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2018.06.11

府中市美術館で「長谷川利行展 七色の東京」を見る

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府中市美術館で「長谷川利行展 七色の東京」(900円:2018/5/19-7/8)を見た。長谷川利行は1891年に京都に生まれて、1940年に東京で死んだ画家。個人的には、上野の不忍池弁天島に「利行碑」があって気になってました。あと竹橋の近代美術館の常設で、利行の《カフェ・パウリスタ》とか《岸田国士像》とかを何度か見たことがあって、それらの作品を見る限り、かなり個性的なタッチで、ほぼ突然現れた画家というイメージです。利行が誰かをフォローしたわけでもなく、さらにフォロワーも登場しなかった。まあ、日本のゴッホ的な言い方もあるようですが、あんまりピンときません。あえて言うとフォービズムで、作風からするとマティスの方が近い気がします。生き方とかはゴッホの悲劇的な部分は似通っているかもしれませんがね。

利行は20代は短歌を詠んで歌集も出版したが、30代からは東京に出てきて、絵を描き始めたらしい。利行はともかく型破りな画家で、独学でありながら、35歳で二科会に初入選するなどして、世に知られるようになるが、アトリエをかまえて絵に専念するわけでもなく、山谷の木賃宿に泊まりながら、街中で絵を描いていたらしい。それこそ、絵を描いて、売って、木賃宿に止まって、を繰り返すような画業だったらしい。売れないときは、絵描き仲間のアトリエに転がり込んで、絵を描くということで、定住しない画家だったらしい。

今回の回顧展では、デビューから死の前年まで、描いた作品が、ほぼ年代順に展示されている。多少の違いはあるけど、なんとなく、そのタッチは変わらないし、色彩の鮮やかさも変わらない。晩年に向かうほど、白っぽくなっているように思えるけど、大きな違いではない。利行の作品は、いつでも利行の作品という感じだ。


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2018.06.03

太田市美術館・図書館で開館1周年記念 佐久市立近代美術館コレクション+「現代日本画へようこそ」を見る

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太田市美術館・図書館で、開館1周年記念 佐久市立近代美術館コレクション+「現代日本画へようこそ」(300円:2018/5/3-6/10)を見た。太田市美術館・図書館については、どちらかというと、建物に興味があったのですが(写真上:高解像度版はこちら)、現代日本画というキーワードが気になって、群馬県太田市まで行ってみました。まあ、あと栃木県足利市の足利市立美術館で真島直子の「地ごく楽」が名古屋市立から巡回してきているというので、東武伊勢崎線に乗って、足利市&太田市行きの小旅行をしてみました。太田市は北千住から東武線の特急りょうもうに乗って、1時間程度で着きます。

太田市というと駅前にスバルの工場がある、というイメージしか無かったのですが、駅前には鎌倉幕府を倒した新田義貞のブロンズ像かなにかが立っておりました。

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その左手に太田市美術館・図書館がありました。まずは建物から。設計は平田晃久。開館は2017年。太田市立の図書館兼美術館。1階にはカフェがある。外観というか、建物のなかに入って思うのは、巻き貝のような建物だな、ということ。3階建てですが、屋内には階段らしいものが少なく、各階は緩いスロープでつながっている(写真下:高解像度版はこちら)。

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「5 個の鉄筋コンクリート構造の箱と、その周りをぐるぐる回る鉄骨構造のスロープによってできています」とのこと。屋上やテラスには土が盛られ、芝生があり、植物が植えられている。「人工と自然が混ざり合う丘のような風景」と表現してます。確かにできたての古墳のよううな感じもある。屋上から駅の方を見下ろすと下の写真のようになる。

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この建物のユニークな点は、サインも独自なところ。建物内の案内などに使っているフォントが面白かったので、調べてみたらオリジナルのフォントでした。グラフィックデザイナーの平野 篤史によるもので、見やすく、印象に残るデザインです。最初、建物の名称を示す下の看板的なものを見たときは、単純にシンプルでいいなあ、という印象でした(写真下:高解像度版はこちら

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建物のなかに入ると、諸々のサインが、このフォントで作成されていて、少々驚きました。下地が白のところに、このフォントがあると妙に目に飛び込んでくる(写真下:高解像度版はこちら)。

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さて、美術展の「現代日本画へようこそ」ですが、日本画とは何か、というなかなか奥の深い問いを発し、その答えを展示のなかから探し出せるようにしている、とまあ思いました。この美術館の展示スペースは3階建ての建物の各階にあって、1階のスペースがそこそこ広く、2階、3階と小さくなって行く感じです。1階から2階へと上がっていくスロープも展示場所になっているのがユニークなところです。

「現代日本画へようこそ」では1階の展示スペースに「現代日本画の冒険者たち」として現代の日本画、2階に「現代日本画の先駆者たち」として、1950年代後半から1970年代までの作品を展示してます。「冒険者」で出展している作家は市川裕司(1979)、内田あぐり(1949)、岡村桂三郎(1958)、谷保玲奈(1986)、山本直彰(1950)の5人です。名前のあとのカッコ内は生年です。一方の「先駆者」では一番若いのが平山郁夫(1930)で、そのほかに東山魁夷(1908)、片岡珠子(1905)といったところ。平山郁夫以外は明治・大正生まれの方々だ。

先駆者にしても冒険者にしても、おそらく共通するのが、日本画の画材を使用していることだと思うのですが、どうなんだろう。今となっては日本画の定義は日本画の画材を使っていること、となるのかもしれない、でも画材は同じでも、テーマはまったく違うかというと、そうでもない。風景や自然、宗教的なもの、人物など、テーマにも大きな違いはないが、作品から受ける印象はかなり違っている。より抽象化が進んでいるといえば、そうだし、表現手法を開拓している、といえばそうかもしれない。むしろ、気にするべきは先駆者の作品と、先駆者の前の世代の違いだろうか、と思えた。結局、過去の作品と同じモノは作れない美術家の方々のサガを感じてしまうのでした。まあ、だから面白いのですが…。

展示作品は佐久市立近代美術館のコレクションで構成されているのですが、現代の日本画家のうち、市川裕司と内田あぐりについては新作を展示している。市川裕司の新作は1階と2階の間のスロープに、内田あぐりの新作は3階の展示室に、それぞれ展示されている。市川裕司の作品は白い壁にリンゴが埋まっている《rooms》という作品(高解像度版はこちら)。

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ちょっとクローズアップすると下のように見える(高解像度版はこちら)。
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それから《世界樹IV》(写真下:高解像度版はこちら

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展示スペースは広くないけど、新作を展示したり、現代の作家については、インタビューして、そのビデオを流したりして、なかなか工夫されてます。

ちなみに佐久市立近代美術館というところも、知りませんでしたが、なかなかのコレクションです。佐久市出身の画商、由井一二の蒐集したもの、とのこと。


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