カテゴリー「art」の記事

2017.08.15

植田正治写真美術館で植田正治作品と巨大なカメラ・オブスキュラを見る

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米子駅について、タクシーで植田正治写真美術館(上の写真は裏側:高解像度版はこちら)へ。写真家、植田正治さんの作品を収めた美術館。米子駅からタクシーで20分程度、時間がかからないのは道が空いているからで、往復で7000円程度はかかった。バスもあるのですが、ちょうど行った日は運休期間で、まったく使えなかった。おそらくは梅雨の時期で、本来ならあまり訪問者もいない時期なんでしょう。

ただし、走っていたとしてもバスの本数は少ない。これだけの世界的な観光資源なのに、もったいない。ともかくレンタカーを使って自力で行くというのでなければ、バスの運行状況について確実に把握しておいたほうがいいでしょう。

場所は大山のふもと。植田さんの写真を堪能するとともに、大山の写真も撮影できる。そのために建物を配置した、という感じ。設計は高松 伸。建物から望む大山は美しく、遮るものはない。ちょうど訪問した日は晴れていたけど、雨の日や雪の日も、それぞれの良さを室内から拝見できそうです。

建物の1階は植田さんの伝記風に植田作品を見せる展示、2階と3階は企画展示となってます。そして2階には「映像展示室」なるものがあって、そこはカメラ・オブスキュラになっている。美術館の前に広がる大山を逆さに投写します。レンズは直径600mm。ちなみにこの記事の一番上の写真で建物の左端のブロック中央に黒い丸がありますが、それがレンズです。

2階からは大山を撮影することができます。大山撮影用の場所は3つあって、なんとなく横位置、縦位置、企画モノという感じ。それぞれ、水が張ってあって、大山が逆さに映るようになっている。

右端は横位置で撮影できるようになっていて、椅子が5つ並んでいる(写真下:高解像度版はこちら)。

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そこから撮影したのが下の写真(高解像度版はこちら)。

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中央の撮影場所には椅子が2つある(写真下:高解像度版はこちら)。

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そこから撮ると下のようになる(高解像度版はこちら)。

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左端が企画モノ。ガラスに黒い帽子のマークが貼ってある(写真下:高解像度版はこちら)。砂丘シリーズに何度か登場したアイコンですね。

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ちなみに美術館の外にでて、大山を撮影すると以下のようになります(高解像度版はこちら)。

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入場料は900円。まあ納得のお値段です。

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2017.08.07

境港で水木しげるさんの作品を堪能する

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松江からバスで境港へ。ざっと40分は乗っていた。松江市内を抜け、中海を渡って大根島を抜け、再度中海を渡って、境港へ。JR境港駅の前に到着した。乗車賃は1000円でした。なかなか眺めがいいので、割と飽きませんが、座った場所が悪くて写真を撮るのが難しかったのは残念。

そして境港です。水木しげる一色ですね。7月に開催される「世界妖怪会議」の看板がなかなかいい感じ(写真上:高解像度版はこちら)。この看板の絵を見ていると、改めて水木しげるの絵の緻密さに感心してしまった。

境港駅から「水木しげるロード」と呼ばれる道が、線路に対して垂直に走っている。中海と日本海をつなげる境水道と平行になる。どこまでが水木しげるロードなのか、よくわからないけど、水木しげる記念館のあるブロックまでなんでしょう。

歩道の車道側に、水木しげるの妖怪キャラをブロンズ像にしたものが飾ってあって、それが途切れたら、水木しげるロードも終わりです。ちなみに下の写真は「ねこ娘」(高解像度版はこちら)。

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水木しげるロードには妖怪達のブロンズ像のほか、土産物屋や食堂、お菓子や、酒屋などが並んでます。なかなかパンチの効いたものがあります。例えば酒屋というか千代むすび酒造の直売店は、鬼太郎関連のパッケージのお酒を出してます(写真下:高解像度版はこちら)。

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お菓子系土産物屋の「妖菓堂」もなかなか(写真下:高解像度版はこちら)。

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ここまでやるか、というのは銀行ATM(写真下:高解像度版はこちら)。「ATM周辺で妖怪に暗証番号を聞かれても決して教えないで下さい」とあります。

