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2017.11.29

千葉市美術館で「没後70年 北野恒富展」を見る

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千葉市美術館で「没後70年 北野恒富展」(2017/11/3- 12/17:1200円)を見た。北野恒富は1880年に金沢に生まれ、大阪で活躍した画家。1947年に67歳に亡くなっている。展覧会の説明では「東京の鏑木清方、京都の上村松園と並ぶ、大阪を代表する美人画家として活躍を続けました」としている。鏑木清方と上村松園の個展を見たが、北野恒富の個展を見たことはなかった。断片的に、いくつか代表作を見てきただけで、なかなか全体像がわからないままでした。そういうわけで、今回の展覧会はかなり期待してました。そして、うれしいことに、ほぼ期待通りのものでした。

北野恒富は日本画で一貫して美人画を描いているのだけど、前期と後期で作風ががらりと変わっているように見えた。北野恒富の作品で見た覚えがあるのが、前期の代表作、大正2年(1913年)に描いた2曲1双の屏風絵「道行」と後期の代表作、昭和11年(1936年)に描いた2曲1双の屏風絵「いとさんこいさん」。

「道行」は近松門左衛門の「心中天の綱島」をテーマにした作品で、カタログによると「遊女小春と紙屋治兵衛の死出の旅が象徴的に描かれている」。屏風には男女2人と、からすが金地の上に3羽描かれていて、黒と金の色彩の対比が印象深く、退廃的で死の臭いが漂っている。

一方、「いとさんこいさん」はどろどろしたものがなく、色調も明るい。おそらくは十代のお嬢さんが2人、談笑しているところを描いている。カタログの解説によると「本作は、谷崎潤一郎作『細雪』と共通する世界観があることがしばしば指摘されてきた」としている。

つまり明治末から大正期は「画壇の悪魔派」と呼ばれ、退廃的で妖艶な女性を描き、昭和期はモダンですっきりとした、「はんなり」した作風に変化している。この中間にあるのが大正の後半で、今回の展示では第2章「深化する内面表現」で展示されている。特に「淀君」という大阪城の落城直前の淀君を描いた作品がもの凄く、ぞっとする。作風も日本画的になっていく。悪魔派から「はんなり」に時間をかけて移行していくのが見えてくる。

今回の展示では、恒富のもう一つの顔である、グラフィックデザイナー的な面についても、展示している。ほとんどが美人画を中心にしたポスターで、ビールとか日本酒、和服の宣伝です。このなかで、森村泰昌が恒富の作品を再現した高島屋のポスターも展示されているのが興味深いところ。

カタログには森村泰昌の、同じ大阪で美術家として生きた、北野恒富についてのエッセイも掲載されている。小出楢重と谷崎潤一郎、北野恒富について、論じているのですが、これもなかなか面白い。谷崎の小説の挿絵を小出も恒富も描いていて、この3人は縁が深いようだ。森村は細雪を取り上げながら、谷崎、小出、恒富がいた大阪の雰囲気を説いているのですが、大阪に縁の無い私にはあまりよく分からない。分からないけど、細雪を読めば、少しはその世界に近づけそうな気がする。というわけで、細雪を読んでみようかと思う今日この頃です。ちなみに千葉市美術館の展示は展示替えがあるので、後半もいってみようかと思います。

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2017.11.22

国立西洋美術館で「北斎とジャポニズム」を見る

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上野の国立西洋美術館で「北斎とジャポニスム―HOKUSAIが西洋に与えた衝撃」(2017/10/21-2018/1/28:1600円)を見た。「西洋近代芸術の展開を“北斎とジャポニスム”という観点から編み直す、日本発・世界初の展覧会です。国内外の美術館や個人コレクターが所蔵するモネ、ドガ、セザンヌ、ゴーガンをふくめた西洋の名作約220点と、北斎の錦絵約40点、版本約70点の計約110点を比較しながら展示します」とのこと。

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そこそこよく知られていること、例えば上の看板のように、北斎漫画にある相撲取りとドガの踊り子のポーズは似ていて、北斎漫画を見たドガが取り入れたとか、陶器やガラス工芸の図案に北斎の植物画や昆虫、鳥などのモチーフが使われているとか、その辺をより多くの作品を使って見せてくれるのかしらと思っていたら、ほかにも風景、特に富嶽三十六景の神奈川沖浪裏の波や、富嶽三十六景そのものもの影響も展示されていて、なかなか面白かった。

