« 2019年4月 | トップページ | 2019年6月 »

2019.05.24

サントリー美術館で「nendo × Suntory Museum of Art | information or inspiration? 左脳と右脳でたのしむ日本の美」を見る

サントリー美術館で「nendo × Suntory Museum of Art | information or inspiration? 左脳と右脳でたのしむ日本の美」(1300円:2019/4/27-6/2)を見た。サントリー美術館とデザインオフィスのnendoが共同で企画した美術展です。「人は美しいものに出会ったとき、2種類の感動のしかたをすると仮定。作品の背景や製作過程、作者の意図や想いを知ることで生まれる感動、そしてもうひとつは、ただただ理由もなく、心が揺さぶられる感動です」として、作者の意図や想いを知ることで生まれる感動を「information」、理由もなく心が揺さぶられる感動を「inspiration」で象徴しているようです。そして、ストレートに説明して見せる「information」とちょっと斬新な見せ方で驚かす「inspiration」で1つの作品を展示するため、入口は「information」と「inspiration」に分かれます。で、下の写真が「information」の入口。「information」 側は白く、「inspiration」側は黒い。

Ph02_7

Ph04_6

「information」側は通路に沿って、説明と作品が向かい合わせに並ぶ。説明がしっかりしていて面白い。下の写真は《切子 蓋付三段重》 とその説明の一部。この作品は名前の通りガラス製の蓋のある三段重なんですが、ガラスがカットされてして美しい。この作品の解説では、作品そのものの解説と、文様の解説と文様を刻み込む手法を掲載している。

Ph09_4

カットの方法については図も付けて説明してます。

Ph08_5

まあ、こういう感じで22の作品について、解説が進みます。サントリー美術館ですので、3階から入って、エレベーターで4階に上がり、4階会場を見た後、階段で3階に降りて、3階会場に入るのですが、今回は階段横の吹き抜けで、傘を持って歩くインスタレーションが実施されておりました。作品はnendoの《uncovered skies》。下の写真のように、長さ15m、幅2.185mの白いステージの上を、傘を開いて歩くと、傘の影の部分に映像が浮かび上がる、というものです。

Ph10_4

傘には偏光フィルムが貼られていて、そこを通した傘の影には、映像が浮かび上がるという仕組みだそうです。

Ph11_2

この後、3階の「information」側を見て、今度は「inspiration」を見るわけですが、再度、4階に向かって「inspiration」を見ました。こちらは黒い。「inspiration」側には作品の説明はなく、床の上に作品番号がプリントされているだけというシンプルなものです。 

Ph12_2

作品の見せ方は、かなり凝っていて、例えば《藍色ちろり》の展示は、「information」側では下のようにストレートに見せてます。 

Ph05_5

「inspiration」側では、下のようになります。青いところで《藍色ちろり》であることが分かります。

Ph06_6

この作品の例はかなり、凝ったものですが、ほかにも色々と工夫してます。まあ、それは見てのお楽しみということで…。

カタログは「information」と「inspiration」の2つ本を合本したような形になってます。残念なのは「information」側の解説が全部入っていないところです。例えば《切子 蓋付三段重》では作品の写真と解説、解説の英語訳だけで、カットの方法を解説したものは掲載されていませんでした。ちょっと残念です。

| | コメント (0)

2019.05.20

横浜美術館で「Meet the Collection -アートと人と、美術館」を見る

Ph01_6

横浜美術館で「Meet the Collection -アートと人と、美術館」(1100円:2019/4/13-6/23)を見た。横浜美術館は今年、2019年に開館30周年で、それを記念する企画展です。展示される作品は「1万2千点を超えるバラエティ豊かな横浜美術館のコレクションの中から、「LIFE:生命のいとなみ」「WORLD:世界のかたち」の2部構成のもと、絵画、彫刻、版画、写真、映像、工芸など400点を超える作品」とのこと。横浜美術館は正面に対して右側を企画展、左側を常設展として使い分けていますが、今回は両方を使って展示してました。ちなみに「LIFE:生命のいとなみ」が常設展側、「WORLD:世界のかたち」 が企画展側に展示してあります。併せてコレクションを展示するだけでなく、束芋、淺井裕介、今津景、菅木志雄の4人のアーティストをゲストとして招聘して、その作品を展示しています。4人の作品と、そこに並ぶコレクションは関連していて、その辺も見所かと思います。

