2018.04.08

上野の森美術館で「VOCA展2018 現代美術の展望─新しい平面の作家たち」を見る

Pict1

上野の森美術館で「VOCA展2018 現代美術の展望─新しい平面の作家たち」(600円:2018/3/15-3/30)を見た。VOCAはVision Of Contemporary Artの略で、1994年に始まった新人画家の展覧会。平面作品を扱うが、厚さは20cm以内であればOKなので、彫刻っぽい作品もあるし、液晶ディスプレイをはめ込んで映像を使ったインスタレーション的な作品も登場する。

「全国の美術館学芸員、ジャーナリスト、研究者などに40才以下の若手作家の推薦を依頼し、その作家が平面作品の新作を出品するという方式により、全国各地から未知の優れた才能を紹介していきます」という方式で、出展者を選んでいる。推薦者は多少変わるようだが、所属先というか、たいがいはどこかの美術館の学芸員か大学の美術系学部教授といった感じ。たまに独立系のキュレーターの方もいる。ちなみに審査員もそこそこ変わる。VOCAは今年で25年目、つまり25回目だそうだけど、図録によると20年目までは固定で、その後、徐々に変わって、25回目の今年で完全に入れ替わったそうだ。そして4回審査委員を務めたら、原則交代ということにした、とのこと。審査員も美術館に所属する学芸員がメインで、おそらくは公正をきすため

ちなみに、第一生命保険がスポンサーになっていて、「毎回VOCA賞、VOCA奨励賞受賞作品を所蔵し、本社1階にあるロビーでの展示、第一生命ギャラリー(東京都・有楽町)での定期的公開」している。

受賞者などの情報はWebにあるので、とりあえず、気になった作品だけ、メモしておく。

まず、碓井ゆいの《our crazy red dots》。今年のVOCA賞です。日本の国旗、日の丸弁当、赤のドット、草間彌生などのイメージを刺繍とか布を縫い込んで表現した素材をコラージュ的に縫い合わせて、1枚にまとめた作品。クレージーキルトという技法だそうです。作品の左下のあたりに若い頃の草間彌生がいたりするのがよろしい。

次は髙田 安規子・政子の《ジグソーパズル》。髙田 安規子・政子は一卵性双生児のユニット。一見どこにでもあるはずなのに、よく見るとここにしかない作品、インスタレーションを作成する。記憶に残っている作品で、好きなモノというと、苔を加工して迷路にしたモノを俯瞰で撮影した作品《庭園迷路》とか(意味分からないね)。今回、出展したのは切手付きのエアメールの封筒。小さいから、よく見ないと、何がジグソーパズルなのか分からない作品です。

野村康生の《Dimensionism ―両界―》は数学的です。「野村康生は、現代数学や物理学の重要課題である「高次元」の可視化に取り組む作家である」とのこと。両界というと両界曼荼羅が頭に浮かぶ。確かにそのようにも見える。高次元の可視化とは、1つデータが例えば4つの項目で構成されていた場合、2次元や3次元では視覚化できないので、違いが分かるように2次元や3次元で表現する手法のことのようです。まあ、フラクタルでフィボナッチな絵です。

林葵衣の《声の遠近法》は不思議な作品です。高さ15cmで4mの長さの白いもので、巻物のようなんだけど、そこに描かれているのは赤い何かで、よく見ると唇のように思える。実際、「声を発しながらカンバスに口紅の痕跡をとどめる」というものらしい。

森本愛子の《唐草文様》は比較的分かりやすい。主題は唐草文様。絵の中では、どこかの庭で2人の和服を着た女性と植物が描かれていて、和服の文様と植物が連続して、どこから植物でどこから和服の文様なのか、混然としているというものです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.03.22

名古屋市美術館で「真島直子 地ごく楽」を見る

Ph1_nagoya

名古屋市美術館で「真島直子 地ごく楽」(2018/3/3-4/15:1200円)を見た。真島直子は1944年生まれの美術家。名古屋生まれとのこと。それで、名古屋市立美術館で個展を開くことになったようだ。

「「地ごく楽」は、「地獄」と「極楽」を一語にした作家の造語」とのこと。「じごくらく」と読むんでしょう。ともかく、細かく描かれているのだけど、サイズは大きい。そして鉛筆で描かれた作品はどこかで見たことがあったのだけど、これだけバリエーションがあるとは、思わなかった。カラーの油彩もあれば、立体的なオブジェもある。敢えて言うなら、草間彌生的なエネルギーを感じます。

