カテゴリー「art」の記事

2019.06.17

豊田市美術館で「世界を開くのは誰だ?」を見る

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豊田市美術館で「世界を開くのは誰だ?」(300円:2019/6/1-6/30)を見た。豊田市美術館は改修工事のため2018年7月から休館していたのですが、改修が終わり、2019年6月1日から再開しました。そして再開記念で6月1日と6月2日は無料と聞いて、6月2日の日曜に名古屋経由で豊田市に行ってきた。

豊田市美術館は2014年9月から1年かけて改修したはずなんですが、再度、改修したらしい。理由は中日新聞の記事によると「工費の高騰により一部工事しかできなかった。このため残る部分の改修のため昨夏から再び工事に入っていた。今回は約十億八千万円を投じて、耐震対策を講じ、照明器具を発光ダイオード(LED)に切り替えた。防水対策も施して三十一日に一連の改修が完了する」とのことです。大変ですね。

展示は豊田市美術館のコレクションから150点を選りすぐって、「世界を開く」をキーワードに4つのテーマに分けて紹介する、というもの。4つのテーマは「身体」「日常」「歴史・記憶・社会」「まだ見ぬ世界」です。ざっと各テーマの意味と気になった作品についてメモしておきます。ちなみに展示作品は全て撮影OKでした。

第1章の「身体」を開く、では「19世紀末から現代までの人の体=『身体』をテーマにした作品を紹介します」とのこと。身体を表現すると一言で言っても、実際の表現は多種多様です。19世紀末の作品はムンクとアンソール、ロッソで、現代は塩田千春と加藤泉、坂本夏子、村瀬恭子、森千裕といったところ。ちなみに最初に目に入るのは塩田千春の《不在との対話》と加藤泉の《無題》(写真下)。

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エゴン・シーレの《カール・グリュンヴァルトの肖像》とかルネ・マグリットの《無謀な企て》とかもある。

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それから、アルベルト・ジャコメッティの《ディエゴの胸像》もある。
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第2章は「日常」を開く。「私たちの身の回りの世界を形づくるさまざまな要素を見つめ直し、新しい見方や考え方を提示した作り手たちの表現を紹介します」とのこと。という文脈で会田誠の《あぜ道》(写真下)を見ると、冗談も新しい見方という気がしてきた。ただし、この冗談、技法的には相当に真剣なんだろうけどね。

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まあ、よりストイックな方向にいくと日高理恵子の《樹を見上げて I》のようになる。

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こういう表現もあるんだとうのは、秋吉風人の《A Certain Aspect》のMountain 1と2。絵具の塊で山を創っている。純粋に色が面白い。

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こちらも、気になった。アルマン(ARMAN)の《Click-Click Flub》。古いカメラを何かで木枠に固定した作品。

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第3章は「歴史・記憶・社会」を開く。この章では、美術だけどダークサイド的な作品を取り上げてます。「ここでは、当館がまとまりのあるコレクションを有するアルテ・ポーヴェラ(貧しい美術)と呼ばれる国際的な芸術動向や、現代日本の作家たちの作品を取り上げます」とのこと。ちなみにアルテ・ポーヴェラはイタリア語です。例えば下の写真の作品、マリオ・メルツの《廃棄される新聞、自然、蝸牛の体のうちに、空間の力として継起する螺旋がある》。

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こちらもアルテ・ポーヴェラ。ミケランジェロ・ピストレットの《ぼろぎれのヴィーナス》。

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村上隆の《R.P.(ランドセル・プロジェクト)》。ワシントン条約で取引が禁止されているタテゴトアザラシ、カイマンワニ、カバ、ダチョウなどの稀少動物の皮で作られたランドセルを展示する、という皮肉な作品。

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こちらは榎忠の《秘密基地 You're on call at the "HUSH-HUSH"》。

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山口啓介の《象の檻(青)》。たぶん沖縄の楚辺通信所のこと。これを見ていた年配の方が、これがどうして象の檻なのかと、つぶやいていたのが印象深い。

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第4章は「まだ見ぬ世界」を開く。抽象画の世界です。どういう抽象画かというと例えば、ルーチョ・フォンターナの《空間概念》。

