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2019.08.26

三井記念美術館で「日本の素朴絵」を見る

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三井記念美術館で「日本の素朴絵 ―ゆるい、かわいい、たのしい美術―」(1300円:2019/7/6-9/1)を見た。最近、わりと頻繁に見るようになった、ナイーブな絵の展示会。今年ですと府中市美術館で3月から5月にかけて開催された「へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」(レビュー記事はこちら)とかありました。まあ、こちらは平面のみで、素朴な絵ではなく「へそまがりな絵」ですので、少々範囲は狭くなってます。へそまがりの絵は禅画から始まるという趣旨でしたが、素朴絵では、立体も含めているため、埴輪から始まります。そして、かなり素朴です。上の画像は今回のカタログの表紙と裏表紙をスキャンしたモノですが、全体としてはこんな感じです。

今回の展示では立体から始まります。まあ、この美術館の展示スペースからすると、立体物で始めるしかない気もするのですが…。そして1つめが埴輪、「猪を抱える猟師」というモノで小脇に猪を抱えて、にやりとしている人物の埴輪です。この埴輪がなかなかいい。とういうか埴輪って結構、表情が豊かなんだと、気がつきました。

全体の構成は「リアリズムを目指さない素朴な造形の流れを示そうとする試み」(カタログ掲載の解説、「素朴絵の系譜」矢島新(跡見学園女子大学教授))となっていて、「リアリズムやファインアート的なモノ=権力者のモノ」のカウンターとなる「素朴で親しみやすいモノ=庶民のモノ」を時代ごとに追いかけています。

新鮮だったのは、室町時代の絵巻物での素朴表現や、庶民向けに描かれた曼荼羅や社寺縁起絵が、かなり緩くて大胆なことかな。

さて、この展覧会は龍谷大学 龍谷ミュージアムに巡回するとのことです。期間は2019年9月21日(土)~ 11月17日(日)。

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2019.08.21

水戸芸術館で「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」を見る

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水戸芸術館で「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」(900円:2019/7/13~10/6)を見た。大竹伸朗によると「「記憶」を通して意識的、無意識的(夢での光景など)、断続的に現れる「ビルのある風景」、それに付随する風景的イメージによる作品群を「ビル景シリーズ」とした」とのこと。基本的に抽象画だけど、抽象的な立体物もあるし、平面も大きな油絵から小さめのドローイングまである。そして展示点数は膨大で、会場で配布されていたリストを見ると606点になる。ちなみにこのリストは、「壁面・立体」と「机」に分けて作品をリスト化し、ナンバリングしているので、展示番号が同じモノがあり、最初は意味が分からなかった。「壁面・立体」は320点あり「机」は286点ある。

そして、ビル景シリーズを830点、時系列に収録した画集「大竹伸朗 ビル景 1978–2019」(税抜9800円)があって、この展示は画集のサブセットになっている。さらに、ちなみに会場で配布されたリストには「Cat. No」という項目があって、その番号は画集内の作品番号になっている。

ビル景シリーズは立体もあれば、平面もある。あっさりしたドローイングがあるし、ごってりとした油彩もある。ほぼ真っ黒なものから、パステル調の明るい色彩のものもある。そして短冊状の紙を貼った上に何かを描いているモノもある。手法的な共通点はあまりなく、なにかあるとすれば、作品のなかに四角い何か、つまりビルが描かれていることぐらいだろう。まあ、だからビル景シリーズなんだろう。

展示会場ではごく一部を除いて撮影可だったので、ざっと撮影してみた。その結果は以下のようなものだ。

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まあ、これだけバリエーションがあって、ほぼ40年間、断続的に描き続けているというは、驚きを超えて、不思議な感じがする。おそらく、キーワードは「夢での光景」なんだろう。夢なら毎日見ているし、おそらくは眠っている最中に複数の夢を見ているはずだから、それは膨大な数になるはずだ。というわけで、「ビル景シリーズ」は大竹の夢十夜のようなものなんだろうという、適当な結論にたどり着いて、安心しているところです。

 

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2019.08.12

東京都美術館で「伊庭靖子展 まなざしのあわい」を見る

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東京都美術館で「伊庭靖子展 まなざしのあわい」(800円:2019/7/20-10/9)を見た。伊庭靖子は1967年生まれの画家。京都市出身で嵯峨美術短期大学版画科専攻科修了。「自ら撮影した写真をもとに絵画を描いている」(図録の解説「まなざしのあわい―「見る」ことを問う」より、大橋菜都子著)とのことで、レンズを通した画像をキャンバスに移していく描き方で、フォトリアルな絵を描くのだけど、単純なフォトリアルでもなく、光の描き方に独特な味わいがある。

展示会ではクッションとか枕を描いたシリーズのあと、食器とか花瓶を描いたシリーズ、シルクスクリーンによるモノクロの風景画、最後に映像インスタレーションが展示されている。結構、多彩です。少なくとも、油彩の枕の絵と花瓶の絵は一連の流れのなかにあるけど、後半のシルクスクリーンや映像インスタレーションについては、同じ作家のモノとはあまり思えない。