カタログには真島直子のここまでの履歴について、インタビューを含めた記事で、その人間関係を詳しく描いている。ともかく壮絶な人生を生きてきた人であることが分かる。真島直子は眞嶋建三という名古屋で活躍した画家の娘。眞嶋建三の作品は名古屋市立美術館に収蔵されているらしい。眞嶋建三という美術家は、何よりも作品を制作することを優先する人だったそうだ。その妻は当然、生活維持が大変で、美術で生計をたてることに疑問を持っている。そんな母と美術家を目指す娘の関係はなかなか大変なものだったらしい。東京藝大に入学しても生活費は自分で稼がなければならなくて、ヌードモデルもやっていた、とのこと。卒業後は結婚したけど、結婚したことで、家事よりも制作を優先したい自分に気がつき、早々に別居して、10年後に離婚。このほか、友人が焼身自殺をしていたり、美術家の工藤哲巳の最後を看取ったり、と猛烈なスピードで疾走している感じ。

作品は、どれも印象的なんですが、初めて見た立体のオブジェクトが強烈に印象に残っている。初期の作品はグロテスクなんですが、最近の作品は髑髏があしらわれているのだけど、色彩がなんとなく可愛いくすっきりしている。ちなみに、初期の立体作品は、工藤哲巳の作品を思い出させる。

この展覧会は、足利市立美術館に巡回するそうです。会期は2018年4月24日から7月1日まで。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.03.15

東京オペラシティで「谷川俊太郎展」を見る

P0jpg_2

初台の東京オペラシティで「谷川俊太郎展」(2018/1/13-3/25:1200円)を見た。谷川俊太郎は1931年生まれの詩人。詩人と詩人の作品をベースに美術館で展覧会をやってみる、というある意味、挑戦的で画期的な展覧会でした。十分、面白かった。まず、どんな展覧会でも「開催にあたって」というようなテキストが必ず、会場に入ったところに掲示されるモノですが、この展示会では、下のような谷川さんの詩でした。

P1

まあ、このテキストを読むと、詩と詩人だけで、展覧会をするには、そこそこ知恵を絞る必要があったらしい。そして十分に絞られた知恵だったと思うわけです。

最初の部屋は、暗幕に囲われていて、壁に沿ってディスプレイとスピーカーが並んでいる。ディスプレイには、ひらがなが1文字だけ表示されて、スピーカーからその音が出る。小山田圭吾(コーネリアス)の音楽とインターフェイスデザイナー中村勇吾(tha ltd.)の映像による、インスタレーションです。例えば「かっぱかっぱらった」という詩を1文字ずつ表示して、その音が出力される。その表示する場所は結構、ランダムで、部屋の真ん中で聞くと、あちこちから音がする。目の前のディスプレイに表示されたと思ったら、次は背中の方から音がしたりする。空間的です。

次の部屋には谷川の「自己紹介」という詩の1行を、大きな棚の側面や柱に大きな文字で表示している。そして、そのテキストに関連する、写真やモノがその柱や棚に展示されている。例えば「私は背の低い禿頭の老人です」という1行には谷川さんの等身大の写真が用意されている(写真下:高解像度版はこちら)。

P2jpg

展示物は、雑貨的なモノや、撮影した写真、谷川のところに届いたハガキとか、わりと雑多なんだけど、まとめて見ると谷川の人柄が伝わってくる感じがする。

今回の展覧会に図録はないけど、関連書籍として「こんにちは 谷川俊太郎」(ナナクロ社、1800円)が用意されている。小山田圭吾と谷川俊太郎の対談とか、今回の展覧会に登場した詩とかが掲載されてます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.03.12

損保ジャパン日本興亜美術館で「FACE展2018」を見る

西新宿の東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で「FACE展2018 損保ジャパン日本興亜美術賞展」(2018/2/24-3/30:600円)を見た。FACE展は「本人制作の公募展などで未発表の平面作品」を募集して、審査のうえ、約70点の作品を入選作品として選び出し、そこからグランプリなどの作品を選出するコンクールです。今年で6回目だ。少なくとも2014年から見てます。登場する作品は立体ではなく、動画でもなく、共同制作の作品でもない。一応、厚さとか重さには上限がある。厚さは最大10cm、重さは30kgまでです。ちなみに年齢も国籍も不問で、日本で手続きができればOK、とのこと。年齢不問なので、過去には日本画で主に風景画を描いていた画家が現代的な人物画で出展したりした。ある意味、何が出てくるか分からないところがあって、面白い。

