カテゴリー「art」の記事

2019.04.21

千葉市美術館で「メアリー・エインズワース浮世絵コレクション」を見る

千葉市美術館で「オーバリン大学アレン・メモリアル美術館所蔵 メアリ・エインズワース浮世絵コレクション−初期浮世絵から北斎・広重まで」(1200円:2019/4/13-5/26)を見た。タイトルにあるオーバリン大学アレン・メモリアル美術館は米国のオハイオ州にある。米国の東の北です。そしてメアリ・エインズワースという方はアメリカ人女性で1867年(慶応3年)生まれで1950年(昭和25年)に亡くなっている。エインズワースは実業家の娘で、お金持ち。そして大学を卒業しているので、教養もある方のようです。明治39年(1906年)に来日して、初めて浮世絵を購入。そこから1500点に達するコレクションを作り上げた、とのこと。

今回の展示は、1500点のコレクションから200点を選んで紹介する、というものです。興味深いのが歴史的な順を追っていけるように作品が収集されていること。浮世絵の初期の作品、17世紀後半の菱川師宣や奥村政信から始まって、18世紀中頃の鈴木春信、18世紀後半の喜多川歌麿、東洲斎写楽、そして19世紀の北斎、広重、国芳と重要な作家の作品がコレクションされている。

浮世絵について特に詳しいワケではないのですが、今回の展示で初めて知ったことが2つありました。

まず、「柱絵」という判型。今回の出展作品には妙に細長い浮世絵がいくつかあって、その説明には「柱絵」あるいは「幅広柱絵」とある。初期の浮世絵の場合、幅が17cmと25-26cmの2種類があって、25cmぐらいのを「幅広柱絵」という。長さの違いは、元になる紙を二等分するか、三等分するか、だそうです。これが18世紀の鈴木春信の作品あたりなら幅が約
11cmで、これは紙を四等分しているためだそうです。ちなみに縦の長さは70cm前後です。こういう縦長の作品が、カタログで確認すると11点ありまして、過去に見たことはあるのかもしれませんが、これだけ大量に見るのは初めてでした。ちなみに、エインズワースが初めて購入した浮世絵は幅広柱絵で、石川豊重の《提灯と傘を持つ佐野川市松》という作品でした。

もう一つは「紅嫌い」。説明によると「着彩に紅色を用いず、墨、紫、緑、黄などごく絞った色数を用いた作品」のことだそうで、「独特の清澄な趣が好まれ天明~寛政年間(1781-1801)に流行した」とのことです。鳥文斎栄之の《風流やつし源氏 朝顔》1点だけなんですが、とても目立っていた。

併催で「千葉市美術館所蔵作品展 受託記念  ピーター・ドラッカー・コレクション水墨画名品展」というのもやってました。前に見たことがあるなあと思ったら、2015年春に開催していたそうです。ピーター・ドラッカーといえば「マネジメントの父」と呼ばれている経営学者ですが、水墨画のコレクターでもあって、そのコレクションを日本の企業が購入し、千葉市美術館に寄託したとのことで、それを記念して、お披露目したということのようです。浮世絵と水墨画を名品を拝見できて、1200円は安いな、という感じです。

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2019.04.18

府中市美術館で「へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」を見る

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府中市美術館で「へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」(700円:2019/3/16-5/12)を見た。府中市美術館では春に日本美術をいろんな角度から取り上げる、企画展を開催している。2018年は「リアル」で2017年は国芳、2016年は「ファンタスティック」、2015年は動物画、2014年は「19世紀」、2013年は「かわいい」といった具合です。

春の企画展の特徴は、毎回、あまり見たことのない作品や画家が登場すること。有名な画家の作品でもあまり見たことのないものが展示されます。そういった作品が個人蔵の作品だったりするわけです。おそらくは、学芸員さんが優秀で、テーマに合った作品をいろいろと集めてくるのでしょう。

今回のテーマは「へそまがり」です。ここでいう、へそまがりとは、きれいでもないけど、つい見入ってしまう、どちらかといと、不恰好なものや不完全なものなのに魅力がある作品のことだそうで、そういった作品から日本の美術史を俯瞰してみよう、という試みのようです。