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あるいは、この釘だらけの作品。ギュンター・ユッカーの《変動する白の場》。

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横から見ると下のようになる。

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日本の作家も負けてないですね。黒い絵です。村上友晴の《無題》。
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なんとなく、マットな黒なんですが、近づくと
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こんな感じです。

コレクションの幅の広さに圧倒されましたね。


 

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2019.06.12

千葉市美術館で「板橋区美×千葉市美 日本美術コレクション展 ―夢のCHITABASHI美術館!?」を見る

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千葉市美術館で「板橋区美×千葉市美 日本美術コレクション展 ―夢のCHITABASHI美術館!?」(200円:2019/6/1-6/23)を見た。プレス向けの資料によると「千葉市美術館と、改修工事で休館中の板橋区立美術館、2 館の古美術コレクションをご覧いただく、コラボレーション企画! もしも 2 館が合体した「CHITABASHI(ちたばし)」美術館」があったとしたら?というコンセプトのもと、1 度限りの自由な空間をお楽しみください」とのこと。板橋区立美術館は2019年6月29日にリニューアルオープンする。その直前に収蔵作品のなかで江戸期のものを中心に千葉市美術館に持ち込んだ企画です。テーマは以下の4つ。

・江戸琳派とその周辺:江戸琳派中心に明治の作品も取り上げるのだけど、宗達の作品も2つ展示。酒井抱一と鈴木其一そしてその後継者達。
・分類不能な個性派。板橋からは雪村、狩野典信、宋紫山、椿椿山。千葉からは鳥居清倍、懐月堂安度、渓斎英泉といったところ。
・幕末・明治の技巧派。岡本秋暉、渡辺崋山、柴田是真、小原古邨。意外なのは小原古邨の作品が千葉にあるところ。
・江戸の洋風画:秋田蘭画というか小野田直武、司馬江漢、亜欧堂田善、石川孟高。

とまあ、盛りだくさんです。江戸琳派の展示で、久しぶりに千葉の収蔵品で鈴木其一の《芒野図屏風》を拝見できたのが一番うれしかったのですが、 酒井抱一の《大文字屋市兵衛像》、其一と松本交山の共作《繭玉図》あたりが興味深かった。

《大文字屋市兵衛像》は板橋の収蔵品で、下の写真のような絵です。新吉原京町の高名な妓楼大文字屋の主、市兵衛の姿絵です。面白いのは、どう見ても抱一のタッチではないこと。浮世絵師西村重長による古版画の模写、というものらしい。なぜ模写かというと、 抱一は大文字屋市兵衛とは会ったことがなく、大文字屋市兵衛の息子とは親しかった、という背景があるらしい。

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もう一つ、《繭玉図》は一見地味なんです。右側にグレーの鳥居の柱があって、上の方に木の枝が括られていて、木の枝には白い繭が刺さっている。白い繭は餅を繭玉に見立てたもので、縁起物だそうです。そこを鳥居の裏側から、赤い目の白い鼠がのぞいてます。そして、鳥居の柱に「火之用心」の札がはってあるのだけど、この札が松本交山による書なんですね。松本交山は谷文晁の弟子で、其一よりは一回り年上らしいのですが、その当たりの交流が面白い。あと、この作品、個人蔵で、千葉とも板橋とも関係がないようなんですが、どうしてここに展示されているのかも気になる。

ちなみに、狩野典信による巨大な《大黒図》、宋紫山の妙にリアルで気味が悪い《鯉図》が印象的でした。

あと、作品の所蔵元も気になりました。作品リストに所蔵先が書かれているのですが、板橋区美と千葉市美以外のものがあって、「2 館の古美術コレクション」と謳っているわりにはちょっと違うなあと思うわけです。なんせ個人蔵もあるしね。これは、おそらく2つの美術館に寄託しているとか、地域的に関係が深いとか、そういうことがあるかもしれない。というわけで柏市にある摘水軒記念文化振興財団や嬉遊会コレクションは千葉美の関連団体で歸空庵は板橋美関連らしい。