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そして、水木しげる記念館で一休み。外観は下の写真のようになります(高解像度版はこちら)。

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なかは作品と水木しげるの伝記、といったところです(写真下:高解像度版はこちら)。まあ、水木しげるファンなら飽きないですね。

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まあ、ここから駅に戻って、鬼太郎電車に乗って米子へ向かいます(写真下:高解像度版はこちら)。

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2017.07.30

島根県立美術館で夕陽を堪能する

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松江城の周辺を見た後で、街中を散歩しながら、島根県立美術館へ移動。島根県立美術館は宍道湖の湖畔にあり、美しい夕陽が堪能できる(写真上:高解像度版はこちら)。

夕陽を売り物にしているだけのことはあって、3月から9月は入場は日没までで、閉館は日没後30分となっている。夏至のころなら19時27分が日没時間とのこと。建物は2階建てで1階が企画展示、2階がコレクションの常設展示となっている。設計は菊竹清訓。

訪れたときは「江戸の遊び絵づくし」(2017/5/19-7/3:1000円)という企画展を開催しておりました。

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たくさんの人とか猫を組み合わせて、大きな人とか猫を表現した「寄せ絵」、頭は5つだけど体は10ある「五頭十体図」、上下をひっくり返すと別の絵に見える「上下図」など、それぞれは見たことがあるような気がするのですが。これだけまとめて拝見すると、なかなか圧倒的です。そして「寄せ絵」の作者はアルチンボルドの作品を見たんだろうか?とか気になることはいくつかありますが…。ちなみに、最も気にいったのは「五頭十体図」。下の写真はカタログの裏表紙を撮ったものです。

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作者は歌川貞景。生没不詳ですが、国貞の門人で、この作品は天保年間(1830年 - 1844年)のものらしい。カタログによると、この手の作品では初期のもの、とのこと。この企画展、巡回しないのがもったいない、という気がしました。

美術館の2階は常設で、コレクションを展示してます。2階に上がるとどーんとオーギュスト・ロダンの《ヴィクトル・ユゴーのモニュメント》というブロンズ像が展示されていました(写真下:高解像度版はこちら)。このブロンズ像を囲むように部屋が5つあって、それぞれテーマ別に展示してます。1室は日本画、洋画など平面肉筆系、2室が版画、といった感じ。写真の展示もあって、杉本博司さんの海景シリーズなどが展示されてました。海景シリーズに隠岐で撮影したものがあったのが印象的。

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美術館の中も面白いが、その前庭とでもいうのか、美術館前の湖畔にパブリックアート的に立体系の大きな作品が並んでいて、こちらも見逃せない。兎が跳びはねて、最後に止まって宍道湖を眺めている様子を12体のブロンズで表した籔内佐斗司(やぶうち さとし)の《宍道湖うさぎ》とか、巨大な2体のオブジェが何やら会話をしているような渡辺豊重の《会話》とか、なかなか大小取り混ぜて、素材もいろいろで飽きないモノです。

まず、籔内佐斗司の《宍道湖うさぎ》。うさぎが駆けていって(写真下:高解像度版はこちら)、宍道湖半で止まって眺めている(写真下:高解像度版はこちら)、というもの。ブロンズです。解説によると「ポーズは3種類。後ろ足で蹴っているポーズと前足で着地しているポーズの2種類のかたちを交互に配置させて動きをだしています」とのこと。

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渡辺豊重の《会話》(写真下:高解像度版はこちら)はFRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)と鉄骨で造形して、ウレタン塗装したもの。高さ約2m80cmと大きいです。2体の立体物が会話しているような感じらしいのだけど…。作者の渡辺豊重さんは抽象画の人かと思ったのですが、こういった立体も手がけるのね、と芸域の広さに感心してしまった。ちなみに2015年に栃木県立美術館で渡辺さんの個展を拝見しておりました。そのときの記事はこちら

