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2016.07.17

三菱一号館美術館で「From Life―写真に生命を吹き込んだ女性 ジュリア・マーガレット・キャメロン展」を見る

三菱一号館美術館で「From Life―写真に生命を吹き込んだ女性 ジュリア・マーガレット・キャメロン展」(7/2-9/19:1600円)を見る。キャメロンは19世紀、写真の黎明期に活躍した女流写真家。今年は生誕200年とのこと。英国のヴィクトリア・アンド・アルバート博物館が所有しているキャメロンのオリジナル・プリントを中心に展示している。

19世紀前半はタルボットやダゲールが写真の開発にしのぎを削っていた。それが一段落してネガ・ポジ方式が多少は普及したころ、1863年末にキャメロンが写真撮影を開始した。そのとき、48歳。おそらくは子育ても一息ついて、亭主は英国植民地にあるプランテーションの経営で忙しく……、といったところで、娘夫妻からクリスマス・プレゼントにカメラをもらって、撮影を始める。英国上流階級じゃないとあり得ない話です。

撮影を始める、といっても、その頃は今のように簡単なものではない。写真家が自分でフィルムに相当する感光剤を塗布したガラス板を用意して撮影し、化学処理を施して自分でネガを作り(現像)、当然だけどプリントも自分でやる。コロディオン湿板方式と呼ばれる方法で、そこに同時期に開発された鶏卵紙にプリントしていた。印画は密着方式なので、プリントサイズはガラス板の大きさになる。下の写真は会場で撮影したもの(理由は不明ですが会場の一部で撮影可でした)。1865~1866年に作成した作品で、プリントサイズは縦35×横28cm程度とわりと大きい。カタログに掲載された解説によると、キャメロンは1865年から15×12インチ(約38×30.5cm)のガラス原板が使えるカメラを入手している。その前は、つまりクリスマス・プレゼントにもらったカメラは12×10インチ(約30.5×25.2cm)で、そこから一回り大きなサイズが撮影できるカメラに乗り替えたわけだ。まあ、どちらにしても、三脚必須のカメラに幅30cmのガラス板を装填して、撮影するわけで、かなり大変な作業なのだ。

Ph01

キャメロンの作品の特徴は、芸術性です。同時代の写真の用途は、記録用で、被写体は異国の風景とか、民族とか、あるいは商業的な肖像写真が中心です。記録という目的があるので、写真はピントがきちっと合っていて、プリントも隅々までキレイなものが多い。一方、キャメロンの作品は、聖書に題材を求め、衣装や小道具にも、凝った作り込んだ作品が多く、肖像写真もその人の内面に迫るような作品を残しています。ただし、ピントは甘く、ブレやアレの目立つ作品が多いのも事実。それでも、ピントの甘さはソフトフォーカス的な効果があって、人物写真に深みを与えていると思います。

今回の展示では、キャメロンのオリジナル・プリントのほかに、同時代の作家の写真作品と、キャメロンの影響を受けた写真家の作品も拝見できます。同時代の作品は、ほとんどが記録系なんですが、ルイス・キャロル(チャールズ・ラトウィッッジ・ドジスン)がいるのが面白いところ。影響を受けた作家としては、ピーター・ヘンリー・エマーソン、アルフレッド・スティーグリッツ、サリー・マンが登場します。確かにスティーグリッツが撮影した画家のジョージア・オキーフの肖像はキャメロンの影響を見て取れるし、サリー・マンの作品もキャメロンの系譜として見ると、納得のいくものがあります。

カタログは2300円でした。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の学芸員、マルタ・ワイスの解説がしっかりしていて、読みやすいです。

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