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2019.09.30

東京ステーションギャラリーで「没後90年記念 岸田劉生展」を見る

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東京ステーションギャラリーで「没後90年記念 岸田劉生展」(1100円:2019/8/31-10/20)を見た。岸田劉生は1891年(明治24年)に東京・銀座に生まれ、1929年(昭和4年)に山口県徳山で亡くなっている。岸田劉生の代表作を年代順に展示してます。そして、すべて岸田劉生の作品だけで構成されてます。よく作家の名前を冠した展覧会だけど、展示されている作品はそうでもなくて、ほかの作家の作品が入っているというのは、よくあることですが、この展覧会はそんなことはなく、全て岸田劉生の作品でした。

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岸田劉生の作品というと、麗子像とか超リアリズムな重要文化財《道路と土手と塀(切通之写生)》(写真上:東京国立近代美術館で撮影)とかは見るたびに凄いなあ、と思っていたのですが、全体像としてはあまり長生きしなかった、とか晩年は日本画も描いていたといったことしか知りませんでした。今回の展示で知ったのは、ざっと以下の点です。

・最初は水彩画を描いていた
・キリスト教の信徒だった
・一時期、首狩り劉生と呼ばれるほど肖像画を描いていた
・1916年に肺病と診断されて戸外でのスケッチができなくなり静物画中心になる
・《道路と土手と塀(切通之写生)》を描いた1915年頃、肖像画がデューラー風になり、なぜか描かれている人物が花を持ったりするようになる
・死の直前に満州にわたり、油彩の風景画を描いている

ちなみに、図録はかなり立派で、特に85ページにわたる年譜が凄い。

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2019.09.25

武蔵野美術大学 美術館・図書館で「スタシス・エイドリゲヴィチウス:イメージ——記憶の表象」を見る

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武蔵野美術大学 美術館・図書館で「スタシス・エイドリゲヴィチウス:イメージ——記憶の表象」(無料:2019/9/2-11/9)を見た。スタシスといえば、絵本とか顔を大きく扱ったポスターは見たことがあるのだけど、絵本やポスターの原画は見たことがなかったし、版画や小さな細密画、写真などは知らなかったし、演劇にも取り組んでいたとは知りませんでした。というわけで、スタシスという芸術家の本質に触れることのできる展示、という感じです。

スタシス・エイドリゲヴィチウスは1949年生まれ、リトアニア出身で、ポーランドを代表する作家。一方、武蔵野美術大学 美術館・図書館 は、大量のポスターをコレクションしていて、その中でもポーランドのポスターは800点を超えるとのこと。ポーランドのアートやデザインを紹介してきたそうだ。そして、今年がポーランド共和国と日本の国交樹立100周年記念というのもあって、 スタシスの50年にわたる活動を初期の写真作品も含めた777点という膨大な量の作品を展示している。

まあ、顔を描いたポスターの原画もよかったけど、小さな細密画や蔵書票(エクスリブリス)が大量にあって、この一つひとつが面白い。そしてスケッチブックをデジタル化してタブレットでめくりながら拝見できるのも、なかなかよろしい。スタシスの絵画をそのまま現実世界に持ってきたような、写真もインパクトがあったし、その写真がそのまま動画になったような演劇もいい感じでした。

この辺の作品は、カタログにうまく収まっている。小さな作品は、ほぼ原寸じゃないかな。お値段は2800円です。美術館のサイトでも購入できる(https://mauml.musabi.ac.jp/museum/catalogs/)のもいい感じです。

武蔵野美術大学 美術館・図書館は、小平市にある武蔵野美術大学の鷹の台キャンパス構内にある。今回はJR国分寺まで行って、北口にあるバス停「国分寺駅北入口 」から武蔵野美術大学行きのバスで「武蔵野美術大学正門」で下車して、数分歩いたところにあります。 国分寺駅北入口というバス停はちょっとどこにあるか分かりにくいので、地図でよく確認した方がいいでしょう。 

建物は正面から見ると、下のようなものです。建物のなかは、エレベーターやスロープを使ってバリアフリー化が進んでいる。
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2019.09.24

リニューアルされた板橋区立美術館で「館蔵品展 アヴァンギャルド画家たちの東京」を見る

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リニューアルされた板橋区立美術館(写真上:高解像度版はこちら)で「館蔵品展 アヴァンギャルド画家たちの東京」(無料:2019/9/7〜10/6)を見た。板橋区立美術館は改修工事のため2018年4月16日から2019年6月28日まで休館してました。リニューアルしましたが、建物の基本的な形はそのままです。展示会場は2階で、1階はラウンジとかアトリエ、トイレなどがあるのは以前のままです。ちなみに、リニューアル前は下の写真のようになります(高解像度版はこちら)。