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2017.07.09

島根県の足立美術館で日本庭園を堪能する

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2017年6月の半ば、本来なら梅雨真っ盛りで、雨の中の旅行になるかと思ったら、カンカン照りの空梅雨。好天に恵まれるなか、2泊3日で島根県松江市に行ってみた。松江、米子、境港、安来といったところを回って、個性派美術館を堪能した。メインとなるのは島根県安来市にある足立美術館、鳥取県伯耆町の植田正治写真美術館、そして松江の島根県立美術館、境港の水木しげる記念館水木しげるロード、国宝となった松江城と見所満載です。

初日は米子空港に到着して、バスでJR米子駅へ。駅前の居酒屋でランチをいただき、JRで安来へ。このときは特急八雲に乗って移動。最初の目的地は庭園と日本画のコレクションで有名な足立美術館。美術館へは安来駅からシャトルバスが走っていて、20分で到着する。巨大な駐車場があるのは、団体の観光客がくるためで、できれば、さほど美術にも庭園にも興味がなさそうな団体にまみれるのは避けたいところ。入場料は2300円。

残念なのは庭のなかにはいれないこと。基本的に建物のなかから拝見する仕組みです。建物の窓はしっかり掃除されているので、問題はないのですが、庭のなかを歩いてみたいですね。庭は苔庭、枯山水、池庭など日本庭園のパターンを諸々見せてくれます。一番上の写真は「白砂青松庭」というところで、横山大観の作品「白砂青松」をイメージしたもの、とのこと(高解像度版はこちら)。

改めて考えると、庭園をどのように見せるかを、緻密に計算して美術館全体が設計されている、ということに気がつきます。苔庭、枯山水、白砂青松、池庭がどのようにつながっているのか、うまく想像できないのですが、建物のなかを順路に従っていくと、それぞれが独立した庭として、目に飛び込んでくる。


例えば、下の苔庭(高解像度版はこちら)とその下にある枯山水(高解像度版はこちら)は一番上の「白砂青松庭」とつながっているのだけど、微妙に変化している。

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さすがに下の写真の池庭は建物を挟んでいるので、そかの庭との連続性はなけkど、統一感はある(高解像度版はこちら)。

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このほか、人工の滝「亀鶴の滝」が遠くに見えたり(写真下:高解像度版はこちら

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床の間の壁をくりぬいて、その先にある庭を掛け軸のように見せるシカケとか(写真下:高解像度版はこちら

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なかなか凝ってます。ただし、掛け軸には入場者の頭が並んでいて、奇妙なものでした。庭は天気の悪いときにきてみたいですね。雪景色も雨模様も、それはそれで見応えがありそうです。

美術品のコレクションは日本画中心ですが陶器も充実。横山大観の作品が多いけど、時代的には明治以降の作品がほとんどです。大観以外には橋本関雪、竹内栖鳳、菱田春草といったあたりの作品がコレクションされてます。陶器では河井寛次郎、北大路魯山人。新館では現代作家の作品もありました。

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2017.07.05

国立新美術館で「ジャコメッティ展」を見る

乃木坂の国立新美術館で「ジャコメッティ展」(1600円:2017/6/14-9/4)を見た。ジャコメッティはスイス生まれで、パリで主に活動した彫刻家で画家。1901年生まれで、1966年に亡くなっている。というわけで、没後51年というなんとも中途半端なところだけど、これだけまとめて、ジャコメッティ作品を拝見できるとは、ありがたいことです。

ジャコメッティというと、人も犬も猫も細長く、「存在を限界まで削ぎ落としつつ存在を限界まで主張する」(図録の解説「空間の理論?」オリヴィエ・キャブラン著より引用)作品で、唯一無二な感じの彫刻と、ひたすら線を重ねて描く人物の顔、特に目が印象に残っている。この作風の後継者はいないようです。あまりにも独特なで、模倣者さえ生まれなかったようだ。まあ、現代美術ってそういうものだろうし、その意味で、ジャコメッティは確実に現代美術家なんじゃないかと思うわけです。

一方で、最初からこの作風ではないわけで、どのような経緯でこの作風に至ったのかが分かるようになってます。特に初期の作品には、キュビスム作品やアフリカ的な形態の作品もあって、そこにはジャコメッティ的な表現を感じられない。そこから、抽象的なオブジェを離れて、小さな人体作品を作成するようになり、その大きさが徐々に大きくなっていくところが面白かった。