余談ですが、板橋区美は建物の所にある、変な標語のようなモノが有名なんですが、それが1階の入口のあたりに飾ってありました。

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さらに、余談ですが、千葉市美術館が入っている建物は千葉市中央区の区役所でした。今回、行ってみたところ、区役所は移転したらしく、千葉市美術館が拡張されるようです。収蔵品はかなりあるはずなので、これらが常設として拝見できるようになるとしたら、なかなかいいのではないかと思います。

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2019.06.03

初台の東京オペラシティ アートギャラリーで「トム・サックス ティーセレモニー」を見る

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初台の東京オペラシティ アートギャラリーで「トム・サックス ティーセレモニー」(1400円:2019/4/20-6/23)を見た。茶道を独自の解釈で再構築した作品展です。そこには茶室があり、盆栽があり、雪隠があり、鯉が泳いでいる。そして、自作した茶碗や茶筅、掛け軸、茶釜、花入れが並んでいて、かつそれらをコンパクトに収納する道具入れが展示されている。あと、実際の茶会の様子を短編映画にした映像の上映もある(写真上)。

この作品群をどう見ればいいのか、茶道をよく知らないので、分からないけど、純粋にその真剣さとか、ユーモアとかが感じられて、面白かった。確かに茶室はある意味、こういう質素なモノだし、池には鯉が泳いでいるしね(写真下)。

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ちなみに、茶室のなかは下のようになります。0がふたつ表示されてますが、これは点茶前の30秒の瞑想をカウントするものらしい。

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こちらは茶道具。NASAマークのついた手びねりの茶碗が、ちょいっとかっこいい。

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2019.05.24

サントリー美術館で「nendo × Suntory Museum of Art | information or inspiration? 左脳と右脳でたのしむ日本の美」を見る

サントリー美術館で「nendo × Suntory Museum of Art | information or inspiration? 左脳と右脳でたのしむ日本の美」(1300円:2019/4/27-6/2)を見た。サントリー美術館とデザインオフィスのnendoが共同で企画した美術展です。「人は美しいものに出会ったとき、2種類の感動のしかたをすると仮定。作品の背景や製作過程、作者の意図や想いを知ることで生まれる感動、そしてもうひとつは、ただただ理由もなく、心が揺さぶられる感動です」として、作者の意図や想いを知ることで生まれる感動を「information」、理由もなく心が揺さぶられる感動を「inspiration」で象徴しているようです。そして、ストレートに説明して見せる「information」とちょっと斬新な見せ方で驚かす「inspiration」で1つの作品を展示するため、入口は「information」と「inspiration」に分かれます。で、下の写真が「information」の入口。「information」 側は白く、「inspiration」側は黒い。

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「information」側は通路に沿って、説明と作品が向かい合わせに並ぶ。説明がしっかりしていて面白い。下の写真は《切子 蓋付三段重》 とその説明の一部。この作品は名前の通りガラス製の蓋のある三段重なんですが、ガラスがカットされてして美しい。この作品の解説では、作品そのものの解説と、文様の解説と文様を刻み込む手法を掲載している。

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カットの方法については図も付けて説明してます。

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まあ、こういう感じで22の作品について、解説が進みます。サントリー美術館ですので、3階から入って、エレベーターで4階に上がり、4階会場を見た後、階段で3階に降りて、3階会場に入るのですが、今回は階段横の吹き抜けで、傘を持って歩くインスタレーションが実施されておりました。作品はnendoの《uncovered skies》。下の写真のように、長さ15m、幅2.185mの白いステージの上を、傘を開いて歩くと、傘の影の部分に映像が浮かび上がる、というものです。

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傘には偏光フィルムが貼られていて、そこを通した傘の影には、映像が浮かび上がるという仕組みだそうです。

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この後、3階の「information」側を見て、今度は「inspiration」を見るわけですが、再度、4階に向かって「inspiration」を見ました。こちらは黒い。「inspiration」側には作品の説明はなく、床の上に作品番号がプリントされているだけというシンプルなものです。 

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作品の見せ方は、かなり凝っていて、例えば《藍色ちろり》の展示は、「information」側では下のようにストレートに見せてます。 

