カテゴリー「art」の記事

2020.06.29

東京都現代美術館で「ドローイングの可能性」を見る

東京都現代美術館で「ドローイングの可能性」(主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館  会期:2020/6/26/21 入場料:1200円)を見た。なかなかの力作です。ただ会期が短いのが残念でした。本来なら3カ月の展示が3週間以下に圧縮されてしまった。できれば会期中に2回は見たかった。ちなみに担当学芸員は関直子さんです。

ちなみにドローイングというと、素描とかデッサンのような、絵画なら下書き的な、あるいはラフスケッチ的なものを思い浮かべるのだけど、ここでは「線を核とするさまざまな表現」と定義して、色鮮やかな作品や立体作品まで扱ってます。

登場するのは石川九楊、マティス、戸谷成雄、盛圭太、草間彌生、磯辺行久、山部泰司。書から立体までという感じ。

石川九楊(1945~)は書家で、今回はご自身で執筆した評論をベースに書の作品に仕立てたものを展示してます。ぱっと見、リズミカルな線がある規則に従って踊っているようなイメージです。マティスの作品は切り絵を使ったJAZZという挿絵本です。原画は色紙をハサミで切って貼ったもので、「ハサミで素描する」という感じです。 JAZZにはテキストもあるのですが、それはマティスによる直筆で、これも達筆です。

戸谷成雄(1947~)の作品では、鉛筆による線画から、その線を鉄線で表現して、さらにボードでカッターで切り刻んだり、着色した針金で表したりする《露呈する《彫刻》》という一連の作品が印象的。戸谷の作品は展示会場に壁で囲った空間を作り、その壁に沿って《露呈する《彫刻》》 が並んでいる。そして壁の内側には、その真ん中に木材なのか石材なのか、ぱっと見たところでは判別できない立方体が床に置いてある。その立方体は表面が刻まれていて、壁の内側にはその刻まれた部分が貼り付けてある。タイトルは《視線体―散》 。

盛圭太(1981~)は、毛糸と糊で制作した作品を出展している。巨大です。今回は、展覧会に合わせて、会場で制作したそうだ。盛の作品は2018年の20th DOMANI・明日展で見たことがあって、そのときも糸を使ったドローイング作品でした。下のような展示でした。タイトルは《Bug report》。この作家の場合、タイトルはすべて《Bug report》 です。下の写真は高さ650×幅3600cmという
大きな作品の一部です。この作品だけ撮影可でした。

Mori1
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草間彌生の作品は、初期の水玉や網目を埋め尽くすように描いた作品。言われてみればドローイングだな、という感じ。

磯辺行久と山部泰司の作品は「水をめぐるヴィジョン」としてまとめられている。水を描くことはドローイングと相性がいい、というのがよく分かる。特に山部の作品は赤や青の単色で描かれているのだけど、山水画的な流動感があって、面白い。

図録も購入しました。3500円です。巻末に石川九楊の解説「ドローイングとライティング」と、石川作品の元となるテキストが掲載されていて、なかなか興味深い。

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2020.06.14

板橋区立美術館で「深井隆 -物語の庭-」を見る

板橋区立美術館で「深井隆 -物語の庭-」(主催:板橋区立美術館、東京新聞 会期:2020/3/14~6/28 入場料:650円)を見た。本来は5月10日までの予定でしたが、新型コロナ対策で4月4日から休館していたため、5月30日から再開し、会期も延長されました。ありがたいことです。特に日時指定のための予約システムはないようなので、まあ、そんなに混まないでしょうという予想のもと、マスクして行ってきました。ちなみに写真撮影がOKでしたので、ざっと写真で紹介しようかと思います。