束芋の作品はアニメーションを使った映像インスタレーションで《あいたいせいじょせい》というタイトル。 スクリーンからリアルな椅子とテーブルが半分はみ出すように置かれている。そこにアニメーションが投影されるのですが、解説によると「人形浄瑠璃『曽根崎心中』(近松門左衛門著)の主人公お初、小説『惡人』(吉田修一著)に脇役として登場する金子美保の2人を比べてみる、という試みから生まれた作品です」としてます。束芋は小説『惡人』の挿絵を描いていて、その当たりからのつながりでしょう。ちなみに「《あいたいせいじょせい》では金子美保の部屋にお初をソファ、お初と恋仲であった徳兵衛をテーブルとして配置しました。体調を崩している金子美保は、姿は見えないけれどそこに居ます」という設定なんですが、見てみないとよく分からないですね。ちなみにこの作品は撮影不可です。

束芋の作品は「LIFE:生命のいとなみ」 の最初のパートで「こころをうつす」にあります。普段は日本画を展示する常設展側の奥の会場、展示室1です。ここはガラスケースがあって、屏風絵とか掛け軸が展示されてます。今回は束芋の作品に併せて、遊女とか舞妓が描かれている作品や浄瑠璃に関わる作品が展示されています。

Ph02_6

ちなみに、そのなかで気に入ったのは山村耕花(やまむらこうか:明治18年〈1885年〉- 昭和17年〈1942年〉)の作品で《ウンスン哥留多》(写真下)。

Ph03_12

淺井裕介の作品は、普段は常設展示している展示室2という円柱のような形の部屋にありました。《いのちの木》というタイトルで、今回の展示のために構成された作品です。円柱の壁に臙脂色のバックに金色で生命の木的なものを描いているのですが、そこに横浜美術館のコレクションを展示してます。展示されているのは植物や動物にかかわるものと子供を描いたもの。

Ph05_4


Ph04_5

例えば、下の写真では真ん中がジョアン・ミロの《花と蝶》、右側は植物や動物を精密に描いた素描で、左側は上が浜田知明のエッチングで《幼きキリスト》、下が武井武雄の版画《生命の構図「一木集VI」より》となってます。

Ph06_5

今津景(いまずけい)の作品は、横浜美術館のコレクションの中核となる第二次世界戦前のシュルレアリスムと一緒に展示されている(写真下)。「WORLD:世界のかたち」 のパートで「イメージをつなぐ」のなかにあります。黒と茶色の縞になっているイサム・ノグチの《下方に引く力》やサルバドール・ダリの《バラの頭の女性》などの立体作品が白い台の上に並んでいます。その奥にあるのが今津景の作品です。

Ph07_4

作品のタイトルは《Repatriation》(写真下)。祖国に返す、という意味だそうです。「略奪、密輸などによって本来所属していた土地を離れ、国家間の返還問題にさらされた文化財が主なモチーフとなっている」とのこと。そういった返還問題になっている美術品の画像をネットで集め、画像処理したものをカンバスに描いているらしい。 

Ph08_4

4人目の菅木志雄の作品は展示会場にある《放囲空》《環空立》と美術館正面の屋外にある《散境端因》です。《放囲空》の素材は石材で《環空立》の素材は木材。下が《放囲空》。

Ph09_3

こちらが《環空立》 。

Ph10_3

で、こちらが屋外展示の《散境端因》。

Ph11

まあ全体としては、お腹いっぱいになる感じ。物量に圧倒されるけど、作品の組み合わせの妙みたいのがあって、かなり楽しめます。

 

| | コメント (0)

2019.05.11

リニューアルした東京都現代美術館について

リニューアルした東京都現代美術館ですが、1995年に開館して、2016年にいったん休館し3年かけてリニューアルして2019年3月29日に再開したところです。ざっとまとめておきます。

まずリニューアルのポイントですが
・経年変化への対応、機能の改善
→空調などの更新、天井の耐震化、照明のLED化
・利用者サービスの向上
→エレベーターの増設、多目的トイレの拡充、館内外のサインを一新、図書館のリニューアル
といったあたりのようです。

確かにサインはすっきりしました。というか前のものはもう覚えてませんが……。まあ下の写真ような感じで、あまりいい例ではありませんが、木材中心のものに変わりました。


Ph01_4

下は屋外の例。自転車置き場です。どう変わったのか、よく分かりません。

しかし、問題は自転車置き場です。パッと見て分かるのは狭いこと。リニューアル前とほぼ同じ場所で、ほぼ公園の通路で妙に狭いし、雨が降ったら雨ざらしだしと、自転車のことは何も考えていません。当然ですが、自転車以外のバイクも駐車してます。ちょっと眺めてましたが、自転車を止めて、美術館ではなく、公園の方に行く方がほとんどでした。まあ、この場所ですと、そういう使われ方になりますね。というわけで、時間帯によっては美術館に自転車で来ると、駐輪場が満杯で止める場所がない、ということになります。