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「inspiration」側では、下のようになります。青いところで《藍色ちろり》であることが分かります。

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この作品の例はかなり、凝ったものですが、ほかにも色々と工夫してます。まあ、それは見てのお楽しみということで…。

カタログは「information」と「inspiration」の2つ本を合本したような形になってます。残念なのは「information」側の解説が全部入っていないところです。例えば《切子 蓋付三段重》では作品の写真と解説、解説の英語訳だけで、カットの方法を解説したものは掲載されていませんでした。ちょっと残念です。

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2019.05.20

横浜美術館で「Meet the Collection -アートと人と、美術館」を見る

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横浜美術館で「Meet the Collection -アートと人と、美術館」(1100円:2019/4/13-6/23)を見た。横浜美術館は今年、2019年に開館30周年で、それを記念する企画展です。展示される作品は「1万2千点を超えるバラエティ豊かな横浜美術館のコレクションの中から、「LIFE:生命のいとなみ」「WORLD:世界のかたち」の2部構成のもと、絵画、彫刻、版画、写真、映像、工芸など400点を超える作品」とのこと。横浜美術館は正面に対して右側を企画展、左側を常設展として使い分けていますが、今回は両方を使って展示してました。ちなみに「LIFE:生命のいとなみ」が常設展側、「WORLD:世界のかたち」 が企画展側に展示してあります。併せてコレクションを展示するだけでなく、束芋、淺井裕介、今津景、菅木志雄の4人のアーティストをゲストとして招聘して、その作品を展示しています。4人の作品と、そこに並ぶコレクションは関連していて、その辺も見所かと思います。

束芋の作品はアニメーションを使った映像インスタレーションで《あいたいせいじょせい》というタイトル。 スクリーンからリアルな椅子とテーブルが半分はみ出すように置かれている。そこにアニメーションが投影されるのですが、解説によると「人形浄瑠璃『曽根崎心中』(近松門左衛門著)の主人公お初、小説『惡人』(吉田修一著)に脇役として登場する金子美保の2人を比べてみる、という試みから生まれた作品です」としてます。束芋は小説『惡人』の挿絵を描いていて、その当たりからのつながりでしょう。ちなみに「《あいたいせいじょせい》では金子美保の部屋にお初をソファ、お初と恋仲であった徳兵衛をテーブルとして配置しました。体調を崩している金子美保は、姿は見えないけれどそこに居ます」という設定なんですが、見てみないとよく分からないですね。ちなみにこの作品は撮影不可です。

束芋の作品は「LIFE:生命のいとなみ」 の最初のパートで「こころをうつす」にあります。普段は日本画を展示する常設展側の奥の会場、展示室1です。ここはガラスケースがあって、屏風絵とか掛け軸が展示されてます。今回は束芋の作品に併せて、遊女とか舞妓が描かれている作品や浄瑠璃に関わる作品が展示されています。

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ちなみに、そのなかで気に入ったのは山村耕花(やまむらこうか:明治18年〈1885年〉- 昭和17年〈1942年〉)の作品で《ウンスン哥留多》(写真下)。

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淺井裕介の作品は、普段は常設展示している展示室2という円柱のような形の部屋にありました。《いのちの木》というタイトルで、今回の展示のために構成された作品です。円柱の壁に臙脂色のバックに金色で生命の木的なものを描いているのですが、そこに横浜美術館のコレクションを展示してます。展示されているのは植物や動物にかかわるものと子供を描いたもの。

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例えば、下の写真では真ん中がジョアン・ミロの《花と蝶》、右側は植物や動物を精密に描いた素描で、左側は上が浜田知明のエッチングで《幼きキリスト》、下が武井武雄の版画《生命の構図「一木集VI」より》となってます。

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今津景(いまずけい)の作品は、横浜美術館のコレクションの中核となる第二次世界戦前のシュルレアリスムと一緒に展示されている(写真下)。「WORLD:世界のかたち」 のパートで「イメージをつなぐ」のなかにあります。黒と茶色の縞になっているイサム・ノグチの《下方に引く力》やサルバドール・ダリの《バラの頭の女性》などの立体作品が白い台の上に並んでいます。その奥にあるのが今津景の作品です。

