熱海のMOA美術館で「信長とクアトロ・ラガッツィ 桃山の夢と幻 + 杉本博司と天正少年使節が見たヨーロッパ」を見る
熱海のMOA美術館で「信長とクアトロ・ラガッツィ 桃山の夢と幻 + 杉本博司と天正少年使節が見たヨーロッパ」(1600円:2018/10/5-2018/11/4)を見た。「リニューアル記念特別展」とのこと。MOA美術館は1982年(昭和57年)に開館したそうで、まあ、そこそこ古くなったので、2016年にリニューアル工事を始めて2017年に再オープンしている。全体的に照明が暗く、落ち着いた感じになりました。作品の鑑賞に集中できる、という印象です。展示ケースの向かい側に黒い漆喰の壁を配置して、ガラスケースへの映り込みを減らすとか、そういった細かな工夫もあるようです。こういったデザイン面のリニューアルを実施したのが杉本博司と榊田倫之の主宰する新素材研究所。それでリニューアル記念として、 杉本博司の企画展となったようです。
下の写真が展示風景です。
こちらも展示風景です。野々村仁清の《色絵藤花文茶壺》。国宝です。
今回の企画展は、杉本さんがライフワークとしている劇場シリーズの撮影でイタリアのヴェネト州ヴィチェンツァにオリンピコ劇場を訪れたとき、およそ430年前に日本から4人の少年が使節として訪れたことを知ったことから始まる、とのこと。4人の少年とは天正遣欧少年使節のこと。信長が本能寺の変で没する直前に日本を旅立っている。
信長と天正遣欧少年使節の関係は深いようだ。信長はローマ教皇に献上すべく、狩野永徳に描かせた《安土城図屏風》を天正遣欧少年使節によってローマへ運ばせている。
今回の企画展では、その前半となる「信長とクアトロ・ラガッツィ 桃山の夢と幻」では信長像(3点ありました)や茶器、安土城に関わる屏風、南蛮図屏風が並ぶ。例えば下の屏風絵は《南蛮人渡来図屏風》。今回、MOA美術館の収蔵品は撮影可でしたので、掲載しておきます。こういった作品群を見ると、安土桃山時代の美術作品の特徴として、キリスト教伝来による南蛮的なモノの影響が挙げられるように見える。おそらくは日本人が初めて西洋画にふれ、その技法を教わったのは、この安土桃山時代なのだろう。
ちなみに、この手の南蛮系美術品は神戸市立博物館とか長崎県美術館、長崎歴史文化博物館あたりの所蔵品が多いのですが、今回は南蛮文化館という私立美術館からもいくつか出展されていていて、ちょっと興味深かった。
後半の「杉本博司と天正少年使節が見たヨーロッパ」では杉本さんのモノクロ写真とキリシタン関連の作品や資料が並んでます。基本的に4人の少年が見たものを、杉本写真で追体験する、という企画のようです。
というわけで《ピサの斜塔》。杉本作品の建築シリーズです。あえて、ピントを外して撮影した作品です。
左側が《パンテオン、ローマ》。満月の夜に天窓から入る光だけで撮影したというもの。
《天国の門》が展示されている部屋。初期ルネサンスの代表的な彫刻作品を撮影したもの。フォレンツェの大聖堂に付設するサン・ジョヴァンニ洗礼堂の北側の扉として作られた作品だそうです。
この部屋を出ると、《月下紅白梅図》が置いてありました。こちらは杉本さんの作品で、光琳の紅白梅図屏風をベースにした作品です。
この展示では全く触れていないのですが、狩野永徳の《安土城図屏風》を探すプロジェクトも進行中です。クラウドファンディングのMakuakeで募集中で「杉本博司と探す! 安土城図屏風 探索プロジェクト」というものです。
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