« 東京都美術館で「生誕300年記念 若冲展」を見る | トップページ | 東京ステーションギャラリーで「川端康成コレクション 伝統とモダニズム」を見る »

2016.05.02

府中市美術館で「ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想」を見る

Ph01


 府中市美術館で「ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想」(2016/3/12-5/8:700円)を見た。府中市美術館は京王線府中駅から徒歩20分ぐらいのところで、都立府中の森公園の敷地のなかにある。この公園は旧米軍府中基地の跡地を利用した公園で、そこそこ広い。美術館はその北の端にある(写真上:高解像度版はこちら)。バスでも行けますが、まあ天気は悪くなかったので、桜を見ながら歩いていきました。

 建物は2階建てで、展示スペースは2階にある。今回の展示のキーワードは「ファンタスティック」だそうだ。カタログでは「本展の目的は、この現代の日本において、あえてこの片仮名の言葉を通して江戸絵画の魅力を再発見することにある」としている。そういう意味では江戸絵画の奇想系、若冲とか蕭白、蘆雪の作品が登場するし、司馬江漢の遠近法を持ち込んだ絵とか国芳の地獄図もある。幻想系もあるし、見たことのないはずの動物、例えば虎、や行ったことのない風景、中国や西欧の絵画もある。範囲は広い印象だ。その意味で飽きないし、そこそこ発見もあった。

 その上、4月10日までと4月12日からの前期と後期に分かれて、作品が完全に入れ替わる。そのため、なんとまあ入場券には2回目の半額割引券付きでした(下)。 ちなみにスマホアプリの「みゅーぽん」を使って20%引き、つまり540円で入場しました。後半は350円で拝見できるというので、電車賃はかかっても行く気になってます。

Ph00

 展示構成は
 1.身のまわりにある別世界
 2.見ることができないもの
 3.ファンタスティックな造形
 4.江戸絵画の「ファンタスティック」に遊ぶ
 となっております。

 1の身のまわりにある別世界、ではいわゆる花鳥風月的な絵を中心に扱ってます。まず月を描いた絵から始まり、「太陽」「気象」「黄昏と夜」「花」といったジャンルが並んでいきます。終わりの方で、「天空を考える」というコーナーがあって、原鵬雲による気球の絵「気球図」(徳島市立徳島城博物館)が展示されたりしますので、単純な花鳥風月というわけでもないようです。前期の絵では山口素絢の「四条河原夕涼図屛風」が印象深かった。「6月7日から18日の間、夕暮れに催される四条河原の夕涼み」を描いた6曲1隻の大作で、幅369×高さ166.7cmもある。風俗画なんですが、いろんな階級の人物が描かれ、物売りの屋台のほかに人魚の見世物小屋とかあって面白い。そして、遠景の処理でシルエットだけをぼんやりと描いていたりして、近代的な表現手法を感じます。

 2の見ることができないもの、では「海の向こう」「伝説と歴史」「神仏、神聖な動物」「地獄」「妖怪、妖術」の構成。西洋の風景を描いたガラス絵かた始まり、南蛮図屏風と続く。ここだと英一蝶の「かぐや姫図」が好きです。墨で描かれた竹から、色鮮やかな十二単みたいなのを着たかぐや姫が現れて、天に向かう感じです。原在中の「飛竜図」も印象に残りました。顔と頭は竜なんだけど他は鯉、という寸足らずな感じの竜らしきものが描かれている。解説によると、鯉が滝を登り切って、竜へと変身する途中を描いた、とのことで、珍しいものらしい。絵の精密な感じに目が持って行かれました。

 3のファンタスティックな造形、では「視点を変えて『ファンタスティック』と感じさせる『造形』に注目したい」としている。ファンタスティックな造形とは、金、霞といったものらしい。ここでは「柳橋水車図屛風」を例に解説されている。柳橋水車図屛風は川、水車、橋、そして柳が描かれる。そして不思議なことに橋や水車、空は金箔とか金泥で描かれる。そこにくねくねとした柳と川が、銀か何かで描かれる。銀は酸化して黒くなっている。黒から金へのモノトーンで画面が構成されているのが素敵だ。

 4の江戸絵画の「ファンタスティック」に遊ぶ、ではちょっと分類不能な絵が並ぶ。どれもユニークでいい作品です。前期では巨野泉祐(おおのせんゆう)の「月中之竜図」が印象に残った。月の中に竜がいる絵なのだけど、濃紺のバックに金で竜と雲を、銀で月を描いている。竜が妙に精緻に描いているのがいい。

 全体としてキュレーションの腕の良さが感じられる展示です。ほとんどが個人蔵の作品なので、見逃すと、滅多にお目にかかれない可能性がありそうで、後半を見に、府中に行く気になってます。カタログは2400円で、最近見たカタログの中では、最も解説の充実した、かつ読みやすいものでした。買う価値はあると思います、

 企画展示のあと、常設も拝見。「明治・大正・昭和の洋画」というタイトルでした。高橋由一の桜の絵「墨水桜花輝耀の景」と長谷川利行の「花」が印象的。鶴岡政男、小山田二郎、桂ゆきとかもあって、わりと多彩です。谷中安規の版画もあって、面白かった。

追記

後半も見てきました。前半に見たチケットのおかげで入場料が半額になり350円です。安いです。それにほとんど混んでいないし、ゆっくり拝見できます。

後半で気になったのは、まず小泉斐(あやる)。前半にも3点、展示されていて気になっていたのですが、後半で展示された「竜に馬師皇図屏風」はかなり独自なモノでした。横長の画面にとぐろを巻く竜と馬師皇という仙人が穏やかに笑っているのが描かれている。竜とバックのモヤモヤした感じは曾我蕭白風で、人物は多少気味が悪いけど蕭白の描く狂人風ではないけど、なんとなく変な笑い顔です。ちなみに、この穏やかだがどこか気持ち悪い笑い顔は、小泉斐の他の作品にも登場する。解説によると、曾我蕭白に影響を与えたという高田敬輔の孫弟子にあたるそうで、その関係で蕭白との関連があるのかもしれない。

このほか、長沢蘆雪の「朧月図」、河鍋暁斎の「波乗り観音図屛風」がよかったんだけど、「釜から出る駕籠図」という作者不明の作品も気になりました。「釜から出る駕籠図」は縦長の画面で、下半分に火がたかれ湯気がでている巨大な釜から駕籠かき2人と提灯を持った女性、誰か乗っている駕籠があらわれたところで、上半分が逆さまに描かれた男性5人がその駕籠を見上げている絵です。解説によると「幽霊は逆立ちする格好や生きている人とはさかさまになった様子で描かれることが多いという」とあり、ここでは現世を逆さまにして、幽霊を普通に描いているらしい。なんとも不思議な絵でした。

|

« 東京都美術館で「生誕300年記念 若冲展」を見る | トップページ | 東京ステーションギャラリーで「川端康成コレクション 伝統とモダニズム」を見る »

art」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/11441/63467829

この記事へのトラックバック一覧です: 府中市美術館で「ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想」を見る:

« 東京都美術館で「生誕300年記念 若冲展」を見る | トップページ | 東京ステーションギャラリーで「川端康成コレクション 伝統とモダニズム」を見る »