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作品のタイトルは《Repatriation》(写真下)。祖国に返す、という意味だそうです。「略奪、密輸などによって本来所属していた土地を離れ、国家間の返還問題にさらされた文化財が主なモチーフとなっている」とのこと。そういった返還問題になっている美術品の画像をネットで集め、画像処理したものをカンバスに描いているらしい。 

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4人目の菅木志雄の作品は展示会場にある《放囲空》《環空立》と美術館正面の屋外にある《散境端因》です。《放囲空》の素材は石材で《環空立》の素材は木材。下が《放囲空》。

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こちらが《環空立》 。

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で、こちらが屋外展示の《散境端因》。

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まあ全体としては、お腹いっぱいになる感じ。物量に圧倒されるけど、作品の組み合わせの妙みたいのがあって、かなり楽しめます。

 

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2019.05.11

リニューアルした東京都現代美術館について

リニューアルした東京都現代美術館ですが、1995年に開館して、2016年にいったん休館し3年かけてリニューアルして2019年3月29日に再開したところです。ざっとまとめておきます。

まずリニューアルのポイントですが
・経年変化への対応、機能の改善
→空調などの更新、天井の耐震化、照明のLED化
・利用者サービスの向上
→エレベーターの増設、多目的トイレの拡充、館内外のサインを一新、図書館のリニューアル
といったあたりのようです。

確かにサインはすっきりしました。というか前のものはもう覚えてませんが……。まあ下の写真ような感じで、あまりいい例ではありませんが、木材中心のものに変わりました。


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下は屋外の例。自転車置き場です。どう変わったのか、よく分かりません。

しかし、問題は自転車置き場です。パッと見て分かるのは狭いこと。リニューアル前とほぼ同じ場所で、ほぼ公園の通路で妙に狭いし、雨が降ったら雨ざらしだしと、自転車のことは何も考えていません。当然ですが、自転車以外のバイクも駐車してます。ちょっと眺めてましたが、自転車を止めて、美術館ではなく、公園の方に行く方がほとんどでした。まあ、この場所ですと、そういう使われ方になりますね。というわけで、時間帯によっては美術館に自転車で来ると、駐輪場が満杯で止める場所がない、ということになります。

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リニューアルに合わせて、会員制も変わりました。美術館の会員制というのは年間の会費を支払って、諸々のサービスが受けられるというものです。一種のプロモーションというか、お得様向けのサービスで、だいたいの美術館は用意してます。大抵は住所氏名を登録して、会報などを受け取れるようにし、会費を払っていれば、企画展や常設展は無料で入場できるというものが一般的です。東京都現代美術館の会員制度は、常設展が無料で企画展は50%割引の個人/家族/シルバー会員と年間1万円で常設・企画展が入場料無料になる「賛助会員」がありました。リニューアル後は「年間パスポート」という制度に統一されたようです。

お値段は4000円で、常設展は何回でも無料、企画展は4回まで無料で、5回目以降は50%引きになるとのこと。あとミュージアムショップとかレストランで5%引き、東京都写真美術館とか庭園美術館などで割引がある、としてます。でもこのパスポート、現在では売り切れとなりました。

この制度、住所の登録をしないので、お知らせなどの会報は送られてきません。まあ、運営する側からみると、個人情報を持つ必要がないので、楽なんでしょうが、情報収集という面ではあまり役に立ちません。

設備面では耐震化など、必要な部分はあったのでしょうが、利用者としては、あまりメリットが感じられないリニューアル、というのが印象です。

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2019.05.10

東京都現代美術館で「MOTコレクション第1期 ただいま/はじめまして」を見る

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東京都現代美術館で「MOTコレクション第1期 ただいま/はじめまして」(500円:2019/3/29-6/16)を見た。常設展です。東京都現代美術館は3年ほど休館していたが、その間もコレクションを拡張し続けていたらしい。Webから引用すると「当館では、この3年弱に及ぶ休館中に、約400点の作品が新たに収蔵されました。そこで、リニューアル・オープンを記念した今年度のコレクション展では、新収蔵作品を中心に紹介します。」とのこと。そして「その第一弾では、主に2010年代に制作された作品群に焦点を当てながら、修復後の作品のお披露目なども加え、これまで「MOTコレクション」をご覧いただいた方も、今回初めてご覧になる方も、リニューアルした展示室で作品それぞれの魅力に触れていただければ幸いです。」と続けてます。というわけで、続きもあるそうです。

