2018.01.08

東京都庭園美術館で「装飾は流転する 『今』と向きあう7つの方法」を見る

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東京都庭園美術館で「装飾は流転する 『今』と向きあう7つの方法」(2017/11/18-2018/2/25:1100円)を見た。庭園美術館は本館(旧朝香宮邸)エレベーター設置工事のため、約半年間休館していた。まあ2017年の夏は閉館していたわけです。休館開けの美術展が「装飾は流転する」。美術において装飾とは何か、というかなり根本的な問いに対して、「装飾は流転する」と答えた感じですが、ちょっと分かりにくい。むしろ「Decoration never dies,anyway」という英語のタイトルの方がぐっとくる。

装飾美術というと、あるいは作品について装飾的というと、どうも純粋芸術的な立場から一歩引いたよう見えることがあるらしい。図録に、本展に参加しているアーティスト全員が装飾に対するそれぞれの立場とか、装飾的であると言われることへの感想を寄稿しているのだけど、装飾に対して世間は否定的だけど、そうは思わない、というテキストが並んでいる。まあ、展覧会の主旨にあった人選なんでしょう。一方で、装飾というモノは上っ面で、表層的で、本質ではないと世間一般は思っている、とも思っているようだ。確かにミニマルな作品の存在意義は装飾を省いた本質を示すという面もあるんだろう。でも個人的には、装飾しないことが装飾であるように見えてしまう。

ここでは、装飾というのは、純粋芸術に対立する概念でもないし、機能主義とも対立するモノではない、という立場をとっている。そんな立場を示すには、アールデコという装飾美術をちりばめた庭園美術館はふさわしい場所だろう。ちなみに出展する作家で、見たことがあって、名前を覚えているのは高田安規子・政子 だけで、そういう意味でも楽しみな展覧会でした。撮影可だったので、気に入った作品の写真を掲載しておきます。

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上の写真は、ヴィム・デルヴォワ(Wim Delvoye https://wimdelvoye.be/)の《ノーチラス》。ステンレス製です。とても精密で、解説によると「ゴシック建築の装飾がオウムガイの形に歪められている」モノらしい。

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同じくヴィム・デルヴォワの《二つの尾てい骨》。大理石です。

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山縣良和(http://www.writtenafterwards.com/)の作品は熊手とかぬいぐるみとかを組み合わせた作品。タイトルは《七服神》。ファッションデザイナーらしい作品。まあ、ほとんどインスタレーションですね。

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赤いコートの一群は山縣の《インバネスコート》。


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髙田安規子・政子(http://amtakada.com)は一卵性双生児のユニット。その作品は小さくて美しく、そして意表を突く。上の写真は、軽石を削って作ったローマの《凱旋門》。下の写真は《豆本の山》、さらにその下は《カットグラス》。解説によると「切子細工のガラス器に見えるが、実はゴム製の吸盤にカッティングを施したもの」とのこと。

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2018.01.04

2018年の年賀状解題

毎年、年賀状は前年に自分で撮影した写真から18点を適当に選んで組み合わせて作成してます。

2018年の年賀状に使った写真は何かというと……左上からざっと書いておきます。

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2017年4月に開催された「ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル『バベルの塔』展」の会場入口にあった看板です。場所は東京都美術館。しかし、日本にいて「バベルの塔」を目にすることができるとは思わなかったな。

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こちらも、日本で拝見できるとは思わなかった作品。2017年6月に開催された「アルチンボルト展」。場所は国立西洋美術館。地下にある会場入口にあった看板です。アルチンボルトの寄せ絵のうち春夏秋冬の4点で構成される「四季」と、「空気」「火」「土(大地)」「水」からなる「四大元素」を拝見できました。それぞれ持ち主が違うので、それを集めた国立西洋に感謝、というところかな。

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「ジャコメッティ展」は2017年7月に国立新美術館で開催。一部ゾーンが撮影可になっていて、そこで撮ったものです。ジャコメッティの彫刻や絵は、そこに存在する人物について「存在を限界まで削ぎ落としつつ存在を限界まで主張する」という暗黒舞踏的なあり方が好きなんだな。

