行ったのですが、美術館の建物は機能的で美しく、思っていたよりアクセスがよく、かなり満足度が高いです。特にアクセスについては、バスを使うので時間がかかったり、本数が少ないのではと心配しましたが、本数も多く、そんなに時間もかからず、料金も比較的安く済みました。今回は品川から京急で馬堀海岸駅まで行って、駅前の「馬堀海岸」というバス停から「観音崎行」のバスに乗って10分程度で「観音崎京急ホテル・横須賀美術館」に着きます。そこから徒歩2分程度で美術館入り口に到着。バス停のあたりから見ると下の写真のような感じです(高解像度版はこちら)。

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ちなみに、美術館の屋上に上がると、眺めがよく、目の前に浦賀水道が見えます(写真下:高解像度版はこちら)。

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5月25日から展示替えがあるので、天気がよければ、再訪したいです。

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2018.05.09

平塚市美術館で「岡村桂三郎展-異境へ」と「21世紀の美術 タグチ・アートコレクション展」を見る

平塚市美術館で「岡村桂三郎展-異境へ」(400円:2018/4/21-6/24)と「21世紀の美術 タグチ・アートコレクション展」(800円:2018/4/21-6/17)を見た。岡村桂三郎展は岡村の作成してきた巨大な作品が迷路のようにならぶ、ある意味、色彩的にはほぼ均一な世界。一方のタグチ・アートコレクション展はミスミという東証一部上場の商社を一代で築いた実業家である田口 弘氏の美術コレクションから、21世紀に制作された作品をメインに構成した展示です。平面から立体、インスタレーション的な作品やビデオまで、かなりバラエティに富んでいる。

岡村作品もほとんどが21世紀の作品なので、「21世紀の作品」という意味では同じなんですが、目に入ってくる印象はまったく違っていて、面白かった。まあ、今回は順序的にはタグチ・アートコレクションの後に岡村桂三郎展を見たのですが、21世紀芸術の幅の広さを堪能した、という感じかな。あるいは、明るい商店街を抜けた後に暗い洞窟に入ってしまって、ちょっと戸惑ったけど、目が慣れてくると洞窟もなかなか楽しい、といったところか。

タグチ・アートコレクションでは、21世紀美術のテーマとして「美術とは何か」という答えとして「私の考える美術」を表現するタイプと「私はなぜ私であるのか」というジェンダーやら民族的なモノを追求したタイプを見せている、とのこと。例えば、「私の考える美術」で分かりやすいのは青山悟の《About Painting 2014-2015》とかかな(写真下:高解像度版はこちら)。

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なんというか、割とストレートに20世紀の絵画をコメント付きで分類して見せているわけですが、その代表的な絵の模写らしきものの様子が変で、改めてよく見ると刺繍だったりする(写真下:高解像度版はこちら)。

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ちなみに「私はなぜ私であるのか」の代表は、加藤泉の立体作品《無題》のように思える(写真下:高解像度版はこちら)。

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岡村桂三郎展はタイトル通り「異境」へ来た、という感じがする。岡村の作品は巨大です。高さ1.3~3.5mの板を何枚かつなげて、大きいモノなら幅12mに達する。カタログの解説によると、杉の板をバーナーで焼いて黒くし、そこに膠とか方解末(方解石を粉末にしたものらしい)で下地を作り、そこに黄土を塗る、とのこと。ここまできて、ようやく油絵の場合のキャンバスができあがった段階となる。できあがった杉の板に木炭で下書きして、スクレーパーという鑿のような道具で線刻していくそうだ。

そこに刻まれるのは、龍だったり象だったり、巨大な魚だったりする。そして、あちらこちらに目が刻まれている。その巨大な作品が27点、床に直置きされて並んでいる。ほぼ壁のようになって、迷路のようになった会場を歩き回って鑑賞することになる(写真下:高解像度版はこちら)。

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ちなみに下の写真は龍(高解像度版はこちら)。タイトルは《龍-出現17-1》。サイズは235×660×8.3cm。2017年の作品。
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こちらは魚(写真下:高解像度版はこちら)。タイトルは《北冥の魚12-1》。北冥の魚の名前は鯤(コン)。荘子のテキストから取ったモノです。北冥は北の海で、鯤はそこにいる巨大な魚です。サイズは235×600×8.5cm。2012年の作品。

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こちらは夜叉(写真下:高解像度版はこちら)。タイトルは《夜叉13-1》。サイズは260(230)×540×8.2cm。2013年の作品。

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2018.05.06

埼玉近代美術館で「モダンアート再訪」を見る

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埼玉近代美術館で「モダンアート再訪 ダリ、ウォーホルから草間彌生まで 福岡市美術館コレクション展」(1000円:2018/4/7- 5/20)を見た。福岡市美術館が2019年3月までリニューアルのために休館しているので、その間にコレクションを日本各地で紹介しようというのが目的だそうだ。福岡には行ったことがないけど、今回の展示カタログによると福岡市立美術館は「1979年に開館し、古美術と近現代美術を二つの柱として1万6000点を超える作品を所蔵する九州屈指の大美術館」とのこと。そのコレクションのモダンアート的な67作品を、「身体」と「イメージ」をキーワードとする6つのセクションに分けて展示している。