最初に登場するのは、アルナルド・ポモドーロの《太陽のジャイロスコープ》(写真下)。常設展示のフロアの1階吹き抜けに鎮座してます。元々は美術館の屋外、それも正面入口の脇に置いてあった作品です。直径4m、総重量5トンと巨大で重い。

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屋外展示の頃は、あまり近づくことができなかったので、あまり気がつかなかったのですが、なかなか精巧な構造物(写真下)です。屋内に展示されことで、よく見ることができるのは、ありがたいことです。解説によると「中世の天球儀から着想を得たという本作品は、太陽と地球、地球と月、朝と夕のような対比対象が、時の移ろいとともに位置関係を変化させていく様子を表現したと作家が語るとおり、かつてはブロンズ製の円盤が、それぞれ24時間かけてゆっくり回転する機構を備えていました。」とのこと。

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今回の展示で、気になったのは棚田康司、サレ・フセイン、高田安規子・政子、ソピアップ・ピッチ、文谷有佳里、宮島達夫といったところ。とりあえず、写真を撮ったので、説明しておきます。

まず彫刻家の棚田康司。下の写真は《雨の像》。「一木造り」という1つの材木から作品を彫り出す手法で作品を制作している。棚田の作品は少年のにょろんとした感じの作品が印象深いのですが、最近は大人の女性像も作成している。解説によるとこの作品は「初めて本格的に制作された成人女性像」 とのこと。2016年の作品です。

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下の写真はサウジアラビア出身のサレ・フセインの作品《アラブ党》。制作は2013年。インドネシアで活動している、とのこと。アラブ系インドネシア人というのはインドネシアでは少数派らしく、歴史的は差別された時期もあったらしい。その辺の歴史をリサーチして描かれた作品だそうだ。

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高田安規子・政子は卵性双生児のユニット。日常的にあるモノに手をかけて美術作品に仕上げる、というやり方で作品を制作している。下の写真のケースにはいったモノは《組札 ハート》というタイトルの作品の一部で、トランプに刺繍して、ペルシャ絨毯のように仕上げている。

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もう一つ、《修復》というシリーズでは「建物の塀や床などに放置されている小さな破損箇所に着目し、そこに自らの手で修復を加える作品」です。東京都現代美術館の石畳を、修復したのが下の写真です。

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下の写真はカンボジアのソピアップ・ピッチの作品。なんとなく、韓国のミニマルな抽象画に近い印象を持った。タイトルは《樹木園》。竹と藤をワイヤーで固定したものだそうです。

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文谷有佳里(ブンヤ・ユカリ)の作品はケント紙にインクで描かれている。とてもリズミカルでスピード感がある作品です。下の写真の作品のタイトルは《なにもない風景を眺める 2016.12.10》。

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最後は宮島達夫の作品。赤色LEDのカウンターを使った作品です。タイトルは《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》。1728個のLEDカウンターが1から9までを表示するのだけど、それぞれのカウンターはスピードが違う。この作品は20年近く常設として展示されてきたのですが、カウンターの明るさに個体差がでるようになったので、点検と修復したとのこと。

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2019.05.01

リニューアルした東京都現代美術館で「百年の編み手たち」を見る

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2019年3月に3年ぶりにリニューアル・オープンした東京都現代美術館で「百年の編み手たち -流動する日本の近現代美術-」(1300円:2019/3/29-6/16)と「MOTコレクション ただいま / はじめまして」(500円:2019/3/29-6/16)を見た。「百年の編み手たち」は1910年代から現在までの、ほぼ100年間の日本美術を概観する展示です。カタログでは「『編集』をキーワードに、日本の近現代美術のひとつの側面を再考する」としています。その心は、おそらく、美術の先端では日本画と洋画の古典技法、テーマに最新の技法やそのときの最新思想をからめて作品を制作していて、その制作過程を「編集」として捉えているように思えます。