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深井隆は1951年生まれの彫刻家。2018年まで東京藝大彫刻科で教官を務めてました。アトリエが板橋区にあるらしく、その関係から板美で開催することになった模様。作品は木彫でそこに金箔や銀箔を使ったり、顔料で着色してみたりします。モチーフは椅子や小さな家、ベッド、馬といったところ。図録に掲載された解説「深井隆の物語の庭を歩く」(弘中智子)によると「人間の形を作らずに人の存在や内面を表現する方法として椅子を見出した」とある。下の写真は《王と王妃》(2018)という作品です。座面にリンゴと本が置かれている。リンゴは禁断の果実だけど、縦に切るか横に切るかで象徴するモノも変わるらしいし…。どちらが王であろうか?
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椅子のほかに建物ものある。
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そのうちの一つをクローズアップしてみると下のようになる。《栖 2018-3》(2018)です。栖には1と2がある。緑青らしいのですが、妙に澄んだ青が気持ちいい。
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こちらは馬です。《月の庭 ー月に座す》(2006)。馬が水辺で足の隠れるくらい水につかっている感じがする。
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こちらは翼です。そして新作です。椅子に固定されていた羽が飛び立ったのかしら。《青空―2020》(2020)。
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こちらは初期の作品。《幻想の闇より》(1993)。ベッドに何本も刺さっているのだけど、何となく、これは光りかな、と想像している。ベッドに朝の光りが槍のように差し込んでいる。
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わりとゆっくり拝見できました。図録を2000円で購入しました。そこそこ満足してます。

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2020.06.11

江戸東京博物館で「奇才―江戸絵画の冒険者たち―」を見る

江戸東京博物館で「奇才―江戸絵画の冒険者たち―」(2020/6/2-6/21:1400円)を見た。生の絵金が拝見できる! というのが見に行った最大の理由です。ちなみに、この展覧会は「奇想の系譜」拡張版というか全国版といった趣で「北は北海道から南は九州まで、全国から35人の奇才絵師を集め、その個性溢れる作品を選りすぐり紹介します」としてます。

以前、千葉市美術館で「百花繚乱列島―江戸諸国絵師めぐり―」(2018/4/6-5/20)という展覧会がありましたが、コンセプト的には似た感じです。ただし、今回の「奇才」では俵屋宗達や尾形光琳、北斎、応挙、蕪村といったメインストリームの画家も入ってきて、それは今となってはメインストリームだけど、当時はアバンギャルドな作品を描いていて、この作品なんかそうです、という見方で取り上げている。まあ、作品はいいものを見せてもらったけど、会場とか運営は難あり、といった感じでした。

分厚い図録(2700円也)には35人、229点の作品が掲載してあります。下の写真が、図録の表紙です。表紙には北斎の《上町祭屋台天井絵 男浪》を背景にして、中央に絵金の《伊達競阿国戯場 累》、左下に狩野山雪の《龍虎図屛風》の虎、右下に鈴木其一の《達磨図凧》をレイアウトしてます。

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作品の選択は元板橋区立美術館の館長で、現在は長野県小布施町にある北斎館の館長である安村敏信氏による。図録に掲載された安村による解説によると「奇才の「奇」とは「思いがけない」の意である。つまり人の意表を突く思いがけない表現を試みた絵師たちのこと」としてます。今回、見た作品で気になったのは、狩野山雪の《寒山拾得図》、円山応挙の《淀川両岸図巻》、祇園井特《鈴屋大人像》、耳鳥斎《別世界巻》、鈴木其一《紅葉狩図凧》《達磨図凧》、歌川国芳《水を呑む大蛇》、林十江《花魁・遣手婆図》、髙井鴻山《妖怪図》、田中訥言《日月図屛風》、片山楊谷《竹虎図屛風》といったところ。

会場は、江戸東京博物館1階の特別展示室です。狭いところを最大限に利用するため、通路ができるだけ長くなるように展示ケースを配置している感じです。デパートの展示会のようです。そして展示ケースはそこそこ反射して、見やすいものではない。展示数は期間中に展示替えがあるものを含めると86点。出展リストには155点ありますが、当初は途中で展示替えをして、155点を見せるつもりだったのでしょう。69点はみることができないままで、図録で確認するしかないです。そして問題は、35人の作品がすべてあるわけではないこと。浦上玉堂と神田等謙の作品については実物がなく、小さいパネルが貼ってあるだけでした。ちなみにカタログには229点掲載されています。絵金が拝見できたからいいけど、1400円の入場料は微妙なところ。

チケットは現地購入のみです。行ってみたら混んでました、という場合はひたすら他者と距離を取りながら待つことになります。一応、TwitterとFacebookで混在状況は通知するとのことです。ちなみに、私がいったときはチケットの購入待ちはなく、するすると入場できました。会場も空いてました。ちなみに入場の動線は制限していて、1カ所からしか入れないことになってますが、入口の案内はわかりにくいですね。実際、出口付近には警備の方が立っているのですが、ちょっと見ていたら文句を言って強行突破した方もいました。突破した方がその後、どうなったかは知りませんが、諸々問題がある感じです。