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この写真は2017年10月に開館した草間彌生美術館の最上階に鎮座しているカボチャです。タイトルは「Starry Pumpkin」。美術館への入場は完全予約&滞在時間90分入れ替え制になっていてWeb経由で申し込みます。草間彌生さんは、1929年3月生まれだから、そろそろ89歳になるんですが、まだ現役。それも巨大な絵を描き続けているところが凄い。

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初台の東京オペラシティ アートギャラリーで開催された「片山正通的百科全書 Life is hard... Let's go shopping.」(2017/4/8- 6/25)での写真。片山正通はインテリア・デザイナー。そのコレクションを分類しちょっとカオス的に展示したもの。現代美術から家具、剥製、植物といろいろある。撮り放題だったので、撮ってしまった、という感じ。ちなみにこの展示で最も気に入っているのが、サカナクションの山口一郎氏のインスタレーションなんだけど、公開不可なのでした。

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伊丹市立美術館で見た「O JUN×棚田康司 『鬩(せめぐ)』展」(2017/7/8-8/27)から。棚田康司は彫刻、O JUNは画家です。同世代の作家で、20年来の交流があるとのこと。棚田作品の不思議な造形とO JUNの色彩感覚が好きなので、個人的にはかなり楽しめました。

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梅雨の時期に米子・松江を旅しました。異常気象のおかげか、晴天に恵まれて写真は撮りやすかった。上は境港の水木しげるロード。猫娘のブロンズ像です。

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アーツ千代田3331メインギャラリーで開催された佐藤直樹個展「秘境の東京、そこで生えている」(2017/4/30~6/11)で撮影しました。佐藤直樹さんが木炭で描いた作品。長さ150m。タイトルは「そこで生えている」。そのままですが圧巻の作品。

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豊田市美術館で見た「切断してみる。― 二人の耕平」(2017/1/14~4/2)から。作品的には階段にばらまかれた切断された衣類、というか切断された衣類をばらまく行為なんだろう。ちなみに階段横の壁はジョセフ・コスースの作品で「分類学」。

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NTTインターコミュニケーション・センターで見た「アート+コム/ライゾマティクスリサーチ 光と動きの『ポエティクス/ストラクチャー』」で撮影。発光する輪がゆらんゆらんと動き回るインスタレーション。

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松江を旅したときに、宍道湖の湖畔で撮影しました。6月17日ですが、19時半でこんな状態。そんな時間ですから撮影後に飲みに行ったら、どこも満席で苦労した。予約してから撮影しましょう、という教訓が残りました。ちなみに夕陽の沈む山陰の向こう側に島根原発があるわけです。

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KAA神奈川芸術劇場で2017年4月に開催された「詩情の森―語りかたられる空間」で撮影しました。会場は名前の通り劇場で、そこの椅子とか舞台とかを外して、展示に使ったものらしい。スポットライトの使い方が良くて、写真映えする。上の写真は藤堂という彫刻家の作品の一部。

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「片山正通的百科全書」に飾ってあったシロクマの剥製。そこの角を曲がるとシロクマがかまえている、という状況はかなり危険ですが、剥製だから問題ない。

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宍道湖の湖畔にある籔内佐斗司の「宍道湖うさぎ」。後ろの建物は島根県立美術館。

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渋谷区立松濤美術館で見た「三沢厚彦 アニマルハウス 謎の館」(2017/10/7-11/26)で撮影。三沢厚彦は彫刻家で樟を鑿と彫刻刀を使って彫り込み、着彩して等身大の動物に仕上げる。

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「建築倉庫」という建築模型の博物館というのが、品川区天王洲にある。そこで撮影しました。建築模型は実際に建てる前に、完成イメージなどを模型にしたもの。見ていると、なかなか面白い。