まあ、大きさという意味では、「チェース・マンハッタン銀行のプロジェクト」として展示された3点はかなり大きい。1960年に作られた作品で、ほぼ晩年の作品といっていいだろう。ニューヨークにあるチェース・マンハッタン銀行の広場のために依頼された作品だが、なかなか納得のいく作品にならなかったらしく、結局、断念している。断念はしたが、断念する直前まで、作品を作っていて、ブロンズで鋳造したものが残っている、ということらしい。ちなみに、このゾーンでは撮影可、とのことでした。下が3点をまとめて撮影したところ。

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「大きな頭部」。サイズは95×30×30cm。

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コーナーの真ん中奥にあるのが「大きな女性立像II」.。サイズは276×31×58cm。
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そして「歩く男I」。サイズは183×26×95.5cm。
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カタログもよかったので、購入しました。2800円です。「犬」がカバーになってます。

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2017.07.02

国立西洋美術館で「アルチンボルト展」を見る

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国立西洋美術館で「アルチンボルト展」(1600円:2017/6/20-9/24)を見た。きっと混むようになるだろうと思って、初日に行ってみたのですが、それが仇になりました。なんとメインの作品のうちで「《大気》と《火》は6月23日より公開しました」と国立西洋のWebサイトに掲載されているように、初日にいくと《大気》と《火》は写真で見ることになりました。6月23日以降は問題ないようですが、こういうこともあるのね、という感じ。ちなみに一部ニュースでは「《大気》と《火》は6月24日から公開」とあるので、まあ、このニュースを見てから行けばよかった。

アルチンボルトと言えば寄せ絵。植物とか動物とかを組み合わせて、人物の顔を描くというモノ。春夏秋冬の4点で構成される「四季」と、「空気」「火」「土(大地)」「水」からなる「四大元素」を拝見できる。ちなみに遅刻した「大気」と「火」は個人所有で、ほかの6点は美術館などの組織が所有している。遅刻した理由はその辺なんでしょうね。

「四季」は春夏秋冬、季節の植物で構成されている。一方の「四大元素」は「大気」が鳥類、「火」が火打ち石などの火に関する道具類と炎、「大地」が動物、「水」が魚貝類や両生類などで構成されている。図録によると「1596年、オーストリアのハプスブルク家の宮廷画家であったアルチンボルドは、当時の君主神聖ローマ帝国マクシミリアン2世への新年の贈り物として、『四季』と『四大元素』の連作を捧げた」とのこと。つまり「四季」と「四大元素」はまとめて見ることに意味のあるもの、ということらしい。例えば、「春」は「大気」と対になるとのこと。今回の展示の面白いところは、それぞれの絵を展示するだけでなく、各作品の写真を対になるもので並べて、展示していること。その対になる作品は顔が向い合うようになっている。そこで、各作品の顔が向いている向きがバラバラな理由が明らかになる。

これだけでも、十分に面白いのですが、その背景となるモノは何か、ということについても解説してます。当時の宮廷が博物学的な収集に力を入れていて、植物学者、天文学者、医者などの科学者が多数、宮廷に招集されていたらしい。そういった知識の集大成として、アルチンボルトの寄せ絵は成立しているらしいのだ。

まあ、肝心の作品を写真パネルでしか拝見できなかったのは、なんとも不愉快ですが、全体としては面白い展示でした。面白いと言えば、会場の直前の場所にある「アルチンボルドメーカー」もなかなかです。ディスプレイの前に立つと、その人の外観(髪型tとかメガネの有無など)に合わせて、アルチンボルド的な絵を作成して表示するというものです(写真下)。

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これがなかなか曲者で、うまく撮影できない方が多く、なかなか行列が進まない。まあ、人に依るんでしょうが、カメラに不慣れな人がはまって時間がかかってました。この辺、リテラシーが問われるところでしょう。

カタログは2800円です。クローズアップも多く、解説もしっかりしてます。購入の価値はあると思います。残念なのはマグネット。マグネットはそこそこ収集しているのでだいたいの美術展で購入するのですが、今回はあまりにデザインが悪くて購入しませんでした。