江戸博のあと、山口県立美術館(2020/7/7-8/30)とあべのハルカス美術館(2020/9/12-11/8)に巡回する予定です。

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2020.06.08

東京ステーションギャラリーで「神田日勝 大地への筆触」を見る

東京ステーションギャラリーで「神田日勝 大地への筆触」(2020/6/2-6/28:1100円)を見た。神田日勝は1937年(昭和12年)に東京で生まれ、1970年8月に32歳で亡くなった画家。「日勝が7歳のとき、一家は戦火を逃れ、拓北農兵隊に応募して北海道に渡ります。入植地の鹿追に着いたのは、1945年8月14日のことでした」とのこと。つまり敗戦の前日に入植したということです。ちなみに「日勝」という名前は、「日本勝利」という時代を反映したものだそうで、本名です。

神田日勝といえば、壁全面に新聞紙を貼った部屋らしきところの中央で腕を組み座っている男を描いた《室内風景》とか、絶筆となった未完の《馬》が印象的です。どちらも印刷物でしかみたことがなかった。実物は北海道にあるのですが、今回の展覧会ではそれを東京で拝見できる、というのはありがたいことです。ちなみに《室内風景》は札幌の北海道立近代美術館の収蔵品で、未完の「馬」は北海道鹿追町の神田日勝記念美術館の収蔵品です。

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未完の《馬》の半分が上のポスター。これだけ見ると、そこそこの完成度ですが、実物を見ると本当に未完な感じが面白い。一方で、未完だけど、作品として成立しているところが不思議で、さらにこのように描くのね、というのが多少は見えて興味深いです。

一応、展覧会では、ほぼ年代順に展示されていて、初期の作品、「壁と人」「牛馬を見つめる」「画室/室内風景」「アンフォルメルの試み」という構成になっている。《馬》と《室内風景》しか知らない私のような者にとっては、「画室/室内風景」と「アンフォルメルの試み」にある作品は神田日勝という画家の作品とはあまり思えない。色彩にあふれているからだ。画室/室内風景の中に《室内風景》は含まれるのだけど、《室内風景》以外は色彩がフラットで妙に明るい。そして「アンフォルメルの試み」ではアンフォルメル(不定形)といえばそうだけど、完全に抽象化されているわけでもなく、モチーフは馬や牛、人であることは明らかで、ポロックというよりはジャン・デュビュッフェで、それも色彩にあふれたデュビュッフェという気もする。画業15年でこれだけ振幅があるのを見ると、もっと長生きしたら、どんな作品を創作したんだろうかと考えてしまう。

あと、途中で気が付いたのですが、神田日勝の作品は、ほとんどベニヤ板に描かれている。キャンバスに描いた作品もあるけど、一部の風景画に限られ、数は少ない。そしてベニヤ板を支持体としてペインティングナイフで描くのだけど、ペインティングナイフでこれだけ細かな描写ができるんだな、と少々あきれてみてます。特に馬や牛の体毛の感じがすごい。ちなみに、ベニヤ板を使う理由は、ベニヤ板が比較的入手しやすく、かたい描き心地を好んだため、とのことです。

当初は2020年4月18日から始まる予定でしたが、新型コロナ対策で開催が延期になり、ようやく6月2日から開催されました。新型コロナ対策のため、基本はインターネット予約でチケットを購入する必要があります。予約はローソンチケットを指定してます。ただし「中学生以下、前売券・招待券・招待状・年間パスポート・5館共通券をお持ちの方」は予約不要です。私は年間パスポートを購入していたので、予約もせずに入れました。

入場のときに、年間パスポートの期間が3カ月延長になるため、ちょっとした手続きがありました。その間、受付のところで待っていたのですが、何も知らずにきたお年寄りの方々にローソンチケットについて説明したり、割引券が使えるはずだと思い込んできた方に対応していて、受付の方々は忙しそうでした。この辺のネットで確認してから行こうとは考えない方々にどう対応するのか、というのは難しいことのように見えます。

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2020.06.02

新型コロナの緊急事態宣言臨時休業明けの東京国立博物館に行ってみた

新型コロナの緊急事態宣言が解除されて、とりあえずいろいろな条件を付けて美術館・博物館の臨時休業が終わり、開館となった。そこで、ほぼ3カ月ぶりの6月2日に常設展を再開した東京国立博物館に行ってみた。入場するとマスクをしたトーハクくんとユリノキちゃんが迎えてくれます。

