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2017.04.22

上野の森美術館で「VOCA展2017」を見る

Voca2017

上野の森美術館で「VOCA展2017 現代美術の展望─新しい平面の作家たち」(2017/3/11-3/30:600円)を見た。VOCAはThe Vision of Contemporary Artの略。平面作品(といってある壁面から20cm以内の厚さは許されている)の新人賞なんだけど、「全国の美術館学芸員、ジャーナリスト、研究者などに40才以下の若手作家の推薦を依頼し、その作家が平面作品の新作を出品するという方式により、全国各地から未知の優れた才能を紹介していきます」というユニークな方式の賞です。今年で24年目。第1回(1994年)の受賞者には福田美蘭がいるし、出展した作家には大竹 伸朗、丸山 直文がいたりする。第2回の受賞者には大岩 オスカール幸男がいる。というわけで、今となってはそこそこメジャーな作家が受賞していたり、受賞しないまでも出展していたりするので、このところ、できるだけ見るようにしています。

まあ、受賞した方々の作品や評論はWebにあるので、特に気になった作家をメモっておきます。


抽象画では浅野有紀と国松希根太(http://www.kinetakunimatsu.com/)、村上華子(https://www.hanakomurakami.net/)。

浅野有紀は日本画の手法で抽象表現に取り組んでいる。解説によると、絹に墨と藍で「うつろいゆく光や大気のゆらぎ」を描いている、とのこと。雲なのか霧なのか、不定形なぼやっとしたものが描かれている。作家がリアルに目で見た様子を描いているのだけど、作品を見る側からは、抽象的な表現に思える、というのが面白い。

国松希根太の作品は木の板に描いたもの。板に刻まれた年輪による縞模様から、地平線や水平線などの自然の風景をあぶり出し、描いている。板の地肌から想起できる風景を描いているのだけど、存在しない風景が抽象的な表現に見えてくるのが、面白い。

村上華子の作品を見たとき、何なのか理解できなかった。「オートクローム」という20世紀の初頭に流行した写真の方式に使う感光板を使った作品とのことだ。1920年に製造された感光板を入手して、撮影せずに現像したもの。この現像結果が感光板の状態で大きく違っているらしい。そこに100年近い時間の重みがあって、何かが写っている、というのがなんとも不思議。

鈴木基真は彫刻家だそうだが、今回の作品は写真。制作した立体作品を撮影したもの。撮影した画像を巨大なスライドにして、ライトボックスのうえに置いている。立体作品は、アメリカの郊外にある一軒家の入口。おそらくは木造で、階段があり、ポーチがあって、ガラスがはめ込まれた扉がある。そして夜景で、入口の扉に灯りがともっている。解説によると、粘土で制作したものらしい。手の跡が、かなり効果的でいい味を出している。

田島大介の作品は、ケント紙にマンガに使われる証券用インクを用いて丸ペンで描かれている。だから素材はマンガと同じ。ただしサイズは縦112.2×横194.1cmと大きい。そこに高層ビルと看板と屋根と足場とクレーンが入り乱れている状態をペンで描いている。大友克洋的に緻密な、目をそらすことができなくなりそうな作品です。

照沼敦朗(http://www.terunuma-atsuro.com/terunuma_atsuro-Official_HP/top.html)の作品は絵の中にディスプレイを埋め入れて、映像を流している。かなり異様な作品。作者は生まれつき視力が低いそうだ。その作者の分身キャラクター「ミエテルノゾム」が見える/見えないをテーマに作品の中でさまざまなかたちで登場している。タイトルは「ミエテルノゾムの夢製造伝奇」。

Nerholは「グラフィックデザイナーの田中義久と、彫刻家の飯田竜太によるアーティスト・デュオ」とのこと。作品は写真と彫刻を合体させたようなもので、写真でも彫刻でもない。まあ立体作品ではある。「3分間にわたって連続撮影した200枚のポートレートを撮影順に積み重ね、カッターで切り取り起伏を付けていく」というもの。下の写真は初台のオペラシティアートギャラリーで先日拝見した「片山正通的百科全書」(2017/4/8-6/25)で撮影したNerholの作品(この展示では撮影は一部を除いて許可されていた)。VOCAには一人の男性の写真を使った作品が6点並んでいて、おそらくは元となる写真のかたまりは、同じだが、カットの仕方が違っているように見える。カットの違いで表情が違うのが面白い。

P1070661


矢野祐貴の作品「かみくり」は日本列島における天地創造となる、イザナギの尊とイザナミの尊が杖で撹拌しているところを描いているらしい。中央にイザナギの尊とイザナミの尊を配置し、その周りは、ミケランジェロによるシスティナ礼拝堂の天井にあがかれた「最後の審判」が雲となって描かれている。この雲が妙にもこもこしていて、立体的で面白い。どうやらウレタン樹脂を使っている模様。


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