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大枠では形は変わってないけど、かなりきれいになりました。入口はかなり明るくなったしね(写真下:高解像度版はこちら)。

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ちなみに板橋区立美術館というと、幟に掲げた標語のようなモノ。今回は「リニューアルだよ 全員集合!」でした(写真下:高解像度版はこちら)。  

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展示ですが、大正から昭和の戦後、展示作品の制作年でみると1924年から1966年の作品を扱ってます。「板橋区立美術館では、ヨーロッパから紹介されたフォービスムやシュルレアリスムに影響を受けた戦前の作品、戦後のルポルタージュ絵画など、アヴァンギャルドに分類される作品を数多く所蔵しています。今回は、これらの作品を『東京』 を切り口にご紹介いたします」といったところ。松本竣介とか長谷川利行あたりが有名だけど、印象深いのは中村宏の《血井》でした。カタログとかないのは少々残念。

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ところで、なぜか美術館の入口前に山羊がおりました。草刈り用でしょうか? サイトをみたら、館蔵品展 アヴァンギャルド画家たちの東京 関連企画「ヤギを描こう! というのがあるらしく、そのための山羊のようです。


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2019.09.19

東京藝術大学大学美術館で「円山応挙から近代京都画壇へ」を見る

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東京藝術大学大学美術館で「円山応挙から近代京都画壇へ」(1500円:2019/8/3-9/29)を見た。見どころは、作品的には応挙寺とまで呼ばれている兵庫県美香町香住の大乗寺の襖絵が多数展示されていること、なんだけど、内容的には18世紀にできあがった応挙と呉春が祖となる円山・四条派が近代の竹内栖鳳、上村松園あたりまでつながってきた系譜をたどるというあたりです。ちなみに兵庫県香美町は兵庫県の日本海側で京都や大阪からでも3時間半はかかる。まあなかなか、東京からは行けない感じ。

大乗寺の襖絵が東京にやってくるのは10年ぶりらしい。この10年ぶりの作品を展示するケースが凄い。展示会場の中央に上から見るとX型になっている展示ケースで、ここに応挙や呉春の襖絵が展示されてます。

ちなみに、前期後期にわかれて展示替えがある。9/3からが後期で、リストをざっと見た感じでは、全123点のうち40点は後期から展示される。まあ、そこそこの数です。この展示階、前期後期を見ると3000円かかるわけですが、入場券を買ったときに、リピート割引券というのをもらえて、次にいったときに200円割引いてくれます。展示替えがあるのは、主催者側の都合ですから、まあ、気味ちだけでも安くするというのは、いいことだと思います。

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2019.09.16

大倉集古館で「桃源郷展―蕪村・呉春が夢みたもの―」を見る

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ホテルオークラ東京の敷地内にある大倉集古館で「桃源郷展―蕪村・呉春が夢みたもの―」(1300円:2019/9/12-11/17)を見た(写真上:高解像度版はこちら)。大倉集古館は実業家の大倉喜八郎が1917年(大正6年)8月に設立。その後、1923年の関東大震災で建物と陳列中の作品を失ったが、耐震耐火建築の陳列館を建て、1928年(昭和3年)に再開している。そのときの建物の設計は伊東忠太。

その後、いろいろあったけど、2014年4月にホテルオークラ東京本館改修工事に伴い、地下収蔵庫の増築などを含む改修工事のため休館。2019年9月12日にようやくリニューアルオープンした。地上2階、地下1階の建物で、今回のリニューアルで地下階が増築されている。地上の2階は展示スペースで、地下は展示もあるが、ミュージアム・ショップとトイレ、会議室がある。ちなみにトイレは地下のみ。3つのフロアは階段とエレベーターで行き来できる。今回のリニューアルで、外観は維持して、地下に免震層を設置し、建物全般を免震化している、おそらく照明のLED化とか、展示ケースのリニューアルも実施している模様。

コレクションは国宝3点(「随身庭騎絵巻」「古今和歌集序」「普賢菩薩騎象像」)、要文化財13件、重要美術品44件を含む約2500件の美術・工芸品で構成されている。

建物の周りに、朝鮮系の石像とか、幡龍や亀なんかの銅像のほか、創業者の大倉喜八郎の銅像もあります(写真下:高解像度版はこちら)。

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1階は収蔵品から国宝や重要美術品を展示した「大倉集古館名品展」。国宝3点のほか、横山大観の6曲1双の《夜桜》も展示してます。