というわけで、雪村から仙崖の禅画に始まり、俳画と南画で小林一茶から夏目漱石まで、そして湯村輝彦の漫画までと、へそまがりな絵画を取り上げていきます。そして合間に、江戸時代の殿様が描いた味の深い絵や、奇想の系譜の方々、若冲や蘆雪のちょっと変な絵が入ってきます。

まあ、印象深いのは三代将軍家光の作品で、下の写真にある、木兎図と兎図はなかなかの破壊力です。ミミズクは可愛いのですが、ウサギは最初に見たときはウサギには見えない。よく見ると、というか説明を読んで、木の切り株にウサギがのっているところだと気がつくワケです。それでも、やっぱりマントを着て、サングラスをかけた何かにしか見えない。

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このほか気になったのは、村山槐多の「スキと人」、祇園井特(ぎおんせいとく)の作品、禅画で風外本高あたりです。

ちなみにこの展覧会は、前期後期にわかれていて、4月16日から後期となります。前期を見ると、後期は半額で入場できるので、ぜひ後期も見に行きたいと思います。

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2019.04.10

三菱一号館美術館で「ラファエロ前派の軌跡展」を見る

三菱一号館美術館で「ラスキン生誕200年記念 ラファエロ前派の軌跡展」(1700円:2019/3/14-6/9)を見た。英国の19世紀の美術評論家ジョン・ラスキン生誕200年を記念する展覧会で、ラスキンが関わった、ターナーやラファエル前派、ラファエル前派の第二世代、アーツ・アンド・クラフツ運動といった19世紀の英国美術を紹介しています。

ジョン・ラスキンは1819年生まれ。日本では11代将軍徳川家斉の時代です。亡くなったのは1900年。明治33年です。1843年、24歳のラスキンがターナーの作品を評価するために「現代画家論」を発表して著名になった、とのこと。ターナーというと、押しも押されぬ英国の風景画家だと思ってましたが、その独自の表現が批判されていて、そこに反論したのがラスキンだった、ということだそうです。ちなみにラスキンの絵として素描や水彩画を展示してましたが、なかなか見事なものです。ラスキンの評論の背景にこういった自身の実践的な絵画への取り組みがあるように思えます。

で、ラファエル前派ですが、19世紀英国の「芸術家養成機関ロイヤル・アカデミーの保守性」を批判する若手の画家集団です。若い画家達が新たな表現を試そうとすると、ロイヤル・アカデミーが文句を付ける。ロイヤル・アカデミーが理想としているのがイタリア・ルネサンスの巨匠ラファエロの絵画表現で、それに対抗してラファエロ以前の分かりやすく誠実な表現を目指すというので、ラファエル前派としているそうです。そのラファエル前派を高く評価したのがラスキンとなるわけです。

まあ、といった感じで、19世紀の英国、いわゆるビクトリア朝の時代の美術作品の流れがよく分かる展覧会となっております。

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2019.03.31

東京国立近代美術館で「福沢一郎展 このどうしようもない世界を笑いとばせ」を見る

東京国立近代美術館で「福沢一郎展 このどうしようもない世界を笑いとばせ」(1200円:2019/3/12-5/26 )を見た。福沢一郎は1898年(明治31年)生まれの洋画家。出身は群馬県富岡市で、富岡市には富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館がある。亡くなったのは1992年(平成4年)。福沢の作品は東京国立近代美術館の常設展でよく見ている。例えば下の《Poisson d'Avril(四月馬鹿)》は1930年の作品ですが、ユーモラスなシュールレアリスムという感じ。日本の初期のシュールレアリスムの作家、とまあ思ってました。

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ちなみに下の絵も、福沢一郎の作品で《牛》。1936年の作品です。東京国立近代美術館の常設展で見ていたのだけど、改めて、上の作品と同じ作者ということに気がつきました。まったく作風が違うし、ユーモアというよりはアイロニーという感じだし。

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とういうわけで、戦前から戦後まで、あるいは大正の終わりから、昭和、平成の初期まで活躍した作家の作品を年代順に拝見することになる。戦前は前衛美術家、戦中には瀧口修三と共に治安維持法違反の疑いで検挙され、一応、戦争協力へと進むのですが、かなり暗い感じ。

