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2019.03.31

東京国立近代美術館で「福沢一郎展 このどうしようもない世界を笑いとばせ」を見る

東京国立近代美術館で「福沢一郎展 このどうしようもない世界を笑いとばせ」(1200円:2019/3/12-5/26 )を見た。福沢一郎は1898年(明治31年)生まれの洋画家。出身は群馬県富岡市で、富岡市には富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館がある。亡くなったのは1992年(平成4年)。福沢の作品は東京国立近代美術館の常設展でよく見ている。例えば下の《Poisson d'Avril(四月馬鹿)》は1930年の作品ですが、ユーモラスなシュールレアリスムという感じ。日本の初期のシュールレアリスムの作家、とまあ思ってました。

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ちなみに下の絵も、福沢一郎の作品で《牛》。1936年の作品です。東京国立近代美術館の常設展で見ていたのだけど、改めて、上の作品と同じ作者ということに気がつきました。まったく作風が違うし、ユーモアというよりはアイロニーという感じだし。

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とういうわけで、戦前から戦後まで、あるいは大正の終わりから、昭和、平成の初期まで活躍した作家の作品を年代順に拝見することになる。戦前は前衛美術家、戦中には瀧口修三と共に治安維持法違反の疑いで検挙され、一応、戦争協力へと進むのですが、かなり暗い感じ。

戦後は一転して、明るい色調の作品が目立ってくる。特に年米とメキシコを訪れたあとの絵はパワーがあって、いい感じです。下の絵は《埋葬》というタイトルで1957年の作品。この展覧会のなかで、唯一撮影が許可されてました。中南米旅行の集大成とのこと。あまり埋葬という感じがしないけど、黒く太い線で区切ったなかを鮮やかな原色が塗られていて、ステンドグラス風で面白い。

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ちなみに、この作品をベースにJR東京駅の京葉線連絡通路にある巨大なステンドグラスが作成されている、とのことです。

 

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2019.03.27

上野の森美術館で「VOCA展2019 現代美術の展望─新しい平面の作家たち」を見る

上野の森美術館で「VOCA展2019 現代美術の展望─新しい平面の作家たち」(600円:2019/3/14-3/30)を見た。VOCAはVision Of Contemporary Artの略で、1994年に始まった新人画家の展覧会。平面作品を扱うが、厚さは20cm以内であればOKなので、彫刻っぽい作品もあるし、写真もある。そして、推薦人が必要で、40歳以下という年齢制限もある。ほぼ同じ時期に開催されるFACE展は推薦人はなく、年齢制限もないことを考えれば、若干不自由だけど、まあ賞の選考は楽だろうね。両方を見て思うのは、VOCA展は大きい作品が多く、FACE展は割と小さい。一方で、FACE展は版画はあるけど、VOCAに版画はなかった、といったところか。あと、FACE展は写真撮影がOKなのだけど、VOCAはNGです。

何回か見てきたけど、今回は印象に残っている作品が少ない。そして印象には残ったが、好きだと思える作品になると、さらに少ない。FACE展はそこそこ気になる作家がいるのだけど、VOCAはほとんどない。

笹山直規の作品、《Lines of Death》はおそらくは車にひかれて、即死した死体を描いている。印象には残ったけど、続きが見たいかというと微妙な感じ。

一方、3人組の「目」の作品、《Acrylic Gas》はアクリル絵具と樹脂を溶かして混ざりあったところで固定したものらしいのだけど、抽象画になっている。かなり不思議な作品です。これは続きが見たい。

あとクスミエリカの作品《Metropolice》も気になった。写真をデジタル的にコラージュして作成しているようだけど、ほぼ同じ構図で夜と昼のイメージを作品にしていて、2枚の作品の対比が普通に面白かった。

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2019.03.20

トーキョーアーツアンドスペース本郷で「霞はじめてたなびく」を見る

トーキョーアーツアンドスペース本郷で「霞はじめてたなびく」(無料:2019/2/23-3/24)を見た。トーキョーアーツアンドスペース本郷は、以前、トーキョーワンダーサイト本郷と呼んでいた施設で、諸々の思惑の果てに、現在は東京都現代美術館の運営する若手アーティスト支援のギャラリー的なモノになっているようだ。つまり一貫して東京都の事業なんだけど、かの石原慎太郎知事のときに立ち上がって、石原知事の四男が関わる形で進み、都知事が変わったあとで解体&統合されて、今に至るようだ。

まあ、東京都が若手芸術家を支援する、というのはいいことだし、少々アクセスは悪いけど、本郷と水道橋とかお茶の水の間という場所も悪くない。この施設が解体されずに、残っているのはいいことでしょう。