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ちなみに、美術館・博物館におけるいろいろな条件とは、感染予防対策に関わる諸々の条件です。ざっと挙げると以下のようになると思える。

1.混雑を防ぐために入場者数を制限する
2.入場前に感染の可能性ある者を発見してコントロールする
3.鑑賞中に鑑賞者と美術館員が感染しないようにコントロールする

そのため、どうなったかというと、まず入場するために予約することになる。東博の予約は東博のWebサイトからインターネットによる予約・決済システムを運営する イーティックスのシステム経由で予約する。この予約システムは、なんとなく見覚えがあって、例えば草間彌生美術館とか直島の地中美術館の来場システムに採用されている、とのこと。

下の画面が東博の予約システムです。カレンダーで日付を選び、さらに入場時間として10時半、11時半、12時半、13時半、14時半から選ぶ。入場時間ごとの「空き数」が表示されるので、その数字から、その時間帯の混み具合が分かるようになっている。入場者数の上限は公表されていないが、ざっと見た感じでは空き数が177というのもあったので、180とか200とかいった人数になるのだろう。 

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この次の画面で、一般(1000円)か大学生(500円)、高校生以下や障がい者など無料入場者のどれかを選ぶことになる。私は東博の友の会に入っているので無料でした。無料でも予約しないと入場できないのがポイントですね。チケットは最終的にメールでURLが送られてきて、そのURLにアクセスした先にあるQRコードを
表示したり印刷したりして、入場時に示すことになる。

入場時には、最初に検温、といってもカメラの前に立つだけのもので、いわゆるサーモグラフィとかで計測している。まあ、体温が37.5°以上であれば、ここでお引き取り願う、ということになるんでしょう。その後、チケット確認となる。ちなみにマスク着用と入場前のアルコール消毒も必須となる。

一応、鑑賞中のマナーとして、十分な間隔をとる、会話を控える、作品やケースなどに手を触れない、としている。とは言っても、ひたすら展示品の前で連れの方に解説している人がいても、特に注意されてませんでした。まあその程度です。

さて、実際の展示ですが、本館1階の3/4程度と平成館1階の考古展示室、法隆寺宝物館1階のみです。本館と法隆寺宝物館の2階には行けないし、東洋館も閉館してます(東洋館と法隆寺宝物館の2階 は6/24から)。私は会員として無料で入場しているので、そんなに違和感はないのですが、1000円払って入るの方は、ちょっと高くないかなあと思います。ちなみに下の写真は本館1階の4の部屋です。普段は茶の湯関連の展示があるところですが、今は何もありません。

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個人的には、下の写真の「愛染明王坐像」(重文)とか、その下の高橋由一「長良川鵜飼」が良かったなあ、と思うわけです。

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2020.05.04

府中市美術館で「春の江戸絵画まつり  ふつうの系譜  「奇想」があるなら「ふつう」もあります─京の絵画と敦賀コレクション」を見る

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府中市美術館で「春の江戸絵画まつり  ふつうの系譜  「奇想」があるなら「ふつう」もあります─京の絵画と敦賀コレクション」(700円:2020/3/14-5/10)の前期を見た。土佐派、狩野派、円山四条派などの江戸時代における主流の絵画を「ふつうの系譜」として紹介してます。奇想の系譜の裏面というか、本当は奇想が裏面で、ふつうが表面かもしれないのですが…。展示の冒頭は、岩佐又兵衛の《妖怪退治図屛風
》とか、曾我蕭白の《山水図》などが並んでます。この辺は完全に奇想です。その後は「ふつう」の絵、やまと絵の土佐派、中国風の狩野派などが並んでます。まあ、江戸時代の絵画から、奇想系と琳派、浮世絵の3要素を省いて、残ったモノという感じです。

興味深いのが、「ふつう」の絵がほぼ福井県の敦賀市立博物館のコレクションだということ。点数は95点です。ちなみに4月14日から後期に入って、大きく展示替えがあるのですが、新型コロナウイルス感染症への対策で休館となり、後期を開催できないまま、閉幕となりました。前期に見ると後期は半額になりますが……残念なことです。

ちなみにカタログは通販で購入出来ますので、興味のある方はこちら(https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kankou.html )をご覧下さい。