というわけで、この展覧会の始まりは1910年代、それも「本展では、第一次世界大戦の開戦により欧州からの印刷物を通した情報が減少した1914年を、新しいものの学習の段階から、編集へと展開したはじまりの年と位置づけ、現代までの美術家たちの活動を作品と資料によって再考していきます」としてます。そういう文脈から、この展覧会の1章「はじまりとしての1914年」では岸田劉生の自画像やエッチングなどが展示されるのですが、カタログの解説を読まないと、意味がよくわからなかった。

解説によると岸田劉生は1912年のポスト印象主義的な自画像を描き、1914年には北方ルネサンス的な、つまりデューラー的な写実表現を使った自画像、そして東洋的な表現を取り入れた1920年の自画像を展示している。これらの作品や劉生の芸術論などから「新旧の多様な表現を選択し制作に取り入れた」として、劉生を自覚的に編集した最初の作家として紹介している。岸田劉生の作品をそういった方法で見たことはないので、面白いのだけど、カタログを読まないと、あるいは説明のパネルを長々と読まないと分からない。まあ、劉生がその後、麗子像をさながら禅画の寒山拾得のように描いたりするあたりつながっていくわけです。

というわけで、よくわからない部分も数多くありましたが、後からカタログを読んで、なるほどね、となる展示です。まあ、これはこれでいいかと思います。すべての作品について、こういった解説を分かりやすくやっていったらきりがない。

ちなみに、今回の展示で面白かったのは中原實の作品でした。中原實は1893年(明治26年)生まれ、歯科医でかつ画家という方です。1990年に亡くなってますが、亡くなったときは日本歯科大学名誉学長、日本歯科医師会名誉会長で二科会名誉理事という肩書を持っていたそうです。異色の経歴の方で、米国に留学して、1918年にフランスに渡りフランス陸軍歯科医となって、第一次世界大戦に関わっている。大戦終了後、パリで絵画を学んでいる、とのこと。そこでダダや超現実主義に触れてきたらしい。 撮影可の作品がいくつかあったので、下に貼っておきます。下は1924年の作品で《ヴィナスの誕生》、次も1924年の作で《海水浴》、1947 年の作品で《杉の子》 。

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3つの作品が、同じ作者の作品というところが、面白い。

ちなみに今回は3階の展示スペースの一部と地下の吹き抜けが撮影可となってました。まあ、わりとどうでもいい感じですが、地下の吹き抜けの写真も貼っておきます。


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2019.04.29

KAAT神奈川芸術劇場で「小金沢健人展 『Naked Theatre –裸の劇場– 』」を見る

KAAT神奈川芸術劇場で「小金沢健人展 『Naked Theatre –裸の劇場– 』」(700円:2019/4/14-5/6)を見た。KAAT神奈川芸術劇場は美術館ではないが、劇場ならではの照明や音響の設備を使ってインスタレーションを実施することがある。2017年に見た「詩情の森── 語りかたられる空間」では金子富之や三瀬夏之介などの作品を使って、かなり異質な空間が創られていた(そのときの紹介記事はこちら)。今回は小金沢健人によるインスタレーションです。

KAAT神奈川芸術劇場は神奈川県の公益財団法人である神奈川芸術文化財団が運営する劇場。横浜市中区にある。具体的には、みなとみらい線の元町・中華街駅と日本大通り駅の間に建ってます。今回の
会場は3階にある「中スタジオ」。本来は間仕切りを入れることで、中スタジオと小スタジオに分けて使えるらしいが、今回は間仕切りなしで使っている。Webにある説明では「それぞれ稽古場としての利用ができるほか、中小スタジオ間の可動間仕切りを取り払うことにより、小規模な公演の実施も可能です」としている。広さは401平方メートルで高さは5.3mとそこそこ広い空間です。

今回のチラシで見たのは明らかに映像の一部で、画面半分を境に鏡像にしたもののようでした。じゃあビデオを使ったインスタレーションかなあ、と予想して行ったのですが、まったく違うものでした。まあ、後から分かったのですがチラシに使っていたのは《半分シャーマン》というタイトルのビデオで、今回の会場に付属する化粧室で下のような感じで上映してました。