今回の展覧会「霞はじめてたなびく」は佐藤雅晴、西村有、吉開菜央の3人の作品を紹介している。トーキョーアーツアンドスペースのプログラムに参加経験のあるアーティストを中心に企画展を展開する、ということだそうで、「季節の移ろいや風景の移り変わりを身体で感覚的に感じ取り、その経験をとおして世界を捉えなおし、今まで見えていなかった風景を映像や絵画によって浮かび上がらせる作家」として、この3人を選んだ、としてます。

3人のうち、特に佐藤雅晴の作品が見たくて、行ってみた。というのも佐藤雅晴の作品は2016年に原美術館で見て以来、印象に残っているからだ。そのときの印象は「原美術館で「ハラドキュメンツ10 佐藤雅晴―東京尾行」を見る」に書いておいたのだけど、ざっとまとめるとそのときの佐藤雅晴の作品は2種類あり、一つは実写の映像の一部分をトレースしてアニメーションにした「東京尾行」という作品。アニメ化したところだけ、色がフラットになって、ちょっと不思議な感覚を味わうことになる。もう一つはCallingという映像作品で、人のいない風景のなかで電話が、携帯だったり、固定電話だったり、公衆電話だったりするのですが、鳴り始めて鳴り終わる、というモノです。

今回の「霞はじめて…」では、東京尾行の手法で作成した「福島尾行」という作品を上映してました。作者が自ら撮影した福島の映像をトレースしたものです。よく分からないけど、上映している部屋にはアップライト型のピアノがあって、それも自動演奏ピアノというもので、音はほとんどしないようになってますが、鍵盤が動くという、シュールな展示風景になっております(写真下)。残念なことに、作者は癌闘病中で、2019年3月9日に亡くなった、とのことです。この映像作品がほぼ遺作のようになってしまった。

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福島尾行はYouTubeで公開されていたので、下に貼っておきます。

ちなみに、佐藤雅晴がアクリル絵具で描いた作品を展示した個展「死神先生」(2019/2/15-3/16)を新宿のギャラリーKEN NAKAHASHIで拝見しました。フラットな色使いで、平凡なはずなのに、俳句のような余韻のある作品になっていました。このときの作品の画像はこちらのページで拝見できます。さらにちなみに、六本木の森美術館で開催している「六本木クロッシング2019展:つないでみる」に佐藤作品が出展されています。Callingという作品です。この作品は、固定電話とか公衆電話とか、携帯電話が鳴るシーンを表現してました。つまり、下の画像のように人が写っていないけど、明らかについ先程まで、人がいたよう状況です

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そこで、電話が鳴り始めると、携帯電話が明るく光り始める、というものです。

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「霞はじめて…」に話を戻すと、西村有の作品は油彩画で、何回か見たことがある。下の写真が展示風景です。あまり好みの作家ではないのですが、この自転車の絵は印象的です。

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もう一人、吉開菜央の作品は短編映画でした。「静坐社」というタイトルで「大正期に流行した心身修養法のひとつである岡田式静坐法を展開していた京都の静坐社で、建物が取り壊される直前に制作。定められた呼吸と姿勢を保ち、腹に力を込めて静かに座る実勢にリンクさせ、身体の動きに伴い生まれる音を丁寧に描き出し、普段気づかなかった風景を表出させます」としてます。映像は以下のような感じ。岡田式静坐法の発案者、岡田虎二郎と建物のなかで静坐法を実践する和服の女性。

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建物はもうない。音の扱いが面白く、おそらくは、その場で流れていた音をしっかりと録音して、映像とミックスさせているように聞こえた。つまり、呼吸音とかが、ちょっと大きめなっている。

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2019.03.13

損保ジャパン日本興亜美術館の「FACE展 2019」を見る

損保ジャパン日本興亜美術館の「FACE展 2019」(600円:2019/2/23-3/30)を見た。FACE展は2019年で7回目となる公募コンクールです。特徴は年齢と所属を問わないところ。そのためか、年齢はばらばらで、入選した方でも1944年生まれ(74)から2010年生まれ(8)までと幅広い。8歳の作品には驚かされたけど、手法とかもバラエティに富んでいて、かなり面白かった。以下、気になった作品についてメモっておきます。

まず、グランプリ作品。庄司朝美の《18.10.23》(写真下)。アクリル板の裏側に描かれた作品だそうです。なんとなくガラス絵っぽい気がしたけど、アクリル板でした。サイズも200×170cmとなかなか大きい。

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優秀賞をとった松崎森平の《東京》もユニークで漆を使っている。どうやら黒い漆のパネルを作って、その上に蒔絵で夜の東京を描いているらしい。写真に撮ると下のように、周りが映り込んでしまって、分かりにくいけど、夜の闇とか、雨にぬれたアスファルト道路の感じが生々しい。