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2020.03.23

練馬区立美術館で「生誕140年記念 背く画家 津田青楓とあゆむ明治・大正・昭和」を見る

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練馬区立美術館で「生誕140年記念 背く画家 津田青楓とあゆむ明治・大正・昭和」(1000円:2020/2/21-4/12)を見た。津田青楓について、私が唯一知っているのが竹橋の近代美術館で何度か見た《犠牲者》という作品でした(写真下:東京国立近代美術館で撮影)。サイズは193×95.4cmと縦長。見るたびにぞっとする作品で、このとき見た解説には、「1933年(昭和8年)、小林多喜二が獄死した年に描かれた作品」とあった。この作品の印象で、青楓はプロレタリアアートの画家と思い込んでました。今回の展覧会を見ると、まあそういう側面もあるけど、そんなに単純なものでもなく、かなり複雑な背景を持つ画家であることが、よく分かりました。

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津田青楓は1880年(明治13年)に京都市中京区に生まれた。生家は生け花「去風流」の家元。没年は1978年、98歳で亡くなっている。なかなか長生きです。印象的な事柄を年表にすると以下のようになる。

・1896年(明治29年)、16歳から図案制作を始める
・1907年(明治40年)、27歳に安井曾太郎ととも渡仏
・1910年(明治43年)、30歳で帰国。翌年、東京に進出し、夏目漱石と出会う
・1914年(大正3年)、34歳で二科会を設立メンバーに
・1923年(大正12年)、43歳で関東大震災のあと京都へ。マルクス主義経済学者の河上肇と出会う
・1933年(昭和8年)、53歳、《犠牲者》を制作するも、左翼運動への資金提供で逮捕。そこで左翼運動との交流を断つことを誓約させられ、自身は洋画断筆を宣言
・以降は日本画のみを探求。良寛に傾倒し、書に没頭する。

このほか、20代前半に徴兵され、日露戦争にも従軍しているというのも意外です。また漱石と出会ったあとは、装丁も手懸けていて、漱石の書籍のほか、鈴木三重吉の本の装丁もやっている。この装丁も馴染みのあるデザインで、自分が既に青楓の作品を見ていたことに驚かされます。

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2020.03.16

上野の森美術館で「VOCA展2020 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─」を見る

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上野の森美術館で「VOCA展2020 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─」(600円:2020/3/12-3/30)を見た。コロナウイルス感染症の防止で、かなりの数の美術展が延期になったり、延期の末に中止になっているけど、VOCA展はなんとか展示はできてました。ただし、受賞者のアーティスト・トークはなく、少々寂しい感じ。一方、作品の写真撮影は基本、OKとなりました。というわけで気になった作品について、画像を貼っておきます。

ちなみにVOCAは、40歳以下の作家で、美術館の学芸員とかの推薦されたもの、という制約がある。作品は平面作品で未発表のもの。物理的な制約として「250cmx400cm以内の壁面に展示できる」とか「厚さは20cm以内」「重量は40kg以内」があるようです。

全体の傾向で気になったのは写真を使っていたり、版画を取り入れていたりする作品が多かったこと。なんとなく純粋に絵具だけという作品は出展された全33作品のうち13点でした。では普通に写真であったり、版画であったりするかというと、そうストレートでもなく、写真を素材にするとか、出力はインクジェットプリントだけどその前の工程はかなりアナログだったりしてます。そのため、一見写真だけど、なんか違うとか、一見ストレートな絵画に見えるけど違う、といったことになる。

まあ、そういう意味でも印象深いのがVOCA賞を受賞したNerholの《Remove》。Nerholの作品は同じ写真をかなりの枚数を重ねて、そこで彫ることでゆがみやぶれているような視覚効果が現れるものなんだけど、今まで見たことがあるのはカラーのポートレイト写真をベースにしたものだったので大きさはせいぜいA4とか、そんなイメージでした。今回の受賞作は150×204×5.7cmと大きい。そしてモノクロです。
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横から見ると下のようになる。なんとなく等高線に合わせて切り抜いた厚紙を重ねて作った立体地図のような感じ。