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会場に入ると、真っ暗でした。真っ暗でなんだか分からん、と思い始めたところで、係員の方が近づいてきて、暗くなったり、明るくなったりしますので、目が慣れるまで気を付けてください、といったことを説明してくれました。待つことしばし、照明が付き始めて、何となくわかるようになりました。

会場には看板が2つと大きめの衝立が2つあり、観客が座れそうな手すり付きの階段が2つ、あとスツールがいくつかありました。ここに上から、あるいは横から光があたり、なんとなく聞きにくいモノローグのような音声が流れております。言葉では説明しにくいので、撮影した写真を並べておきます。

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ここまでは、モノクロームの世界ですが、会場の中央の天井にネオン管が配置されていて、これが色鮮やかに輝きます。

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飽きずに、だいたい30分は眺めてました。

どうやら、シリーズ化されているらしく、来年も楽しみな感じです。

 

 

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2019.04.21

千葉市美術館で「メアリー・エインズワース浮世絵コレクション」を見る

千葉市美術館で「オーバリン大学アレン・メモリアル美術館所蔵 メアリ・エインズワース浮世絵コレクション−初期浮世絵から北斎・広重まで」(1200円:2019/4/13-5/26)を見た。タイトルにあるオーバリン大学アレン・メモリアル美術館は米国のオハイオ州にある。米国の東の北です。そしてメアリ・エインズワースという方はアメリカ人女性で1867年(慶応3年)生まれで1950年(昭和25年)に亡くなっている。エインズワースは実業家の娘で、お金持ち。そして大学を卒業しているので、教養もある方のようです。明治39年(1906年)に来日して、初めて浮世絵を購入。そこから1500点に達するコレクションを作り上げた、とのこと。

今回の展示は、1500点のコレクションから200点を選んで紹介する、というものです。興味深いのが歴史的な順を追っていけるように作品が収集されていること。浮世絵の初期の作品、17世紀後半の菱川師宣や奥村政信から始まって、18世紀中頃の鈴木春信、18世紀後半の喜多川歌麿、東洲斎写楽、そして19世紀の北斎、広重、国芳と重要な作家の作品がコレクションされている。

浮世絵について特に詳しいワケではないのですが、今回の展示で初めて知ったことが2つありました。

まず、「柱絵」という判型。今回の出展作品には妙に細長い浮世絵がいくつかあって、その説明には「柱絵」あるいは「幅広柱絵」とある。初期の浮世絵の場合、幅が17cmと25-26cmの2種類があって、25cmぐらいのを「幅広柱絵」という。長さの違いは、元になる紙を二等分するか、三等分するか、だそうです。これが18世紀の鈴木春信の作品あたりなら幅が約
11cmで、これは紙を四等分しているためだそうです。ちなみに縦の長さは70cm前後です。こういう縦長の作品が、カタログで確認すると11点ありまして、過去に見たことはあるのかもしれませんが、これだけ大量に見るのは初めてでした。ちなみに、エインズワースが初めて購入した浮世絵は幅広柱絵で、石川豊重の《提灯と傘を持つ佐野川市松》という作品でした。

もう一つは「紅嫌い」。説明によると「着彩に紅色を用いず、墨、紫、緑、黄などごく絞った色数を用いた作品」のことだそうで、「独特の清澄な趣が好まれ天明~寛政年間(1781-1801)に流行した」とのことです。鳥文斎栄之の《風流やつし源氏 朝顔》1点だけなんですが、とても目立っていた。

併催で「千葉市美術館所蔵作品展 受託記念  ピーター・ドラッカー・コレクション水墨画名品展」というのもやってました。前に見たことがあるなあと思ったら、2015年春に開催していたそうです。ピーター・ドラッカーといえば「マネジメントの父」と呼ばれている経営学者ですが、水墨画のコレクターでもあって、そのコレクションを日本の企業が購入し、千葉市美術館に寄託したとのことで、それを記念して、お披露目したということのようです。浮世絵と水墨画を名品を拝見できて、1200円は安いな、という感じです。

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