「1931年に制作されたレオナール・フジタ(藤田嗣治)の《仰臥裸婦》から、2003年、ジグマール・ポルケの《Nessi Has Company II 》まで、およそ70年にわたる作品によって展示は構成されている」(カタログに掲載された解説「モダンアート再訪」から)とのこと。でもモダンアートはある一定期間に描かれた一連の作品かと言うと、そうでもない。具象から抽象なで、いろんな考えやら企みが渾然一体となって、モダーンの流れを作っていたわけで、それはおそらく、今までになかった表現を模索していく流れだと思える。というわけでこの展覧会から得られるのはより複雑なモノだ。曰く「私たちの再訪の目的はモダンアートを矛盾なき体系として理解することでない。むしろそこに認められる対立や綻びを通して、モダンアートの可能性と限界を検証するためである」(カタログからの引用)とのこと。

まあ、企画側の思惑は尊重するとして、個人的に面白かったのは「九州派」です。福岡を中心に活動したアンチモダンアート的な抽象画で、エネルギッシュで、絵具以外の素材を使っていたりする。こういう流れがあることを知りませんでした。同じ時期に阪神で活動した「具体美術協会」と並び称されているのが、気になります。どちらもアンチ東京です。

いずれにしてもモダンアートは終焉していて、そのため「再訪」となる。終わっているのだけど、次への道を幾筋も作ったのがモダンアート=近代美術ということらしい。

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2018.05.02

東京オペラシティ アートギャラリーで「日常生活|相笠昌義のまなざし」を見る

東京オペラシティ アートギャラリーで「日常生活|相笠昌義のまなざし」(200円:2018/4/14- 6/24)を見た。企画展の五木田智央展を見たあとで、常設展を見にいったら、すべて相笠昌義の作品で埋まっていた。ありがたいことです。相笠昌義の作品は、東京オペラシティ アートギャラリーの常設展でよく見ております。そのおかげで気になって、ぜひ全貌が見たい作家のひとりなのですが、望みが受け入れられたようです。

中学生のときに描いた作品から20代に作成したコラージュ作品やエッチング(作家蔵の作品)に始まって、30代となる1970年代から始まった《日常生活》という油彩画のシリーズが展示されている。全部で79点。作品は作家蔵か東京オペラシティ アートギャラリーの収蔵品で、1点だけ神奈川県立近代美術館の収蔵品があった。

「日常生活」というシリーズは、海水浴場や駅のプラットホーム、動物園、交差点、花見などのシーンで日本人の集団を描いたもの。年代と性別、職業がバラバラで、まあ老若男女を描いてます。それぞれがなんとなく孤立しているような、視線を交わしてないような、ところがあって、現代人の孤独を描いているような気がします。色彩は小豆色がかったくすんだ感じで、これも独特です。

今回の展示では2018年に描かれた作品も拝見できました。1939年生まれなので、今年は79歳なんですが、まだまだ活躍されるのでしょう。その辺も楽しみです。

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2018.04.24

東京オペラシティ アートギャラリーで「五木田智央 PEEKABOO」を見る

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初台の東京オペラシティ アートギャラリーで「五木田智央 PEEKABOO」(1200円:2018/4/14- 6/24)を見た。「PEEKABOO」は「いないいないばあ」みたいな意味らしい。五木田智央はモノクロで人物画を描く画家。プロフィールによるとアクリルガッシュという絵具でキャンパスに描く、とのこと。その絵は、美しいといよりは、グロテスクで、でもモノクロなのであまり毒々しくはなく、どこか対象から一歩ひいた感じがする絵です。そして登場する人物は男も女もアメリカのプロレスラーというか、のっぺりと大きな方々で、顔にも、何か塗られていたり、ピントが合わずにぼけていて、その表情も判然としない。

解説によると「60~70年代のアメリカのサブカルチャーやアンダーグラウンドの雑誌や写真にインスピレーションを得た作品を発表してきました」とのことで、何か元になる写真をベースにイメージを広げているのだろう。わりと捉えどころが無い、何が魅力なのか分からないけど、なんとなく見入ってしまう作品です。ちなみに撮影可でしたので、気になった作品は撮影しました。

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上の写真は展示スペースに入って最初に見る作品《Come Play with Me》。肉感的なんだけど、エロスは感じないように思える。かなり不気味に思えて、エロスはどこかにいってしまった、という感じ。不気味なのは顔というか目がポイントなんだろう。見開いているけど、どこを見ているのか分からない。まあ、こういったタイプの絵が並ぶ。


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ほぼ、こんな感じの絵が続くのですが、最後の方は、小さなドローイングを額に入れたものを大量に組み合わせた作品《Untitled》が割と圧巻で、ちょっと見入ってしまいました。

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部分を拡大すると下のようになります。

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そして、終わったかなと思って、通路に出ると、壁に大量のLPレコードジャケットが並んでいました。それぞれ、プロレスラーの名前とその似顔絵、おそらくは楽曲のタイトルが組になって描かれている。《Gokita Records》という作品。ジャケットは225点ある。なかなかいい味です。

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