2階は企画展の「桃源郷展―蕪村・呉春が夢みたもの―」。「本展では、新収品の呉春筆「武陵桃源図屏風」(江戸時代・18世紀)を本邦初公開し、本作品の創作の原点となった呉春の師・与謝蕪村の筆になる一連の桃源郷作品へのオマージュ、そして呉春自身の画業における本作品の位置づけに着目します」とのこと。

呉春は円山・四条派を応挙とともに立ち上げた画家ではあるが、蕪村の弟子でもある。蕪村がなくなったあとに、応挙とよりかかわるようになった、という感じらしい。テーマは桃源郷です。中国文化をリスペクトしていた蕪村とそれを弟子として引き継いだ呉春というところ。

まあ、そこそこ楽しめたのですが、この量で1300円は高いな。それも前期後期で展示替えがある、というのも微妙なところ。ちなみに後期は10/16からです。

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2019.09.09

駐日韓国文化院 ギャラリーMIで「2019トラベリング・コリアン・アーツ 美術が息づく-その家」を見る

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四谷三丁目にある駐日韓国文化院 ギャラリーMIで「2019トラベリング・コリアン・アーツ 美術が息づく-その家」(無料:2019/8/29-9/25)を見た。韓国の現代美術というと1970年代に生まれた抽象画「単色画(ダンセッファ)」を思い出すのですが、今回は抽象画はあまりなく、具象というか民画的な、素朴な表現の作品が中心です。 展示点数は少ないけど、いい絵ばかりです。これらの作品と朝鮮白磁を並べてみるという、試みのようです。写真撮影はOKとのことでしたので、気になった作品を貼っておきます。

鄭載頀(チョン・ジェホ、1971~) の《鐘岩洞のビル》(左)と《小公路 93-1》(右)。フラットな感じで、精密な絵。 なんとなく単色画を思い出す。韓紙にアクリル絵具で描いてます。和紙にアクリルで描くとどうなるのかな?
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《冊架図八幅屏風》作者不明です。こういう屏風絵を見ると、アジアの共通性みたいなものを感じます。

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こちらは民画の系譜にある現代美術という感じ。李宇城(イ・ウソン、1983~)の《訪問者たち》。布に描いている。私の頭には何が載っかっているのだろか、と思いながら見てました。

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田銀姫(チョン・ウンヒ、1972~) の《あるものたち》。41×32cmの作品。こちらも韓紙に描かれている。枯れた色合いがいいなあ。
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梁廷旭(ヤン・ジョンウク、1982~)
 の《ある店のための看板 no.13》。時計のように動いてます。この看板から何を商っているか、考えてみる。

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横浜のFEI ART MUSEUM YOKOHAMAに巡回するそうです。日程は10/1-10/12。

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2019.09.06

練馬区立美術館で「没後50年 坂本繁二郎展」を見る

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練馬区立美術館で「没後50年 坂本繁二郎展」(1000円 :2019/7/14-9/16)を見た。坂本繁二郎は1882年(明治15年)に福岡県久留米市に生まれた画家。1969年(昭和44年)に87歳で亡くなっている。坂本繁二郎といえば、青木繁と同郷でかつ同い年で、友人で一緒に東京にやってきて、絵の修行をしていたとか、青木繁は浮き沈みの激しい人生だったけど、坂本繁二郎は息の長い画家だったとか…。あと、馬の絵が印象的というか馬の絵の人、という感じで大雑把に把握しておりました。これってかなり大雑把で、実際は最初は牛を描いて、そのうち馬を描くようになり、晩年は静物画が中心となり、能面などを描いている。能面を油絵で描く、というのはあまり見たことがないのですが、もやっとしたタッチで、ちょっと面白い。

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ちなみに、静物画のなかに達磨の絵があって、これがなかなか可愛い。というわけで、達磨が今回の展覧会のマスコット的な扱いになっている。謎なのは、ほとんどのモチーフが、馬も牛も能面も、モデルがあって、それを写生して絵を描いているのだけど、この不思議な達磨にモデルがあったのか、興味深いところ。