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葉山にある神奈川県立近代美術館葉山館。その入口の前に鎮座するイサム・ノグチの「こけし」。元は、今は亡き神奈川県立近代美術館鎌倉にあった作品です。この美術館、夏場にいい企画をやっていることが多いというのが私の印象です。そのいい企画を見るために、葉山までJR逗子駅からバスで行くのですが、当然、夏場なので海水浴客にまみれることになる。

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松江城のお堀を船で巡るツアーで、船から堀の周りを撮影しました。掘り割りは街中にも巡らされていて、人の家の縁側を抜けていくような感じです。松江にいったら、是非、乗ってみてください。

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2017.12.18

竹橋の国立近代美術館で「没後40年 熊谷守一 生きるよろこび」を見る

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竹橋の国立近代美術館で「没後40年 熊谷守一 生きるよろこび」(2017/12/1-2018/3/21:1400円)を見た。熊谷守一はよく分からない画家です。以前はオレンジ色の枠線を使って、色数は少ないけど、印象的な組み合わせで作品を描くひと、というイメージでした。あるいは文化勲章を辞退した仙人のような方。

しかし昨年、2016年に国立新美術館で開催された「はじまり、美の饗宴展 すばらしき大原美術館コレクション」(2016年1月20日~4月4日)で拝見した熊谷守一の「陽が死んだ日」で、その印象は破綻した。同じ作家の作品とは思えなかったのだ。「陽が死んだ日」は数えで4歳の次男、陽の死顔を描いた1928年の作品。タッチは荒々しく、色彩はあふれかえっていて、死に対する激情がたたきつけられている。この作品と晩年のオレンジ色の枠線を使った作品群を単純に結ぶことができない。まあ、その謎が解けるかもしれない、とこの美術展を見に行きました。

守一は1880年(明治13年)に生まれた。1900年に東京美術学校(現東京藝大)に入学。同級生には青木繁がいる、とのこと。1902年に父、1910年に母が亡くなり、故郷の岐阜県に戻っているが、5年後、1915年(大正4年)に再度上京している。この時期の絵は暗い。「暗闇で対象がどのように見えるか」というテーマで描いているそうだ。

赤い輪郭線が現れるのは、1940年前後で、主に風景画に現れてくる。1950年には人物画にも現るようになる。カタログの解説によると、マティスやピカソ、ナビ派の影響がある、とのこと。実際、1940年当たりから、輪郭線の中は同じ色で塗られるようになる。色を整理して、より効果的な色使いを目指しているように見える。1950年代以降は、手法は固定していくのだけど、描く対象は、より身近なものになる、といったところです。

謎も解けたので、すっきりした展覧会でした。

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2017.12.10

埼玉県立近代美術館で「ディエゴ・リベラの時代」を見る

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埼玉県立近代美術館で「ディエゴ・リベラの時代」(2017/10/21-12/10:1200円)を見た。ディエゴ・リベラは1886年生まれのメキシコの画家。1957年に亡くなっている。メキシコで民族色の強い壁画を描いた美術家、というイメージです。奥さんがフリーダ・カーロで、ドロドロの愛憎劇を繰り広げていたりする。まあ、メキシコ絵画の世界の英雄なんでしょう。でもディエゴ・リベラといえば壁画なので、壁画を持ってくるわけにもいかんでしょうから、どういった展覧会なのだろうか、と疑問を抱えながら北浦和まで行ってみました。

「メキシコ国立芸術院(INBA)との共同企画によるこの展覧会では、初期から晩年にいたるリベラの画業を油彩画、素描、版画など約30点の作品でたどります。また、リベラの師でありメキシコ近代絵画を拓いたべラスコ、同時代のメキシコの様々な美術動向、リベラと関わりのあったレオナール・フジタや北川民次ら日本人画家も紹介し、メキシコの近代美術が掲げた夢を振り返ります」とのことです。壁画は当然来てなかったけど、映像資料で紹介されておりました。

全体としては、リベラの初期の絵や、リベラに関わった人達の作品で、リベラという美術家の全貌を見せるだけでなく、その時代のメキシコ美術の雰囲気が伝わってくる展示でした。

