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2019.10.28

国立新美術館で「カルティエ、時の結晶」を見る

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国立新美術館で「カルティエ、時の結晶」(1600円:2019/10/2-12/16)を見た。カルティエというと装飾品全般、時計や指輪、ネックレスなどなど、見たことはあるが、ほぼ触ったことはない。せいぜい触ったことがあるのは中古ライターぐらいでしょう。そういう意味では普段なら足の向かないお展覧会ですが、会場構成が「新素材研究所/杉本博司+榊田倫之」なので、足が向きました。

ちなみに新素材研究所というのは美術家の杉本博司と建築家の榊田倫之が設立した建築事務所で、2008年に設立している。「『旧素材こそもっとも新しい』という理念のもと、古代や中世、近世に用いられた素材や技法を、現代にどう再編して受け継いでいくかという課題に取り組む」という方針のもとで、MOA美術館(熱海)や小田原文化財団 江之浦測候所(小田原)などのプロジェクトを進めてきた。今回のカルティエ展もその一貫で独自の空間を生み出している。

まあ、いろいろと見どころのある展示でした。ざっとまとめると

・冒頭の巨大な時計は杉本博司による《逆行時計》。名前の通り、時針と分針は逆回りしている。Casa BRUTUSのインタビューによると杉本曰く「もし手鏡など小さなミラーをお持ちなら、時計を背にして立ち、鏡に時計の文字盤を写してみてください。すると、今現在の時刻が見えます。つまり「今あなたが存在する空間は、逆行している時間の鏡像である」ということ。どう? 逆説的でしょう?(笑) 」とのこと。

・その次が「ミステリークロック」。時計の針は動いているけど、宙に浮いていて、どういう動力で動いているか割らないという不思議な時計。いかにも高そうな時計が、白っぽいカーテンのようなもので柱状に囲われたところに展示されている。それが12カ所。この白いカーテンのようなものが、妙に透明感があって白というか銀色というか、光りの柱のように見える。この布地が川島織物セルコンという京都にある繊維会社と新素材研究所が共同開発したものだそうです。

・第2章「フォルムとデザイン」では大きな石組みの間に展示ケースを収めた形で展示してます。石は大谷石で1個80kg、それを約550個使ったもの。地底という感じ。

・第3章「
ユニヴァーサルな好奇心」では巨大な楕円形の展示ケースに収められている。ここは撮影可でした。下の写真がその展示ケース。

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このケースのなかに、かなり透明なガラスの窓がついていて、そこにカルティエの作品が並んでます。そのガラスはほとんど反射しないもので、詳しくは日経xTECHの記事を参照

下が「バンブー」 ネックレスと「バンブー」 ブレスレット。ネックレスを飾ってあるトルソーは、新素材研究所によるもので「神代杉、神代欅(けやき)、神代桂、屋久杉の4種の素材を使い、大阪の仏師にお願いして1点ずつノミで彫ってもらいました 」とのこと。

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こちらは「時計付きデスクセット」。珊瑚や瑪瑙をふんだんに使っているようです。

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・杉本のコレクションである古美術と装飾品を組み合わせた展示もあり、「たとえば《春日鹿曼荼羅》の軸の下には、フェーン(シダ)の葉のモティーフのダイヤモンドのジュエリー。フェーンは藤の花房にも見え、鹿の背中に生えた木に絡みつく藤の花と響き合う。」といった感じで、組み合わせの妙がある。ちなみに、なんか雑草のようなモノがあるな、と思ったら、それは須田悦弘の作品だったりして面白い。

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2019.10.14

千葉市美術館で「ミュシャと日本、日本とオルリク」を見る

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千葉市美術館で「ミュシャと日本、日本とオルリク」(1200円:2019/9/7-10/20)を見た。「この展覧会は、アルフォンス・ミュシャ(Alfons Mucha 1860-1939)とエミール・オルリク(Emil Orlik 1870-1932)というチェコ出身のふたりのアーティストに光をあて、ジャポニスム(日本趣味)の時代に出発した彼らの作品と、彼らから影響を受けた日本の作家たち、さらにはオルリクに木版画を学んだドイツ語圏の作家たちを取りあげ、グラフィックを舞台に展開した東西の影響関係を観察しようとするものです」(プレスリリースから)とのこと。アルフォンス・ミュシャは知っていたけど、エミール・オルリクは知りませんでした。二人はチェコ出身というだけで、特に交流があったということもなさそうです。

実態はよくわかりませんが、エミール・オルリクについての企画展を考えた学芸員さんが、オルリクだけでは絵の点数も話題も持たないので、同じチェコ出身の人気者ミュシャを絡めてみた、という感じのする展覧会です。ちなみに上の写真がミュシャの作品(のコピー)で下の写真がオルリクの作品(のコピー)です。見れば分かりますが、この2人の作家はほぼ共通点がない。

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共通点はないけど、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパで受け入れられたジャポニズムのなかで、制作してきたわけだから、完全に関係ないとも言えない、という曖昧な前提から始まっているようにも見える。

まあいいんだけど、面白いのは、ミュシャの影響を受けた日本人アーティストはかなりいて、浅井忠、黒田清輝、和田英作といった、当時、日本からフランスに渡っていた画家達は、ミュシャのファンで、その作品を日本に持ち込んでいるそうだし、黒田清輝に私淑していた杉浦非水は、もろのその影響を受けている。あと、与謝野鉄幹が創刊した文芸誌「明星」の表紙はミュシャ風で、印象深いのは藤島武二が描いた与謝野晶子の歌集「みだれ髪」の表紙もミュシャ風であることだ。その辺は今回の展示で、よくわかりました。