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VOCA奨励賞を受賞した菅 実花の作品も写真です。《A Happy Birthday, selfiewithme》というタイトルでサイズは213.2×152.4×6cm。写真なんですが、何も知らなければ一卵性双生児の姉妹が左右対称に見えるように座っているところを写真館的に撮影した、ということなんでしょうが、カタログの解説によると向かって右側が作者で左側が人形とのこと。作者が自分を型取りして人形を作る、というあたりが不思議な感じ。いわゆる森村泰昌とかシンディ・シャーマンのようなセルフポートレイトの系譜ではあるけど、またちょっと違う。森村もシンディ・シャーマンも他者に扮装するわけど、菅は自分をコピーしているわけで、手法は近いけど、コンセプトは真逆である。

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下の作品は網戸に刺繍したものです。立原麻里子の《御嶽のある風景》、大きさは38.2×81.7×15.8cm。立原の作品はほかに3点あって、そのうち2つは組になっていた。網戸に刺繍というのは、最近読んだサライネスの「ストロベリー」で見たけど、本当にいるのね、という感じ。ただし、刺繍感はあまりない。かなり油彩っぽい。そして解像度が高い。かなり不思議な感じで、ほかの作品も見てみたい。

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今村文の《お花のえ きく、りんどう、百日草》は直径170cmの円形の絵です。厚さは4cm。エンカウスティークという手法で描かれている。エンカウスティークは顔料と蜜蝋、樹脂をまぜた絵具で描き、それを熱して漆喰地に焼き付けていく、というものらしい。

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側面にも描かれていて、なんとなく可愛い。

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ところで、今回は写真撮影がOKでした。下の看板が入口に置いてあった。カメラでもスマホでもOKということらしい。ときどきあるのですが、スマホはOKで、カメラはだめ、あるいはその逆もある。スマホはシャッター音がするので敬遠されることもあるが、ここではOKと読める。気になるのは「フラッシュ、動画、三脚使用、接写は禁止です」というあたり。接写は禁止というのがよく分からない。一般的には被写体を至近距離から撮影することではあるが、監視員が「はいそこの人、接写はだめよ」という感じで撮影を注意するとして、どうやって普通の撮影と接写を区別するのだろう、と思うわけです。定義も曖昧だしね。一定距離以上近づくな、というのは分かるけど。

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2020.03.09

草間彌生美術館で「ZERO IS INFINITY 『ゼロ』と草間彌生」を見る

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草間彌生美術館で「ZERO IS INFINITY 『ゼロ』と草間彌生」(1100円:2020/3/5-5/31)を見た。草間彌生美術館の今までの展示はすべて草間の新作などを中心に、草間作品のみを展示してましたが、今回は草間作品以外のの作品も展示される初のグループ展です。1958年にドイツで結成されたZEROという芸術家集団と1957年にニューヨークに渡った草間の交流についての展示です。

展示は2階と3階。2階が比較的平面的な作品で、3階は立体的な作品が並ぶ。草間作品は2階に3点あって、それ以外はゼロの面々の作品です。4階は鏡を貼り合わせて無限の空間を作った草間作品、5階は資料映像とステンレス製のミラーボールを使った草間によるインスタレーションを展示でしている。

ゼロは抽象的な表現ではあるけど、いわゆる抽象画という感じではなく、色彩は単色で絵筆以外のものを使って作品を制作する。例えばギュンター・ユッカーの《LIGHT RELIEF》(1959年制作)は釘とセメント、木で制作されている。木の板にくぎを格子状に打ち付けてセメントで固めたものだ。写真は撮影できませんでしたが、ギュンター・ユッカーの作品を豊田美術館で撮影したことがあるので、それを掲載しておきます。《変動する白の場》という1965年の作品です。こちらの方が打ち付けられた釘の密度は高くなっている。

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横から見る下のようになる。
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なんとなく、草間作品にもある繰り返しと近いものが感じられる。ゼロのメンバーはハインツ・マック、ピエロ・マンゾーニとかあまりなじみのない方から、イヴ・クラインとかルーチョ・フォンタナといったビッグ・ネームもおります。それぞれ、扱う素材が違っていて、かなりバリエーションがあるのですが、基本、あまり色数が少ないし、絵筆はほとんど使ってない、というのは共通かもしれない。

ゼロについては
・雑誌を発行したり画廊を経営したりと、かなり複合的なグループである。
・ドイツ以外にオランダのヌルというグループや、フランス、イタリア、アメリカなど国を超えたネットワークを形成した。
というあたりが面白い。