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2017.06.11

平塚市美術館で「リアル(写実)のゆくえ-高橋由一、岸田劉生、そして現代につなぐもの」を見る

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平塚市美術館(写真上:高解像度版はこちら)で「リアル(写実)のゆくえ-高橋由一、岸田劉生、そして現代につなぐもの」(2017/4/15-6/11:800円)を見た。5月27日に放送されたテレビ東京の美術番組「美の巨人たち」で、犬塚勉の「梅雨の晴れ間」という作品を紹介していて、その作品が平塚市美術館に展示されている、という。犬塚勉は緻密な風景画を描く画家。雑草が大量に生えている野原とか、その横にある林とかで、草一本一本、葉一枚一枚を描く。ある意味、その風景はありふれたものなのに、草一本一本、葉一枚一枚を描くことで、その絵は唯一無二のモノとなる、といった感じ。1988年に38歳で亡くなっているのがなんとも惜しい作家です。その作品が2点あるというので、平塚まで行ってみました。犬塚勉の作品を知ったのはNHKの日曜美術館で、実物をぜひみたいと思ってましたが、ようやく願いがかないました。

「リアル(写実)のゆくえ」という美術展は、そこそこ壮大な企画で、「鮭」のリアルな絵で知られる髙橋由一から、現代の犬塚 勉や磯江 毅といったところまで、写実表現の150年の歴史を見せてくれる。会場に入ると、まずは髙橋由一の「鮭」と磯江 毅の「鮭 ― 髙橋由一へのオマージュ ―」が並んでいる。ちょうど、図録となる「リアルのゆくえ」(生活の友社刊、3240円)のカバーと同じです。

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髙橋由一、五姓田義松、川村清雄などの明治初期に始まり、明治中期の原田直次郎、渡辺幽谷、中村不折といったあたりに受け継がれ、大正期の岸田劉生にバトンが渡る、といったところか。次の昭和、現代へと続く。意外だったのは、大正期に伊丹万作の作品が展示されていたこと。かの伊丹十三の父親で、映画監督なんですが、人物画が2点、展示されてました。どうやら、岸田劉生に絵の才能を評価されていたらしいが、絵で食べていくことを断念したらしい。

まあ、歴史の経緯としては、髙橋由一に始まった「リアル」の流れは、明治中期に黒田清輝による「外光派」によりせき止められ、主流からは外れてしまうのですが大正期には岸田劉生などに受け継がれ、どちらかというとアンダーグラウンドな形で、現代まで受け継がれている、という感じらしい。

ただし、多少は、意味不明なところはありました。例えば、写実についての定義が、作家によって微妙に違っていて、何をして「リアル」なのかが揺れていました。まあ、それはそれでいいのでしょう。目の前にあるものを精密に描くというリアルだけではないのでしょうが、では、それがどういったリアルなのか、よく分からないままです。この辺は鑑賞した人が考えなければならないところでしょう。

この美術展は平塚市美術館のあと、以下の3館を巡回するとのことです。
6/17-7/30 足利市立美術館
8/8-9/18日 碧南市藤井達吉現代美術館
9/23-11/5 姫路市立美術館


平塚市美術館はJR平塚駅から徒歩で20分程度のところにあります。駅から海に背を向け、ゆるい坂を上り続ける感じです。周りは市役所などがある地域で、いわゆる文教地域という感じ。わりと立体の美術品が屋外、屋内に置かれていて、それをスケッチしている人がそこそこいたのが、珍しかった。下は入口のところにある三沢厚彦のユニコーン。

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建物は入口のあるところと展示スペースのあるところに分かれていて、入口のある建物にはレストランとか小規模のギャラリーがある。展示スペースのある建物は、横に長く、下の写真(高解像度版はこちら)のように吹き抜けになっていて、妙に広い感じがする。実際の展示は2階になる。

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まあ、概ねいいんですが、地方の美術館らしく、ミュージアムショップは狭く、クレジットカードが使えない。カタログ買ったときにレシートください、といったら、レシートはないので手書きの領収書を作ります、といわれたのは驚いた。でも、カタログを購入したときに、消費税は加算されず、3000円で済んだのはお得な感じです。レシートと消費税なしの理由は不明なままです。