戦後は一転して、明るい色調の作品が目立ってくる。特に年米とメキシコを訪れたあとの絵はパワーがあって、いい感じです。下の絵は《埋葬》というタイトルで1957年の作品。この展覧会のなかで、唯一撮影が許可されてました。中南米旅行の集大成とのこと。あまり埋葬という感じがしないけど、黒く太い線で区切ったなかを鮮やかな原色が塗られていて、ステンドグラス風で面白い。

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ちなみに、この作品をベースにJR東京駅の京葉線連絡通路にある巨大なステンドグラスが作成されている、とのことです。

 

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2019.03.27

上野の森美術館で「VOCA展2019 現代美術の展望─新しい平面の作家たち」を見る

上野の森美術館で「VOCA展2019 現代美術の展望─新しい平面の作家たち」(600円:2019/3/14-3/30)を見た。VOCAはVision Of Contemporary Artの略で、1994年に始まった新人画家の展覧会。平面作品を扱うが、厚さは20cm以内であればOKなので、彫刻っぽい作品もあるし、写真もある。そして、推薦人が必要で、40歳以下という年齢制限もある。ほぼ同じ時期に開催されるFACE展は推薦人はなく、年齢制限もないことを考えれば、若干不自由だけど、まあ賞の選考は楽だろうね。両方を見て思うのは、VOCA展は大きい作品が多く、FACE展は割と小さい。一方で、FACE展は版画はあるけど、VOCAに版画はなかった、といったところか。あと、FACE展は写真撮影がOKなのだけど、VOCAはNGです。

何回か見てきたけど、今回は印象に残っている作品が少ない。そして印象には残ったが、好きだと思える作品になると、さらに少ない。FACE展はそこそこ気になる作家がいるのだけど、VOCAはほとんどない。

笹山直規の作品、《Lines of Death》はおそらくは車にひかれて、即死した死体を描いている。印象には残ったけど、続きが見たいかというと微妙な感じ。

一方、3人組の「目」の作品、《Acrylic Gas》はアクリル絵具と樹脂を溶かして混ざりあったところで固定したものらしいのだけど、抽象画になっている。かなり不思議な作品です。これは続きが見たい。

あとクスミエリカの作品《Metropolice》も気になった。写真をデジタル的にコラージュして作成しているようだけど、ほぼ同じ構図で夜と昼のイメージを作品にしていて、2枚の作品の対比が普通に面白かった。

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2019.03.20

トーキョーアーツアンドスペース本郷で「霞はじめてたなびく」を見る

トーキョーアーツアンドスペース本郷で「霞はじめてたなびく」(無料:2019/2/23-3/24)を見た。トーキョーアーツアンドスペース本郷は、以前、トーキョーワンダーサイト本郷と呼んでいた施設で、諸々の思惑の果てに、現在は東京都現代美術館の運営する若手アーティスト支援のギャラリー的なモノになっているようだ。つまり一貫して東京都の事業なんだけど、かの石原慎太郎知事のときに立ち上がって、石原知事の四男が関わる形で進み、都知事が変わったあとで解体&統合されて、今に至るようだ。

まあ、東京都が若手芸術家を支援する、というのはいいことだし、少々アクセスは悪いけど、本郷と水道橋とかお茶の水の間という場所も悪くない。この施設が解体されずに、残っているのはいいことでしょう。

今回の展覧会「霞はじめてたなびく」は佐藤雅晴、西村有、吉開菜央の3人の作品を紹介している。トーキョーアーツアンドスペースのプログラムに参加経験のあるアーティストを中心に企画展を展開する、ということだそうで、「季節の移ろいや風景の移り変わりを身体で感覚的に感じ取り、その経験をとおして世界を捉えなおし、今まで見えていなかった風景を映像や絵画によって浮かび上がらせる作家」として、この3人を選んだ、としてます。

3人のうち、特に佐藤雅晴の作品が見たくて、行ってみた。というのも佐藤雅晴の作品は2016年に原美術館で見て以来、印象に残っているからだ。そのときの印象は「原美術館で「ハラドキュメンツ10 佐藤雅晴―東京尾行」を見る」に書いておいたのだけど、ざっとまとめるとそのときの佐藤雅晴の作品は2種類あり、一つは実写の映像の一部分をトレースしてアニメーションにした「東京尾行」という作品。アニメ化したところだけ、色がフラットになって、ちょっと不思議な感覚を味わうことになる。もう一つはCallingという映像作品で、人のいない風景のなかで電話が、携帯だったり、固定電話だったり、公衆電話だったりするのですが、鳴り始めて鳴り終わる、というモノです。