そんな日本に、浮世絵に興味を持ったオルリクが日本にきて「浮世絵版画の彫りや摺りといった技術を学び、多色摺りの木版画を制作しました」(プレスリリース)とのことで、それがこの展示会の後半の見どころらしい。面白いのは、オリクルは明星に作品を掲載していて、藤島武二とも交遊があった、ということ。この時期の明星はかなり面白い雑誌だったらしい。

というわけで、この展示で知ったことをざっとまとめると
・ミュシャの版画の縦長のフォーマットは浮世絵の柱絵の影響かもしれない。
・杉浦非水、藤島武二は日本でのミュシャ派であった。
・ヨーロッパや米国のアーティストが来日して、浮世絵の彫摺を学んでいた。その一人はエミール・オルリク。
・米国のアーティストではヘレン・ハイドも浮世絵を学んだ一人。女性です。作品は繊細でなかなかよろしい。
といったところ。

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2019.10.13

DIC川村記念美術館で「描く、そして現れる―画家が彫刻を作るとき」を見る

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DIC川村記念美術館で「描く、そして現れる―画家が彫刻を作るとき」(1300円:2019/9/14-12/8)を見た。上の写真はカタログの表紙を撮影したもので、サイ・トゥオンブリー のブロンズ作品と絵画。川村記念の収蔵品で、タイトルはどちらも《無題》。まあ、この2つの写真に象徴されるように、立体作品も平面作品も作る作家を取り上げて、その2種類の作品を並べて展示するというもの。「国内外の 25 人の画家たちが、カンヴァスから踏み出して 試みた実験を約 80 点の作品でご紹介します。」(プレスリリースから)とのこと。

解説によると、ルネサンス期あたりまでは画家兼彫刻家という芸術家は多くいたのだけど、その後、分業が進み「彫刻家が常にデッサンをし、時に絵や版画を残したのに比べると、画家が彫刻を本格的に制作した例は大変少なくなります」とのこと。近代になって、おそらくはアカデミー的なモノの制限がなくなり、印象派のなかで彫刻を手がける作家が登場し、20世紀に入るとより増える、といった感じだそうです。まあ、現代アートの世界では、平面のみの作家って減っていて、それこそ最先端はビデオや立体を含めたインスタレーション的なものになるから、平面と立体を行き来するのは、とても一般的な傾向にあると思います。いろいろあるけど、気になったのは以下の2点。

・ピカソが陶器を含めて立体を手がけていたのは知っていたけど、マグリットも平面作品からそのまま立体作品にしたものがあった。ここではマグリットの《真実の井戸》というスラックスと革靴をはいた片方の足を描いたものが展示されていた。足は1本で途中までしかない、という絵があって、それをそのままブロンズにした作品がそのそばに置かれていた。どちらも冨山県美術館の収蔵品。

・ジャスパー・ジョーンズは1964年に来日し、日本国内の作家に影響を与えていた。特に菊畑茂久馬は「絵と絵でないものの関係」というテーマを引き継いで〈天動説〉シリーズを制作している、とのこと。

ちなみに、台風15号の影響で、庭園には入場できなくなっていた。台風19号の影響はどんなものか不明ですが、入場できるようになるのは、そこそこかかりそうな感じです。

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2019.10.09

ミュゼ浜口陽三で「凹凸に降る -ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション 2019年冬の企画展-」を見る

ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションで「凹凸に降る -ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション 2019年冬の企画展-」(600円:2019/10/5-12/22)を見た。小野耕石、滝澤徹也、中谷ミチコの現代作家の作品と浜口陽三の作品を展示するというもの。「はっきり形をとらない大切なものを、手のひらにさぐり、凹凸のあわいを模索する三人の現代作家を、浜口陽三の銅版画作品と併せて紹介します」(プレスリリースから)とのこと。

「凹凸のあわい」というのは意味が分かりにくいけど、小野耕石はシルクスクリーンを何回も重ねることでインクの粒による平面的な立体物を作成するし、中谷ミチコは「凹状に彫り沈めた石膏に透明樹脂を流し込んだ」もので、一見、平面作品に見えるけど、妙な立体感があって、掘ってあるはずなのに浮き上がって見えるのだけど、よく見るとへこんでいて、へこんだ部分には着色されていて、そのへこみを透明な樹脂で埋めている。滝澤徹也の作品はよく分からない部分があって、発酵絵画といっていたり、蜘蛛の巣を和紙に刷りとる、とか書かれている。どうやら和紙職人でもあるらしい。そしてこの3人の作品の間に浜口陽三の版画が並んでいる。まあ版画は凸凹を使って表現するわけだから、いずれも凸凹を扱った作品ではある。

中谷ミチコの作品では、立方体の《夜を固める》というシリーズが見たことのないモノで印象深い。黒い立方体かと思ったら、よく見ると白っぽい絵がその立方体の中に埋め込まれているように見える。それが立方体の側面、4つに展開されているというもの。

小野耕石の作品は小さなインクの柱を大量に並べて、抽象画的なイメージを作り出しているのだけど、今回はそれとは全く違った作品も用意されていて、それは本そのものの形をした黒い物体という感じ。タイトルは《絵を描く事を失ってなお表現が固定観念からの通過を語るかぎり 版と支持体からの自立を経ても重力からの恩恵と制限から解放されることはない》といったことになっている。

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