作品的に分かりやすいのは枕の絵かもしれない。ぱっと見は巨大な写真で、見慣れるとフォトリアルな絵画とわかるのだけど、ただのフォトリアルな絵画でもなく、布に光が当たっている感じが写真以上にリアルに表現されている。食器とか花瓶を描いたシリーズは、何となくジョルジュ・モランディを思い出させてくれて、スーパーリアルなモランディという気もしたが、そう単純でもない。というのは、上の写真のような作品がそこそこ点数があるからだ。図録に掲載された作者へのインタビューでは「アクリルボックスのシリーズ」と呼んでいる。どうやらアクリル板を使って映り込みや反射などの光を絵画のなかに反映しているようだ。

ちなみに、図録には、伊庭へのインタビュー、東京都美術館の学芸員、大橋菜都子による解説「まなざしのあわい―「見る」ことを問う」と美術評論家の清水穣による解説「不可視性に触れる―伊庭靖子の絵画」が掲載されている。大橋の解説ではモネを引き合いにだし、清水の解説ではゲルハルト・リヒターを引き合いにだしている。モネとリヒターの比較でみると、ちょっと味わい深いような気がする。

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2019.08.05

千葉県立美術館で「千葉の新進作家vol.1 志村信裕 -残照-」を見る

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千葉県立美術館で「千葉の新進作家vol.1 志村信裕 -残照-」(300円:2019/7/13-9/23)を見た。「千葉県ゆかりの新進気鋭の作家を紹介し、現代の美術に親しむ展覧会シリーズ。初回となる今回は、千葉県在住の美術家・志村信裕の作品を展示します。」とのこと。千葉の美術館というと千葉市美術館の方が有名で、展示会も千葉市の方がメジャーな感じで、千葉県立美術館の展示会はなんとなくマイナーな感じです。2017年に版画家の深澤幸雄の展覧会を見にいきましたが、それ以来、特に気になる展示会もなかったので、訪れることもなかった。今回は2019年開催の「21st DOMANI・明日展」(レビュー記事はこちら)で初めて見た、志村信裕という作家が気になったので行ってみました。ちなみに、志村の作品はDOMANIで展示された羊に関するドキュメンタリー風の映像作品しか見たことがなかったので、まったくテイストの違う映像系のインスタレーションが拝見できるというのも、この炎天下、行ってみる気になった理由です。

会場に入って、最初に展示されているのが《jewel》という作品。照明を落とした会場で横長の大きなスクリーンに映像が投影されてます。きれいな色のボタンが飛んでいくもので、床にも反射して美しい。

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この裏側にあるのが《光の曝書》という作品で、台の上に乗った本の上にプロジェクションしたもの。ちなみに「今回は昭和6年に発行された『日本新名勝俳句』の頁に光をあてた」とのこと。

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その奥にあるのが《bucket garden》。名前のようにバケツのようなものが床に置いてあって、そこをのぞき込むと、いろんな色がきらきらと花火のように輝いている、というもの。

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さらに先に進むと《Dress》という作品が展示されている。半透明のリボンを大量にぶら下げて、そこに映像を投影した作品。ここはリボンをのれんのようにかき分けて、先に進みます。ここに投影されている映像は「隅田川と小名木川が交差する川面に映り込んだ夕日」とのこと。

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最後にあるのが《Nostalgia、Amnesia》という映像作品。羊に関する作品で、フランスのバスク地方、南西仏の小さな村、成田市三里塚でのフィールドワークから制作されている。この映像で、三里塚で牧羊していたことを知りました。牧場は成田空港のためになくなったということも、ですが。

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さて、千葉の新進作家vol.2は誰なのか?少々気になるところです。

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2019.08.01

東京ステーションギャラリーで「メスキータ」を見る

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東京ステーションギャラリーで「メスキータ」(1100円:2019/6/29-8/18)を見た。オランダで活躍した画家で、版画家で、デザイナーで、教育者でもあった「サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ」(1868-1944)の回顧展です。メスキータはユダヤ人であったため、ゲシュタポに1944年に逮捕されアウシュヴィッツで亡くなっている。この展覧会のキャッチコピーは「エッシャーが命懸けで守った男。」となっていて、その意味は教え子であったエッシャーなどの方々が、逮捕されたメスキータの作品を持ち出して、戦争中も守り抜き、戦後に展覧会を開いた、ということを示している、とのこと。作品を命がけで持ち出して守った方々がいなければ、日本でこうやって拝見することはできななかった、ということです。

こういうナチスがらみの悲劇を聞くと、作品は弾圧とか差別とか、負のイメージをまとっているかも、と思っていたのですが、そんなこともなく、斬新でユーモアに満ちている作品を次々と拝見することになる。逆にナチスによる悲劇がなければ、もっと作品が残っていただろうし、より長く生きて、より多くの作品が制作されたんだろうと思うわけです。

人物や動物を扱った作品が印象的でした。特に木版で、力強いタッチで立体的に見せる手法は斬新でした。

展覧会は、これから日本国内を巡回する予定とのこと。巡回先は以下の4館。
佐倉市立美術館(2020/1/25-3/22)
西宮市大谷記念美術館(2020/4/4-6/14)
宇都宮美術館(2020/7/5-8/30)
いわき市美術館(2020/9/12-10/25)

ちなみに図録はA4変形の大判で、かがり綴じになっていて、180度、きれいに開くものです。お値段は税込3080円です。

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