今回の「霞はじめて…」では、東京尾行の手法で作成した「福島尾行」という作品を上映してました。作者が自ら撮影した福島の映像をトレースしたものです。よく分からないけど、上映している部屋にはアップライト型のピアノがあって、それも自動演奏ピアノというもので、音はほとんどしないようになってますが、鍵盤が動くという、シュールな展示風景になっております(写真下)。残念なことに、作者は癌闘病中で、2019年3月9日に亡くなった、とのことです。この映像作品がほぼ遺作のようになってしまった。

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福島尾行はYouTubeで公開されていたので、下に貼っておきます。

ちなみに、佐藤雅晴がアクリル絵具で描いた作品を展示した個展「死神先生」(2019/2/15-3/16)を新宿のギャラリーKEN NAKAHASHIで拝見しました。フラットな色使いで、平凡なはずなのに、俳句のような余韻のある作品になっていました。このときの作品の画像はこちらのページで拝見できます。さらにちなみに、六本木の森美術館で開催している「六本木クロッシング2019展:つないでみる」に佐藤作品が出展されています。Callingという作品です。この作品は、固定電話とか公衆電話とか、携帯電話が鳴るシーンを表現してました。つまり、下の画像のように人が写っていないけど、明らかについ先程まで、人がいたよう状況です

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そこで、電話が鳴り始めると、携帯電話が明るく光り始める、というものです。

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「霞はじめて…」に話を戻すと、西村有の作品は油彩画で、何回か見たことがある。下の写真が展示風景です。あまり好みの作家ではないのですが、この自転車の絵は印象的です。

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もう一人、吉開菜央の作品は短編映画でした。「静坐社」というタイトルで「大正期に流行した心身修養法のひとつである岡田式静坐法を展開していた京都の静坐社で、建物が取り壊される直前に制作。定められた呼吸と姿勢を保ち、腹に力を込めて静かに座る実勢にリンクさせ、身体の動きに伴い生まれる音を丁寧に描き出し、普段気づかなかった風景を表出させます」としてます。映像は以下のような感じ。岡田式静坐法の発案者、岡田虎二郎と建物のなかで静坐法を実践する和服の女性。

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建物はもうない。音の扱いが面白く、おそらくは、その場で流れていた音をしっかりと録音して、映像とミックスさせているように聞こえた。つまり、呼吸音とかが、ちょっと大きめなっている。

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2019.03.13

損保ジャパン日本興亜美術館の「FACE展 2019」を見る

損保ジャパン日本興亜美術館の「FACE展 2019」(600円:2019/2/23-3/30)を見た。FACE展は2019年で7回目となる公募コンクールです。特徴は年齢と所属を問わないところ。そのためか、年齢はばらばらで、入選した方でも1944年生まれ(74)から2010年生まれ(8)までと幅広い。8歳の作品には驚かされたけど、手法とかもバラエティに富んでいて、かなり面白かった。以下、気になった作品についてメモっておきます。

まず、グランプリ作品。庄司朝美の《18.10.23》(写真下)。アクリル板の裏側に描かれた作品だそうです。なんとなくガラス絵っぽい気がしたけど、アクリル板でした。サイズも200×170cmとなかなか大きい。

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優秀賞をとった松崎森平の《東京》もユニークで漆を使っている。どうやら黒い漆のパネルを作って、その上に蒔絵で夜の東京を描いているらしい。写真に撮ると下のように、周りが映り込んでしまって、分かりにくいけど、夜の闇とか、雨にぬれたアスファルト道路の感じが生々しい。

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以下は賞をとっているワケではないけど、気になった作品について書いておきます。まず久世なつかの《未明(からだ×ハチ2)》。この作家の作品はシェル美術賞展2017で初めて見たのですが、同じテーマを描いてます。ちょっと不思議な感じになってきた。この先、どこに行くのかなあ、と気になるところ。

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川上椰乃子の《団欒》は日本画ですが、特に何か奇をてらったわけでもなく、ごく普通のモチーフを描いているのですが、現代的でもある。縦長のフォーマットもいいです。