風景の影響のところで、興味深いのが、主体となる山の前に林や竹林を置いて、山を隠すというか、隙間から山が見えるような描き方は、北斎作品が西欧にわたるまではなかった、というあたりです。モネの作品で、手前に林がある状態でその先の風景を描いたものがあるのだけど、モネが北斎の作品で竹林の向こうに富士山がある作品を持っていたことから、そこから着想を得た、としています。

まあ、なかには強引な感じのする部分もありましたが、割と説得力のある展示だったと思います。
 


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2017.11.19

Bunkamura ザ・ミュージアムで「オットー・ネーベル展」を見る

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渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで「オットー・ネーベル展」(2017/10/7-12/17:1500円)を見た。オットー・ネーベルはスイスで活躍したドイツ出身の画家。1892年に生まれ、1973年に亡くなっている。「1920年代半ばにはワイマールに滞在し、バウハウスでワリシー・カンディンスキーやパウル・クレーと出会い、長きにわたって友情を育みました」とのこと。日本初の回顧展だそうだ。回顧展というのは「作家の全生涯における作品や活動を総覧する展覧会」です。カンディンスキーやクレーが好きなので、見てみることにしました。

最初はクレーの亜流かな、とも思いましたが、そんのこともない。クレーとは違ったアプローチで、クレーと同じような対象を描いている作品があるので、一瞬、亜流かも、という気になったのかもしれない。単純な形を扱っているのに描線の書き込みが激しいというか細密なのだ。

そして色彩の探求がクレーより分析的に見える。特に「カラーアトラス」という考え方が面白い。カタログによると「1931年10月、ローマに到着したネーベルは南国の強い光の下で色彩の輝きに開眼し、訪れた各都市の色彩、光、響き、ニュアンスの詳細な記録にとりかかった」とある。訪問した土地で見た風景から色を抽出して、正方形で表し、より印象深いものは大きく描くというもので、スケッチブックの1枚に1都市、作成しているようだ。そして、その色彩のスケッチから絵画を構想し、描いていく。さて、ネーベルが東京とか京都を訪れたならば、どんなカラーアトラスを作成したんだろうか?

まあ、展示としては、クレーやカンディンスキー、シャガールの作品も、関連作品として拝見できるのがうれしい。

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2017.11.12

東京オペラシティ アートギャラリーで「単色のリズム 韓国の抽象」を見る

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初台の東京オペラシティ アートギャラリーで「単色のリズム 韓国の抽象」(2017/10/14-12/24:1200円)を見た。1970年代に生まれた韓国の抽象画「単色画(ダンセッファ)」の画家19人の作品を紹介しています。「リズミカルな筆の動き、反復する点や線、画面ににじむ絵具と東洋的な色彩感覚、韓紙や麻布などの素材が生む質感」をテーマにしたシンプルな抽象画の一群です。李禹煥の《線より》(写真下)で始まるのですが、李禹煥以外の作家はすべて知らなかったので、とても新鮮でした。

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なぜか、日曜は撮影OKとのことでしたので、写真撮影してきました。以下、特に気になった作品を載せておきます。

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郭仁植の《Work 86-KK》。1986年の作品。大きさは縦199×横300cmとなかなか大きい。繭玉のようなものに墨を塗ってはんこを押す、という作業を延々と繰り返したような作品。繭玉はかなりの数があって、大きさや形が微妙に違っているように見える。繭玉を押すときのリズムが伝わってくる感じ。

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権寧禹の《無題》。1982年の作品。大きさは157.0 x 122.0cm.。紙で作った輪を大量に紙に貼り付けたもの。光が当たると影ができて、そこが線や黒く塗った部分のように見える。絵画の場合、紙と墨とか絵具で表現するのだけど、紙だけで表現して、抽象表現を成立させている。