Ph02_4

リニューアルに合わせて、会員制も変わりました。美術館の会員制というのは年間の会費を支払って、諸々のサービスが受けられるというものです。一種のプロモーションというか、お得様向けのサービスで、だいたいの美術館は用意してます。大抵は住所氏名を登録して、会報などを受け取れるようにし、会費を払っていれば、企画展や常設展は無料で入場できるというものが一般的です。東京都現代美術館の会員制度は、常設展が無料で企画展は50%割引の個人/家族/シルバー会員と年間1万円で常設・企画展が入場料無料になる「賛助会員」がありました。リニューアル後は「年間パスポート」という制度に統一されたようです。

お値段は4000円で、常設展は何回でも無料、企画展は4回まで無料で、5回目以降は50%引きになるとのこと。あとミュージアムショップとかレストランで5%引き、東京都写真美術館とか庭園美術館などで割引がある、としてます。でもこのパスポート、現在では売り切れとなりました。

この制度、住所の登録をしないので、お知らせなどの会報は送られてきません。まあ、運営する側からみると、個人情報を持つ必要がないので、楽なんでしょうが、情報収集という面ではあまり役に立ちません。

設備面では耐震化など、必要な部分はあったのでしょうが、利用者としては、あまりメリットが感じられないリニューアル、というのが印象です。

| | コメント (0)

2019.05.10

東京都現代美術館で「MOTコレクション第1期 ただいま/はじめまして」を見る

Ph01_3

東京都現代美術館で「MOTコレクション第1期 ただいま/はじめまして」(500円:2019/3/29-6/16)を見た。常設展です。東京都現代美術館は3年ほど休館していたが、その間もコレクションを拡張し続けていたらしい。Webから引用すると「当館では、この3年弱に及ぶ休館中に、約400点の作品が新たに収蔵されました。そこで、リニューアル・オープンを記念した今年度のコレクション展では、新収蔵作品を中心に紹介します。」とのこと。そして「その第一弾では、主に2010年代に制作された作品群に焦点を当てながら、修復後の作品のお披露目なども加え、これまで「MOTコレクション」をご覧いただいた方も、今回初めてご覧になる方も、リニューアルした展示室で作品それぞれの魅力に触れていただければ幸いです。」と続けてます。というわけで、続きもあるそうです。

最初に登場するのは、アルナルド・ポモドーロの《太陽のジャイロスコープ》(写真下)。常設展示のフロアの1階吹き抜けに鎮座してます。元々は美術館の屋外、それも正面入口の脇に置いてあった作品です。直径4m、総重量5トンと巨大で重い。

Ph02_3

屋外展示の頃は、あまり近づくことができなかったので、あまり気がつかなかったのですが、なかなか精巧な構造物(写真下)です。屋内に展示されことで、よく見ることができるのは、ありがたいことです。解説によると「中世の天球儀から着想を得たという本作品は、太陽と地球、地球と月、朝と夕のような対比対象が、時の移ろいとともに位置関係を変化させていく様子を表現したと作家が語るとおり、かつてはブロンズ製の円盤が、それぞれ24時間かけてゆっくり回転する機構を備えていました。」とのこと。

Ph04_4

Ph03_10

今回の展示で、気になったのは棚田康司、サレ・フセイン、高田安規子・政子、ソピアップ・ピッチ、文谷有佳里、宮島達夫といったところ。とりあえず、写真を撮ったので、説明しておきます。

まず彫刻家の棚田康司。下の写真は《雨の像》。「一木造り」という1つの材木から作品を彫り出す手法で作品を制作している。棚田の作品は少年のにょろんとした感じの作品が印象深いのですが、最近は大人の女性像も作成している。解説によるとこの作品は「初めて本格的に制作された成人女性像」 とのこと。2016年の作品です。

Ph05_3

下の写真はサウジアラビア出身のサレ・フセインの作品《アラブ党》。制作は2013年。インドネシアで活動している、とのこと。アラブ系インドネシア人というのはインドネシアでは少数派らしく、歴史的は差別された時期もあったらしい。その辺の歴史をリサーチして描かれた作品だそうだ。

Ph06_4

Ph07_3

高田安規子・政子は卵性双生児のユニット。日常的にあるモノに手をかけて美術作品に仕上げる、というやり方で作品を制作している。下の写真のケースにはいったモノは《組札 ハート》というタイトルの作品の一部で、トランプに刺繍して、ペルシャ絨毯のように仕上げている。