さて、4階と5階は撮影OKでしたので、画像を貼っておきます。下が4階にあった《無限なる天国への憧れ》。照明のない部屋に六角形のミラールームを配置したところに一人ずつ入場して鑑賞します。ミラールームを覗くとこんな感じです。

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5階には外が見える、屋根のない屋上ギャラリーがあるのですが、そこには大量のミラーボールが置いてありました。作品的には《ナルシスの庭》というものです。この作品、1966年のベネチア・ビエンナーレで発表されたのですが、ルーチョ・フォンタナが草間に経済的支援をした、とのことです。

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ちなみに、コロナウイルス対策で都内の美術館は、ほぼ休館状態なのですが、草間彌生美術館は3月5日から5月31日までの会期で、3月9日から3月25日までを休館としていまして、私はたまたま3月7日に予約して、見ることができました。この美術館は、完全予約制で入れ替え制なので、混雑具合をコントロールしやすいのですが、残念ながら会期中一時休館となってしまいました。気になるのは、本当に3月25日以降に開館できるのかどうか、というあたりです。

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2020.02.24

新宿の損保ジャパン日本興亜美術館で「FACE展 2020」を見る

新宿の損保ジャパン日本興亜美術館で「FACE展 2020」(600円:2020/2/15-3/15)を見た。FACE展は2020年で8回目となる公募コンクールです。特徴は年齢と所属を問わないところ。年齢はばらばらで、入選した方でも1940年生まれ(79)から2010年生まれ(9)までと幅広い。ちなみに9歳の作家は昨年のFACE展 2019にも入選していた。

今回の「FACE展 2020」はFACE展としては初めてグランプリ作品がなかった。グランプリ作品は5人の審査員が全員一致で選出する作品で、講評を読む限り、そこそこの時間をかけて協議したものの、グランプリなし、となったそうです。とはいえ、今年も手法とかテーマはバラエティに富んでいて、かなり面白かった。以下、気になった作品についてメモっておきます。

木村不二雄の《崖屋美術館》。112×162cmの作品です。審査員特別賞です。手法はろうけつ染、ということなので、ロウを塗って染めて、ロウを薬剤でおとし、というのを繰り返してこの作品になるはずなので、作品を見て、面白い! と思い、手法を見てさらに面白い! となりました。作者は染色家のようです。作品は川辺に建っている木造の旅館らしき建物の窓とか川辺のあたりに、古今東西の美術作品から引用した人物やら動物が配置されてます。右上は広重の江戸百から深川州崎十万坪の鷹とその上に広重がのっていて、右下は若冲と白象といった感じ。
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よく見ると、水辺のあたりには、階段を降りてゆく、つげ義春のねじ式の人がいたりするけど、降りた先には右から小倉遊亀の《径》の方々がやってくる、といったところ。見ててあきない。

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高木陽の《世界は均衡を望む》。162×196cmと大きい作品。審査員特別賞です。人のように見える石らしきものを撮影して、横8縦13列に並べたもの。怪物とか妖怪とか、そういう絵かなと思って近づいて見ると石でした、というところが面白い。
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そして、さらに近づいてよく見ると、各写真に何やら英文でコメントがあって、そのコメントと写真のマッチングが面白くなって、つい見入ってしまう。そういう作品です。

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入選作品からもいくつか、気になった作品を紹介します。まず、フランシス・ベーコンか?と思えた坂本健一の《絡み合う人体》。ベーコンよりも細密です。

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倉田和夫の《BREAD・121》。鉛筆画のようです。調べるとカラー作品の方が多い。あと食べ物を描いていることが多い。
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岩本麻由の《Untitled》。油彩です。ミニマルな感じ。まあ、好みの問題かもしれない。ほかの絵も見てみたい、という感じ。
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ちなみに、この東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館は、移転して名前もSOMPO美術館に変わります。今回のFACE展 2020が損保ジャパン日本興亜美術館としては最後の展覧会となる。この美術館は損保ジャパン日本興亜本社ビルの42階にあるので、来るたびにここからの眺めを楽しむことになる。下の写真のようにいい眺めです。東京タワーとスカイツリーが見える。

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移転先は損保ジャパン日本興亜本社ビルの脇にほぼ出来上がってます(写真下)。地上6階地下1階、展示は3階から5階。2階はミュージアムショップがある。

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オープンは 2020年5月28日。とりあえず、コレクション展を実施する。


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