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丁昌燮の《楮(Tak) No.85-011》(右)と《楮(Tak) No.87015》(左)。No.85-011は1985年の作品。No.87015は1987年の作品で大きさは227.8×162.2cm。解説によると「韓紙を水につけて繊維を分解し、それをキャンバス上に広げて定着させる」という作品。

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崔明永の《平面條件 99115》。1999年の作品で大きさは182.0 x 227.0cm。ずっと眺めていると、人の顔がたくさんあるように見えてくる。なんとなくパウル・クレーの作品を思い出す。解説によると黒く塗ったキャンバスを白く塗るのだけど、黒の線は塗り残した部分らしい。

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2017.11.08

練馬区立美術館で「没後20年 麻田浩展―静謐なる楽園の廃墟―」を見る

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練馬区立美術館で「没後20年 麻田浩展―静謐なる楽園の廃墟―」(2017/9/28-11/19:800円)を見た。「本年は麻田が没して20年という記念の年にあたります。初期から晩年まで、約140点の油彩画、版画等を通し、麻田の画業を振り返る展覧会です」とのこと。麻田浩の作品は、あちこちの美術館で見たことがありますが、まとめて見るのは初めて。さらに20年前に自殺した、ということは知らなかった。

幻想的というかシュルレアリスムなんだけど落ち着いた淡い色調の独特な絵を描くアーティストという印象でした。まあ、その印象は合っていたけど、当初はアンフォルメルな不定形の抽象画を描いていたが、ヨーロッパへの長旅を経てシュルレアリスム的な表現、あるいはキリスト教的なモチーフを描くようになる、となかなか紆余曲折があって、面白かった。その後,12年間パリで活動するも、ウイルス性肝炎を患い日本に戻る。どうやら、晩年に向けて病と戦いながら作品を描いていたらしい。

作品的には、晩年に向かうほど宗教的なイメージが暗喩的になり、隠されたメッセージがあちこちにあるように思える。各モチーフは精密が描かれているのだけど、配置や組み合わせが幻想的で、配色がその幻想さを増幅しているように見える。

ちなみに展示会のカタログは青幻舎から「麻田 浩 静謐なる楽園の廃墟」として販売されてます。お値段は税込で3240円。今回、展示された全作品のほか、参考図版として「版画、デッサン類を除いて現在知られる麻田浩作品をできる限り網羅した」としている。この参考図版がわりと面白くて、麻田浩作品を年代順に一覧できるので、その変化が分かりやすい。

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2017.11.06

水戸芸術館でデイヴィッド・シュリグリー「ルーズ・ユア・マインド―ようこそダークなせかいへ」を見る

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水戸芸術館で、デイヴィッド・シュリグリー「ルーズ・ユア・マインド―ようこそダークなせかいへ」(2017/10/14- 2018/1/21:800円)を見た(写真上:高解像度版はこちら)。デイヴィッド・シュリグリーといえば「I'M DEAD」という剥製を使った一連の作品が印象的です。犬とか猫の剥製が「I'M DEAD」という立て看板を持って立ち上がっているものです。アート作品というより悪い冗談という気もするけど、自分が死んだらこういう剥製にしてもらえるのもいいなあ、と個人的に思ってます。無理だけど。まあ好きなアーティストだし、東京には巡回しないようだし、しょうがないので、はるばる常磐線に乗って水戸まで行ってきました。

なんと展示会は撮影可、とのこと。でも展示スペースのあちこちに「NO PHOTOGRAPHY」というのが貼ってあって(写真下)、ちょっと躊躇しながら撮影しました。

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会場の入口は「DEATH」をあしらったもの。この扉は作品なのかどうなのか、よく分かりませんが、少なくとも触って押して中に入れます。なぜDEATHなのかは不明。ここをくぐるとTシャツとドローイングの展示です。ドローイングは下手なんだけど味があるというか…。壁に貼られた大量のドローイングと壁と壁の間にワイヤーを張ってドローイングが印刷された大量のTシャツがぶら下がってます。

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そんな感じで、作品が並んでいきます。全部撮影したけど、特に気に入った作品を紹介いたしましょう。

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なんかうるさく動いているのが、いるなあと思ったら、2本のペンを持ったロボットでした。このロボットが白い紙の上をぐるぐる動きながら、何かを描いている。アーティストというタイトルの作品。壁にはどうやら完成した作品が貼ってあるようです。