Ph08_3

もう一つ、《修復》というシリーズでは「建物の塀や床などに放置されている小さな破損箇所に着目し、そこに自らの手で修復を加える作品」です。東京都現代美術館の石畳を、修復したのが下の写真です。

Ph09_2

下の写真はカンボジアのソピアップ・ピッチの作品。なんとなく、韓国のミニマルな抽象画に近い印象を持った。タイトルは《樹木園》。竹と藤をワイヤーで固定したものだそうです。

Ph10_2

文谷有佳里(ブンヤ・ユカリ)の作品はケント紙にインクで描かれている。とてもリズミカルでスピード感がある作品です。下の写真の作品のタイトルは《なにもない風景を眺める 2016.12.10》。

Ph11_1_1

Ph12_1 

最後は宮島達夫の作品。赤色LEDのカウンターを使った作品です。タイトルは《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》。1728個のLEDカウンターが1から9までを表示するのだけど、それぞれのカウンターはスピードが違う。この作品は20年近く常設として展示されてきたのですが、カウンターの明るさに個体差がでるようになったので、点検と修復したとのこと。

Ph14_2 Ph13_2

 

| | コメント (0)

2019.05.01

リニューアルした東京都現代美術館で「百年の編み手たち」を見る

Img_7604

2019年3月に3年ぶりにリニューアル・オープンした東京都現代美術館で「百年の編み手たち -流動する日本の近現代美術-」(1300円:2019/3/29-6/16)と「MOTコレクション ただいま / はじめまして」(500円:2019/3/29-6/16)を見た。「百年の編み手たち」は1910年代から現在までの、ほぼ100年間の日本美術を概観する展示です。カタログでは「『編集』をキーワードに、日本の近現代美術のひとつの側面を再考する」としています。その心は、おそらく、美術の先端では日本画と洋画の古典技法、テーマに最新の技法やそのときの最新思想をからめて作品を制作していて、その制作過程を「編集」として捉えているように思えます。

というわけで、この展覧会の始まりは1910年代、それも「本展では、第一次世界大戦の開戦により欧州からの印刷物を通した情報が減少した1914年を、新しいものの学習の段階から、編集へと展開したはじまりの年と位置づけ、現代までの美術家たちの活動を作品と資料によって再考していきます」としてます。そういう文脈から、この展覧会の1章「はじまりとしての1914年」では岸田劉生の自画像やエッチングなどが展示されるのですが、カタログの解説を読まないと、意味がよくわからなかった。

解説によると岸田劉生は1912年のポスト印象主義的な自画像を描き、1914年には北方ルネサンス的な、つまりデューラー的な写実表現を使った自画像、そして東洋的な表現を取り入れた1920年の自画像を展示している。これらの作品や劉生の芸術論などから「新旧の多様な表現を選択し制作に取り入れた」として、劉生を自覚的に編集した最初の作家として紹介している。岸田劉生の作品をそういった方法で見たことはないので、面白いのだけど、カタログを読まないと、あるいは説明のパネルを長々と読まないと分からない。まあ、劉生がその後、麗子像をさながら禅画の寒山拾得のように描いたりするあたりつながっていくわけです。

というわけで、よくわからない部分も数多くありましたが、後からカタログを読んで、なるほどね、となる展示です。まあ、これはこれでいいかと思います。すべての作品について、こういった解説を分かりやすくやっていったらきりがない。

ちなみに、今回の展示で面白かったのは中原實の作品でした。中原實は1893年(明治26年)生まれ、歯科医でかつ画家という方です。1990年に亡くなってますが、亡くなったときは日本歯科大学名誉学長、日本歯科医師会名誉会長で二科会名誉理事という肩書を持っていたそうです。異色の経歴の方で、米国に留学して、1918年にフランスに渡りフランス陸軍歯科医となって、第一次世界大戦に関わっている。大戦終了後、パリで絵画を学んでいる、とのこと。そこでダダや超現実主義に触れてきたらしい。 撮影可の作品がいくつかあったので、下に貼っておきます。下は1924年の作品で《ヴィナスの誕生》、次も1924年の作で《海水浴》、1947 年の作品で《杉の子》 。

Ph06_3

Ph03_9 Ph05_2 

3つの作品が、同じ作者の作品というところが、面白い。

ちなみに今回は3階の展示スペースの一部と地下の吹き抜けが撮影可となってました。まあ、わりとどうでもいい感じですが、地下の吹き抜けの写真も貼っておきます。


Ph08_1 Ph07_2

| | コメント (0)

« 2019年4月 | トップページ | 2019年6月 »