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黒田恭章の《朝を待つ》は織物です。それも手織りです。最初の印象は細かな色使いで、どうやって描いたのか、とまあ絵だろうと思って見たのですが、なんか変で、説明を見ると織物でした。

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椛田ちひろの《Dark energy, #x》は紙にボールペンで描いている。その作品をアクリルのパネルで覆っているで、写真に撮ると、いろんなものが映り込んでしまう。線一本一本がとても細かいのだけど、この線が濃密に集まって、何かのうねりになっている。このうねりが面白い。

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吉増麻里子の《Garden》は筆のタッチが面白い。でまあ、よく見ると裸の人と服を着た人が倒れていて、意味が不明です。

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米蒸千穂の《遠浅の空気》は赤いもやに包まれている風景です。まあ、こういう風景はあり得ない。ただこの作家の作品は、青いもやとか、緑のもやに包まれた作品もあるようです。

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2019.03.03

神奈川県民ホールギャラリーで「META−日本画のワイルドカード」を見る

神奈川県民ホールギャラリーで「META−日本画のワイルドカード」(無料:2019/2/20-2019/3/3)を見た。「日本画のワイルドカード」という表現が興味深く、そしてグループ展らしく、市川裕司や金子富之、竹内啓といったかつて作品を見たことのある画家の名前があったので、横浜までいってみた。

ちなみに、知らなかったのですが、METAというのは画家のグループらしく、そのサイトにある説明では「“META”は、「無秩序の、世代を超えた、独自の、変容する」という意味を示します。日本画を踏襲したアーティストたちが、META的な思考と表現をもって日本画の枠組みを超えた新しい芸術理念を探求しながらも、その素材や伝統に敬意を表した作品の展示を目的としたグループです」とのこと。たしかに画家のプロフィールを見ると、だいたいが美大で日本画を専攻してます。

ワイルドカードという表現については、サイトで「本展の副題である「ワイルドカード」は、カードゲームにおいてどのカードにも代用できる万能札の意味を持つ言葉です。これまで日本画の定義をめぐり数多くの議論をされてきましたが、明確な答えを見出せずに今日に至っています。言い換えれば、日本画という言葉は、時代ごとに異なった意味で代用されてきました。その様は、まさに美術というゲームにおける「ワイルドカード」と言えるのではないでしょうか」としています。この辺は、まあそうかな、とも思いますが「時代ごとに異なった意味」とは具体的にはどうなんだろうね。知りたいところではある。少なくとも、今の日本画の定義は画材として日本特有の素材を使うぐらいしかないように思えるが、今回、展示された作品を見ると、ほぼ、何らかの日本画の画材を使用してように見えますが、そうでもない作品もあるようです。

撮影はOKでしたので、気になった作品を掲載しておきます。

まず、吉田有紀の作品。タイトルは《カオスとコスモス》。黒い板で囲われているその中は赤い。素材はラッカーとかアクリル絵具なので、日本画的なモノはないように見えますが、漆のような印象があって、日本的なモノを感じます。

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次は竹内啓の《藤内#4 PM5:55 14/AUG 2018》。抽象画ですが、素材は日本画のモノです。日本画の画材を使わないとこういう抽象画は描けない気がする。

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こちらは唯一の立体作品。市川裕司の《Japanese Tree III》。球体の内側にアルミ箔が貼ってある。そして中におそらくLEDが仕込んであって、そこに反射しているようです。市川作品は太田市美術館・図書館で拝見したけど、そのときは《世界樹IV》という作品を見たけど、どう関係するんだろうか? ちなみに、この作品は中が覗けます。

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佐藤裕一郎の《koivumaisema》。フィンランド語で白樺のことらしい。「紙に石墨、胡粉」とあるので、確かに日本画なんでしょう。この絵は300×780cmと巨大で、目の前にあると、つい見続けてしまう。

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金子富之の《摩醯首羅王》。この作家の作品を見るのは3回目。最初は2016年の「19th DOMANI・明日展」(レビュー記事はこちら)で、その次が2017年の「詩情の森 語りかたられる空間・オープンシアター2017」(レビュー記事はこちら)。日本画の画材でヒンドゥー教の神様を描いているような感じ。