今回も、面白かった。まあ、優秀賞とかにピンとこない作品があったけど、グランプリはかなりユニークな作品だったし、入選した作品も好みの作品が多かった。グランプリは仙石 裕美の《それが来るたびに跳ぶ 降り立つ地面は跳ぶ前のそれとは異なっている》(写真下)。大きさは194×162㎝とそこそこ大きい。圧倒的なデッサン力です。長い縄で縄跳びをしている裸足の人物が妙に筋肉質で、おそらくは女性で、縄を回しているのが男性に見える。次の作品が見たいところです。

G1

次が優秀賞をとった松本 啓希の《生命の痕跡》。こちらは194×130.3cmと、グランプリ作品ほどではありませんが、そこそこ大きい。おそらくは鴨か何かなんでしょう。画面をはみ出すように描かれていて、妙な迫力がある。ちなみに日本画の画材を使っているところも気になる。

G2

今回の傾向で、面白かったのは、版画がいくつかあったこと。2016年のグランプリが遠藤美香の「水仙」という版画作品であったことが影響しているのかもしれない。まあ、グランプリでも優秀賞でもないのですが、割と面白い。下の作品は黒石美奈子の《対》。銅版画・エッチング・アクアチント、とのこと。

G5

そして、松井亜希子の《Blood circulates through the body》。こちらは「エッティング・アクアチント・ドライポイント」とあります。

G6

ほかにも版画作品がありました。現代美術としての版画をあまり見る機会がないので、新鮮な感じです。どこかの美術館で、現代版画の作品をまとめて紹介してくれないかな、と思います。是非よろしくお願いしたいです。

もう一つの傾向は、日本画の画材を使った作品がわりと増えたこと。数は確認していないけど、優秀賞の鳥の絵もそうですが、こちらも面白い作品がいくつかあった。下の作品は矢島史織の《Monster #15》。シェル美術賞展2015で準グランプリを受賞した作家です。

G3

それからもう1点。池上真紀の《命の器》。カバです。普通は日本画で描いてない対象ではないかと思います。

G4

日本画の画材を使って、現代的なモチーフに取り組んでいる作家の作品もまとめて見てみたい、と思うわけです。まあ、来年も楽しみです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.03.02

国立新美術館で「20th DOMANI・明日展」を見る

国立新美術館で「未来を担う美術家たち 20th DOMANI・明日展 文化庁新進芸術家海外研修制度の成果」(2018/1/13-3/4:1000円)を見た。 DOMANI・明日は文化庁が主催する、若手美術家の展示会です。「将来の日本の芸術界を支える人材の育成のため、若手芸術家が海外の大学や関係機関等で行う研修を支援する「新進芸術家海外研修制度(旧・芸術家在外研修)」を1967年度から実施しており、今年で半世紀を迎えます。また、本研修の成果発表の機会として1998年から「DOMANI・明日展」を開始し、今年度で第20回目となります」とのこと。若手とはいっても一定の評価や実績を備えた作家が登場します。ここの展示は基本、撮影OKなので、気になった作家の作品を写真付きでメモっておきます。

まず、中谷ミチコ。一見、妙に立体的な絵だなあ、ガラス絵かしら、とか思ってしますのですが、その実態はレリーフでした。粘土で彫像を作って、石膏で型を取り、粘土を取り出したところに着彩して、樹脂を流しこんでできあがった作品です。樹脂に黒い顔料を混ぜているそうです。下の写真の作品は《空が動く》というタイトル。大きさは83×163×6cm。厚さがあります。

Nakatani03

部分をクローズアップすると下のようになる。

Nakatani02

ちなみに、裏から見ると、確かに石膏っぽい。

Nakatani01

次が盛圭太。妙に大きな、直線が多いドローイングだな、と思って見てました。例えば下の写真もそうです。タイトルは《Bug report》らしい。

Mori01

近寄って見ると、糸でした。糸でドローイングする、という作品です。

Mori02

ストレートな油絵もありました。猪瀬直哉の作品です。タイトルは《快楽の園(「未修復―ボッシュへのオマージュ」「修復完了」「修復中」)》。

Inose02_s


インスタレーションもありました。中村裕太の作品は、「モースの手遊び」。陶片と古い写真や印刷物が並んでます。モースとは、明治に来日して大森の貝塚で縄文土器を発見した動物学者のモースです。モースは陶片の収集もしていて、さらに、由来の不明な陶片の「あてっこ」をする会に参加して、楽しんだらしい。その展示です。これって美術展示なのか、というと展示のヴィジュアルが確かに美術でした。そんな不思議な展示です。

Nakamura02


| | コメント (0) | トラックバック (0)

«森美術館で「レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル」を見る