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2017.05.29

DIC川村記念美術館で「ヴォルス――路上から宇宙へ」を見る

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DIC川村記念美術館で「ヴォルス――路上から宇宙へ」(2017/4/1-7/2:1300円)を見た。ヴォルスについては何も知らずに、初夏の川村記念でも見に行くか、という感じで行ってきました。解説によると「“WOLS”はペンネームで、本名はアルフレート=オットー=ヴォルフガング・シュルツ Alfred Otto Wolfgang Schulze(1913-51)です。父は著名な法学博士、ベルリンの豊かで教育ある家庭に生まれました。ドレスデンに医師の祖父がいて、姉や弟と幼少期を過ごしています」とのこと。どうやら写真家として名をあげ、その後、版画や絵画も手がけた、美術家らしい。写真は、普通に人物写真もあったけど、映像のなかに形を発見するような、ちょっと変な写真が多かった。

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上は「無題(柄のあるウサギの頭)」というタイトルで、1938-39年の作品。

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こちらはセルフポートレイト。1940-41年の作品。このとき27-28歳。解説によると、第二次世界大戦の始まったところで、フランスにいたドイツ人は収容所にいれられたそうだ。ヴォルスもパリで写真家として活動を始め、そこそこ注目されはじめたところで、収容所に収監された。そこで、絵を描くようになった、とのこと。

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上のパウル・クレー的な色彩の水彩画は、初期の作品で「サーカス・ヴォルグ」という連作のうちの一つ。タイトルは「人物と空想の動物たち」。ふわふわと変なモノ達が浮遊している感じ。制作時期は1936-40年となっている。

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こちらは1949年の作品。タイトルは「抽象」。タイトル通りより抽象化が進んでます。ヴォルスは1949年にはアルコール依存症で入院していて、1951年には亡くなるわけで、精神的にも肉体的にも破綻に向かっているところと思われます。ヴォルスは死後、アンフォルメルの先駆者と呼ばれるようになるのですが、そういった後付けの評判は置いていおいて、このオリジナリティ溢れる作品はなかなか飽きません。つい、見入ってしまいます。

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2017.05.22

KAAT神奈川芸術劇場で「詩情の森 ── 語りかたられる空間」を見る

KAAT神奈川芸術劇場で「詩情の森── 語りかたられる空間」(2017/4/30-5/28:600円)を見た。KAAT神奈川芸術劇場は、美術館ではないけど、金子富之や三瀬夏之介の作品が拝見できる、とのことで、面白そうな予感がしたので、見に行ってみました。

カタログによると「本来美術の展示空間によっておこなわれる作品展示を、敢えて劇場空間に持ち込み、作品世界の広がりを追求する試みです」とのこと。会場は3階にある「中スタジオ」。どうやら、本来は間仕切りを入れることで、中スタジオと小スタジオに分けて使えるらしいが、今回は間仕切りなして、使っていた。Webにある説明では「それぞれ稽古場としての利用ができるほか、中小スタジオ間の可動間仕切りを取り払うことにより、小規模な公演の実施も可能です」としている。広さは401平方メートルで高さは5.3mとそこそこ広い空間です。

ちなみに、写真OKとのことでしたので、撮影しました。最近、撮影OKというのは、こういったインスタレーション的な展示では増えたけど、ここでは動画もOKとのこと。動画はNGなところがほとんどです。珍しいけど、いい傾向だと思います。

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スタジオの扉を開けて入っていくと、まず目に入るのが、三瀬夏之介の巨大な作品「ぼくの神さま」。巨大なカーテンのようにぶら下がってます。

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この裏側にいくと下のような感じ。

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さらに進むと、階段と廊下が見えてきます。

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階段の先に進んで振り返ると、こんな感じ。

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階段に登って見下ろす。目の前にある、ずらりと並んだのが角文平の「空中都市」。

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ちなみに階段を上った廊下の先にあるのが、藤堂の「オペラ座の怪人」という題の本。