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2019.02.27

たばこと塩の博物館で「江戸の園芸熱 ―浮世絵に見る庶民の草花愛―」を見る

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本所にあるたばこと塩の博物館で「江戸の園芸熱 ―浮世絵に見る庶民の草花愛―」(100円:2019/1/31-3/10)を見た。江戸時代の園芸について、浮世絵を通して紹介する、という展覧会です。前期後期に分けて展示するのですが、浮世絵の点数は合計200点もあるそうです。

まあ、色々と面白かったのですが、その前に、入場料が100円なのが、驚きです。常設展示を見るのに100円というのも十分に安いのですが、特別展は別料金かと思いましたが、特別展込みで100円でした。まあ、これなら前期後期に分けて展示されても、見に行ってみようという気になります。

展示は「花見から鉢植へ」「身の回りの園芸」「見に行く花々」「役者と園芸」の4つのパートに分かれてます。

「花見から鉢植へ」で印象的なのは、江戸の庶民が花見をするようになるのが、18世紀の八代将軍吉宗による植樹政策からで、18世紀半ばから植木鉢が普及し始めて、庭のない大多数の江戸の庶民が園芸を楽しむようになった、というあたりです。

「身の回りの園芸」では、庶民への園芸の浸透具合を見せてくれます。植木鉢が普及することで、植物を簡単に売り買いできるようになり、露店で販売したり、振り売りという店舗を持たない商人が鉢植を持ち歩いて、売り歩いていたらしい。その辺が状況が浮世絵に描かれているわけです。露店で棚に鉢植えを並べて売っているところを描いた作品には、サボテンやソテツが描かれていて、既にいろんな植物が売られていたのが分かる。

「見に行く花々」では、19世紀に入って、さらに園芸が発達して、プロが一般人には作れないモノを見世物として作るようになるあたりを紹介している。菊細工という分野で、例えば菊人形なんかが、作成されてます。このほか、菊を接ぎ木して1本の菊に100種類の菊を咲かせる、という国芳による浮世絵が展示されてました。

「役者と園芸」では園芸愛好家の好例として、三代目尾上菊五郎を取り上げます。歌舞伎役者としても大成してますが、園芸が趣味で、植木屋を買い取って、別邸にするとか、かなりのめり込んでいる方です。役者絵のバリエーションとして、役者が見栄を切っている背景に鉢植えが置かれていたりします。

とりあえず前期は見たので、後期も見に行きたいと思ってます。

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2019.02.25

国立新美術館で「未来を担う美術家たち 21st DOMANI・明日展」を見る

国立新美術館で「未来を担う美術家たち 21st DOMANI・明日展 文化庁新進芸術家海外研修制度の成果」(1000円:2019/1/23-3/3)を見た。DOMANI・明日展は文化庁の若手芸術家向け研修プログラムを受けて、海外で活動したアーティストに作品展示の機会を与えるものです。基本的に若手実力派アーティストの作品を拝見することができる。1998年から開始し、今年で21年目というか21回目になる。

今年は、インスタレーション的な作品や、ビデオ系が多くて、直感的に理解できる作品があまり多くはなかった、というのが第一印象。理解するのに時間がかかるというか、理解できないままの作品がそこそこあった。まあ気になったのは以下の作家です。

まず、陶芸家の和田的。白磁の作品です。今まで、DOMANI・明日展で陶磁器の展示があったかどうか、あまり印象にない。印象にないのだけど、造形的に面白い。下の作品は《白磁|太陽》。

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こちらは展示の全体。手前にあるのは《青白磁押文大鉢》。

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次が現代美術家の蓮沼昌宏。19世紀後半に考案された、パラパラ漫画の原理で動く装置「キノーラ」を使ってアニメーションを体験できる、という展示です。下の写真は装置を上から見たことろ。

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ハンドルを回すと、パラパラ漫画が動き始める。

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大きなテーブルにキノーラが何個か置かれて、みんなでクルクル回しておりました。自分で操作できるので、純粋に楽しいです。

もう一人、画家の村山悟郎。ほぼ何を表現してるのか、よく分からない作品ですが、麻紐を織ってカンバスを作り、そこにドローイングを描く、という作品。

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タイトルも《自己組織化する絵画<樹状多層構造>》とか、そんな感じです。手前にあるディスプレイは、この麻紐を織るところをシミュレーションしたものだそうです。

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