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以下は賞をとっているワケではないけど、気になった作品について書いておきます。まず久世なつかの《未明(からだ×ハチ2)》。この作家の作品はシェル美術賞展2017で初めて見たのですが、同じテーマを描いてます。ちょっと不思議な感じになってきた。この先、どこに行くのかなあ、と気になるところ。

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川上椰乃子の《団欒》は日本画ですが、特に何か奇をてらったわけでもなく、ごく普通のモチーフを描いているのですが、現代的でもある。縦長のフォーマットもいいです。

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黒田恭章の《朝を待つ》は織物です。それも手織りです。最初の印象は細かな色使いで、どうやって描いたのか、とまあ絵だろうと思って見たのですが、なんか変で、説明を見ると織物でした。

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椛田ちひろの《Dark energy, #x》は紙にボールペンで描いている。その作品をアクリルのパネルで覆っているで、写真に撮ると、いろんなものが映り込んでしまう。線一本一本がとても細かいのだけど、この線が濃密に集まって、何かのうねりになっている。このうねりが面白い。

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吉増麻里子の《Garden》は筆のタッチが面白い。でまあ、よく見ると裸の人と服を着た人が倒れていて、意味が不明です。

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米蒸千穂の《遠浅の空気》は赤いもやに包まれている風景です。まあ、こういう風景はあり得ない。ただこの作家の作品は、青いもやとか、緑のもやに包まれた作品もあるようです。

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2019.03.03

神奈川県民ホールギャラリーで「META−日本画のワイルドカード」を見る

神奈川県民ホールギャラリーで「META−日本画のワイルドカード」(無料:2019/2/20-2019/3/3)を見た。「日本画のワイルドカード」という表現が興味深く、そしてグループ展らしく、市川裕司や金子富之、竹内啓といったかつて作品を見たことのある画家の名前があったので、横浜までいってみた。

ちなみに、知らなかったのですが、METAというのは画家のグループらしく、そのサイトにある説明では「“META”は、「無秩序の、世代を超えた、独自の、変容する」という意味を示します。日本画を踏襲したアーティストたちが、META的な思考と表現をもって日本画の枠組みを超えた新しい芸術理念を探求しながらも、その素材や伝統に敬意を表した作品の展示を目的としたグループです」とのこと。たしかに画家のプロフィールを見ると、だいたいが美大で日本画を専攻してます。

ワイルドカードという表現については、サイトで「本展の副題である「ワイルドカード」は、カードゲームにおいてどのカードにも代用できる万能札の意味を持つ言葉です。これまで日本画の定義をめぐり数多くの議論をされてきましたが、明確な答えを見出せずに今日に至っています。言い換えれば、日本画という言葉は、時代ごとに異なった意味で代用されてきました。その様は、まさに美術というゲームにおける「ワイルドカード」と言えるのではないでしょうか」としています。この辺は、まあそうかな、とも思いますが「時代ごとに異なった意味」とは具体的にはどうなんだろうね。知りたいところではある。少なくとも、今の日本画の定義は画材として日本特有の素材を使うぐらいしかないように思えるが、今回、展示された作品を見ると、ほぼ、何らかの日本画の画材を使用してように見えますが、そうでもない作品もあるようです。

撮影はOKでしたので、気になった作品を掲載しておきます。

まず、吉田有紀の作品。タイトルは《カオスとコスモス》。黒い板で囲われているその中は赤い。素材はラッカーとかアクリル絵具なので、日本画的なモノはないように見えますが、漆のような印象があって、日本的なモノを感じます。

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次は竹内啓の《藤内#4 PM5:55 14/AUG 2018》。抽象画ですが、素材は日本画のモノです。日本画の画材を使わないとこういう抽象画は描けない気がする。

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こちらは唯一の立体作品。市川裕司の《Japanese Tree III》。球体の内側にアルミ箔が貼ってある。そして中におそらくLEDが仕込んであって、そこに反射しているようです。市川作品は太田市美術館・図書館で拝見したけど、そのときは《世界樹IV》という作品を見たけど、どう関係するんだろうか? ちなみに、この作品は中が覗けます。

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佐藤裕一郎の《koivumaisema》。フィンランド語で白樺のことらしい。「紙に石墨、胡粉」とあるので、確かに日本画なんでしょう。この絵は300×780cmと巨大で、目の前にあると、つい見続けてしまう。

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金子富之の《摩醯首羅王》。この作家の作品を見るのは3回目。最初は2016年の「19th DOMANI・明日展」(レビュー記事はこちら)で、その次が2017年の「詩情の森 語りかたられる空間・オープンシアター2017」(レビュー記事はこちら)。日本画の画材でヒンドゥー教の神様を描いているような感じ。

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