面白かったのは、リベラの初期の作品。パリに渡って、ピカソなどとの交流から、キュビズムの作品を残しています。これがなかなか板についていて、完成度が高い。しかし、後の壁画にどのように関わってくるのか、一端抽象的な作風を完成させてから、壁画の具象表現に戻っていくところが、面白いところです。抽象と具象を行き来するのは、割といろんな美術家にある傾向のようにも思えるのですが…。

もう一つ、興味深いのが、リベラと藤田嗣治との関係です。リベラがパリに滞在したころ、1914年に藤田と交流があった、とのことで、その後、リベラがメキシコに戻って壁画を描くようになってから、1932年に藤田がメキシコに訪問しています。このときはリベラがニューヨークに壁画を描きにいっていたため、会うことはなかったのですが、それなりの影響は受けていたんじゃないかと思います。まあ、勝手な憶測ですが、藤田が《秋田の行事》という壁画を描いたのは1937年だそうで、リベラの巨大な壁画を見て、その影響が多少はあるんじゃないかと思うわけです。

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2017.12.05

草間彌生美術館で「草間彌生美術館開館記念展 創造は孤高の営みだ、愛こそはまさに芸術への近づき」を見る

草間彌生美術館で「草間彌生美術館開館記念展 創造は孤高の営みだ、愛こそはまさに芸術への近づき」(2017/10/1-2018/2/25:1000円)を見た。名前の通り「前衛芸術家」草間彌生の美術館です。美術館のパンフレットには「草間作品および関係資料の展示を通じて草間芸術の発展に寄与することを目的に2017年に開館」とある。

入場は日時指定の予約制です。予約なしに行っても入館できません。予約はWeb経由です。あっという間に埋まるので要注意。ちなみに、私が2017年12月に行ったときは2017年10月1日に予約してます。開館は木・金・土・日曜で、月・火・水はお休み。入場時間は1日4回あって1回90分で入れ替えとなります。1回の入場者数は当初50人でしたが、70人に増えています。50人で見た感じですと、かなり余裕があります。30分程度でほぼ全部見終わると思います。70人でも90分をフルに使って見るのであれば、全く問題ないと思われます。

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場所は建物は上の写真のようにわりと細長いビル。地上5階地下1階です。白い建物で、1階の入口はガラス張りで、白い水玉模様が描かれています(写真下)。1階は受付で、2階と3階がメインのギャラリー。4階はさらに部屋があって、その中で2分間入れ替えで見る展示がある。5階は半分が関連資料のある資料室で半分が天井のない屋外ギャラリーとなっている。各階の移動は階段とエレベーター。階段は上り専用。写真撮影は4階と5階はOKでした。

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ちなみに、入口前のコンクリート打ちっぱなしな感じのところで入場を待ちます。中に入って待つことはできなようです。まあ、天気が良ければ気にならないけど、冬場は寒いね。

今回の展示は、色鮮やかなアクリル絵具で描いた《わが永遠の魂》というシリーズ、制作年が2009~2017年の作品16点と、シリーズ《愛はとこしえ》という2007年制作のモノクロのドローイング27点、そして鏡の部屋に、黄色の地に黒い水玉があるカボチャを並べたインスタレーション、カボチャの立体作品というラインナップです。

割と良かったのが、4階にあるカボチャのインスタレーションです。扉のある暗い部屋の中に入って2分間、拝見するもので、一端完全に暗くなり、徐々に明るくなっていきます。この徐々に明るくなる感じがよろしい。

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Web経由で予約しないといけないのですが、1000円だし、うまく見れば、ほぼ独占的に鑑賞できたりするので、なかなかいいシステムだと思います。半年ごとに展示を変えるそうなので、また行ってみたいと思っております。

蛇足ですが、ミュージアムショップというか1階の売り場では、巨大なカボチャのがま口が売られていて、ちょっと気になりました。4万5000円です。

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これも蛇足ですが、草間美術館の道路の向かい辺りに和算の天才、関孝和のお墓があったり、裏手の方に新宿区立漱石山房記念館があったりして、興味深いところです。

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