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2019.09.05

2019年9月~10月に見ておきたい、と思っている美術展

東京都美術館 「コートールド美術館展 魅惑の印象派」9/10-12/15 
国立新美術館 「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」 8/28-11/11 
ギンザ・グラフィック・ギャラリー 「Sculptural Type コントラプンクト」 8/30-10/12
DIC川村記念美術館 「描く、そして現れる ―画家が彫刻を作るとき」 9/14-12/8
千葉市美術館 「ミュシャと日本、日本とオルリク 」 9/7-10/20
東京ステーションギャラリー 「没後90年記念 岸田劉生展」 8/31-10/20(前期は9/23まで、後期は9/25から)
駐日韓国文化院ギャラリーMI 2019トラベリング・コリアン・アーツ「美術が息づく-その家」 8/29-9/25
泉屋博古館分館 住友財団修復助成30年記念「文化財よ、永遠に」 9/10-10/27(前期は9/29まで、後期は10/1から)
府中市美術館 「おかえり 美しき明治 」 9/14-12/1(前期は10/20まで、後期は10/22から)
横浜市民ギャラリーあざみ野 「しかくのなかのリアリティ」 10/12-11/4
目黒区美術館 「
線の迷宮〈ラビリンス〉Ⅲ 齋藤芽生とフローラの神殿」 10/12-12/1 
江戸川区総合文化センター 「えどがわアートプロジェクト
ー地点採集ー」8/24-10/20
出光美術館 「
奥の細道330年 芭蕉」 8/31-9/29
大倉集古館 「
桃源郷展―蕪村・呉春が夢みたもの―」 9/12-11/17
・東京国立博物館 
御即位記念特別展「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」 10/14-11/24(前期は11/4まで、後期は11/6から)
トーキョーアーツアンドスペース本郷  「TOKAS-Emerging 2019」Part.2  8/31-9/29
太田市美術館・図書館 
本と美術の展覧会vol.3「佐藤直樹展:紙面・壁画・循環」 6/29-10/20
埼玉県立近代美術館 「
DECODE/出来事と記録-ポスト工業化社会の美術」 9/14-11/4
フジフイルム スクエア 「覚醒する写真たち」 今 道子 + 佐藤時啓  9/1-12/27 
朝倉彫塑館 「朝倉彫塑館の白と黒 CONTRAST: Color, Material and Texture」 9/7-12/15
・六本木ヒルズ カフェ/スペース 「
見たことがないブリューゲル~巨大3スクリーンによる映像の奇跡~」9/10-9/16

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2019.09.02

東京オペラシティ アートギャラリーで「ジュリアン・オピー」を見る

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東京オペラシティ アートギャラリーで「ジュリアン・オピー」(1200円:2019/7/10- 9/23)を見た。ジュリアン・オピー(Julian Opie)は単純で太い線と点、フラットな色使いで人物を描く現代美術家。イギリスの方です。1958年生まれなので、そろそろ61歳ということになる。今回の展示では2018年から2019年にかけて制作された、新作のみが並んでいる。以前の絵は、人物を描くとき、丸い黒い大きな点で目を表し、丸い黒い小さな点で鼻穴を表していたけど、今回の作品では目も鼻もない。思い切って単純化されている。そして、上の写真のように(タイトルは《Walking in Boston 3》)なぜか人々は歩いて移動中のようで、顔は単純化されたけど、服装や髪型、帽子、カバン、ヘッドフォンなどは見る側が、それとなく分かるように描かれている。例えばヘッドフォンなのか、イヤフォンなのかは分かるし、ショルダーバックかトートバックかも分かる。でも足下は一様に靴は描かれていないのが、なんとなく不思議だ。

これだけ単純な要素で構成されていても、作品として成立するところが面白い。都市における人々の生活感みたいなものが見えてくる。それは、太い線で描かれる動きを含んだ表現から来るように思える。カタログにあるオピー自身の解説によると「僕は太い線を使って絵を描く。扱いきれるギリギリの太さの線を使って。太くなればなるほど、線は具体的な事物に近づいていく。そのような線は、対象のエッジを描写するだけではない。それ自体がアクチャルな事物となる。」としていて、「扱いきれるギリギリの太さ」というあたりに太さへの試行錯誤が読み取れる。

こういった太い線の試みは、例えば下の写真の作品も生み出している。8ミリ厚のブロンズのシートでドローイングしたものらしい。タイトルは《Cardigan》です。


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このほか、LEDを使った作品も多かった。下の写真は《Crow》。カラスです。5つLEDスクリーンにカラスが何かをついばんでいる様子がアニメになっている。

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こちらは《Carp》。20台のLEDスクリーンで表示される。24mの作品。

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