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本を階段を降りて、横から見たところ。

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こちらは長沢彬の作品。左から「Mother I」「Mother II」「Mother III」。

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こちらは真ん中の「Mother II」

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階段の上から見た金子富之の「暗罔象神」。「くらみつはのかみ」と読むそうです。作品は横長で、24mmのレンズでは全部は撮影できませんでした、まあ左半分という感じ。本来は闇罔象神と書くらしい。日本書紀とか古事記に登場する神で、水神らしい。というわけで龍神なのかも。

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こちらは田中望の「潮つ路」。その下が中心の部分。

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角文平の「空中都市」をクローズアップしてみました。

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2017.05.14

東京都美術館で「ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル『バベルの塔』展」を見る

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東京都美術館で「ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル『バベルの塔』展 16世紀ネーデルラントの至宝-ボスを超えて-」(2017/4/18-7/2:1600円)を見た。日本にいて、この作品を拝見できるとは思ってもみませんでした。「ブリューゲルのみならず、彼が手本とした先駆者ヒエロニムス・ボスの油彩2点、そして彼らが生きた時代、16世紀ネーデルラントの絵画、版画、彫刻を全体で約90点の出品作でご紹介します」とのこと。

ただし、ボスの油彩2点とブリューゲルの「バベルの塔」以外は、あまりピンとくるものはなく、せいぜいボスとブリューゲルの版画でなんとか会場を成り立たせた、といった感じです。会場は、都美術館なので地下、1階、2階の3フロアで構成。最初に見る地下は16世紀ネーデルランドの宗教系彫刻から始まり、15世紀の宗教画、16世紀の宗教画とそこから徐々に始まる宗教画から逸脱した作品、といった感じで並びます。ここでは、聖母子像の裏面に描かれた、静物画とか、風景が主題となる宗教画とかが興味深い。一つ上がって1階ではボス、そしてその模倣作品、最後にブリューゲルの版画と続き、2階で「バベルの塔」となります。

バベルの塔自体は59.9×74.6cmとあまり大きくない。絵の前に人が並び始めると、かなり見にくい。一方で、細密な描写もこの絵の魅力で、できれば近づけるだけ近づいて見たいところ。まあ、そういうこともあってか、巨大な複製とか、3次元CGによる動画での解説がありました。

ちなみに、このフロアには、そのほぼ1/4の面積を使って特設ショップがありました。ここでは2500円の図録を購入しましたが、クレジットカードは使えませんでした。なんと購入金額が1万円以上じゃないと使えないとのことです。まあ、ひどいものです。ひどいけど、図録には原寸大の「バベルの塔」のポスターが付いてきます。ちょうど、寝室の壁が空いていたので、そこに貼っておきました。ちなみに、左横に貼ってあるのは、ジャコメッティ展のチラシです。

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「バベルの塔」については、美術史家の森洋子さんが芸術新潮の5月号で特集を書いているほか、同じく新潮社のとんぼの本で「ブリューゲルの世界」として、ブリューゲルの作品をすべて解説しております。参考文献としてあげておきましょう。ちなみに、芸術新潮の特集では、大友克洋さんが登場して、本展覧会に合わせて、制作した「INSIDE BABEL」について、掲載してます。「INSIDE BABEL」は塔の内部を描き、それとブリューゲルの塔を組み合わせた作品。都美術館の会場入口のところに何気なく飾ってました。2点あって、大友さんの描線を消したものが「INSIDE BABEL 1」、描線を活かしたものが「INSIDE BABEL 2」です。下の写真は2の方です。

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もう一つ、バベルの塔の立体モデルを作成するプロジェクトもあって、こちらも興味深い。『Study of BABEL』というもので、東京藝術大学・東京藝術大学COI拠点が主催している。場所は芸大の敷地内ですが、黒田清輝記念館と国立こども図書館の間あたりに入口があります。いくと下の写真も立体物が鎮座してます。ほかにも、プロジェクションマッピングしたり、自分の顔の画像を登録して、バベルの塔の内部で働く人たちの顔として表示させるとか、いろいろやってます。まあ、話のタネにはなろうかと思います。

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