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何も置いてない展示台があって、その先の壁一面にドローイングが貼ってあります。タイトルはおばけ。なんでもドイツの国立近代美術館で展示されたもの、とのこと。ドイツの国立近代美術館内の鍵のかかる部屋に彫刻を置いて、子供から大人まで、いろんな人がスケッチする。その結果が壁に貼ってある。しかし、彫刻はない。破棄されているそうだ。そして、もちろん彫刻の写真もない。謎の彫刻については老若男女が描いたデッサンから想像するしかない、という作品。

このほか、アニメーションとか、ロンドンのトラファルガー広場にいくと拝見できるらしい、巨大なブロンズ像「Really Good」のバルーン版とかがあります。なんとなくにやりと笑える作品群です。モンティパイソンを思い出させる感じ。それが英国の伝統なのかも。

カタログを買って帰ろうかと思ったのですが、12月に発売、とのことでした。残念です。


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2017.11.04

2017/10/23-10/27の気になったニュース:哺乳類における「硫黄呼吸」を発見など

東北大、哺乳類における「硫黄呼吸」を発見
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2017/10/press20171025-02.html

「東北大学大学院医学系研究科の赤池孝章(あかいけ たかあき)教授らのグループは、ヒトを含む哺乳類が硫黄代謝物を利用した新規なエネルギー産生系(硫黄呼吸と命名)を持つことを、世界で初めて明らかにしました。本研究は、哺乳類が酸素の代わりに硫黄代謝物を使用してエネルギー産生していることを明らかにした科学史に残る画期的な発見です。今回の新しい「硫黄呼吸」メカニズムの発見は、老化防止・長寿対策、肺気腫や心不全などの慢性難治性呼吸器・心疾患、がんの診断・予防・治療薬の開発に繋がることが期待されます」とのこと。この研究では硫黄代謝物を処理できないマウスを作ってそのマウスが正常なマウスに比べて成長が悪くなることも実験している。

三菱重工とJAXA、H-IIAロケット37号機で気候変動観測衛星「しきさい」と超低高度衛星技術試験機「つばめ」を打ち上げ
http://www.jaxa.jp/press/2017/10/20171027_h2af37_j.html

しきさいは「多波長光学放射計(SGLI:Second generation Global Imager)を搭載し、地表面、海面等から放射される近紫外から熱赤外までの幅広い波長域で雲、エアロゾル、植生、地表・海面温度、積雪・海氷分布などを観測し、気候変動による地球環境変化の監視や温暖化予測の改善に貢献すると共に、赤潮や黄砂といった生活環境の把握や漁業の効率化等に役立てられる」。

一方のつばめは「軌道高度にして300kmより低い軌道は「超低高度軌道」と呼ばれ、これまでの人工衛星にと
って未開拓の軌道領域であり、この超低高度軌道を利用する最初の地球観測衛星が超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS: Super Low Altitude Test Satellite)である。超低高度での飛行を可能にすることで、地上により近くなるため、光学画像の高分解能化、観測センサ送信電力の低減、衛星の製造・打上げコストの低減などが期待されている」とのこと。

リコー、デジタル一眼レフカメラの高性能化に対応した高性能スターレンズシリーズを開発
http://news.ricoh-imaging.co.jp/rim_info/2017/20171027_023371.html

PENTAXの新レンズ。来年の発売前に海外のカメラ展示会で公開するとのこと。「HD PENTAX-D FA★50mmF1.4 SDM AW(仮称)」と「HD PENTAX-DA★11-18mmF2.8 (仮称)」。


ソニー、35mmフルサイズミラーレス一眼カメラ「α7R III」を発売
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/201710/17-1025/

「ソニーは、進化した新世代の画像処理エンジンBIONZ XとフロントエンドLSIを採用するなど、信号処理システムを一新し、大幅に向上した画質と高速性能を約657gの小型ボディに凝縮したレンズ交換式デジタル一眼カメラ 『α7R III』を発売します」とのこと。フルサイズ有効約4240万画素センサーで、世界最高5.5段の光学式5軸ボディ内手ブレ補正機能を搭載。7R IIユーザーなので気になる。

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