カテゴリー「杉本博司」の記事

2016.09.25

東京都写真美術館で「杉本博司 ロスト・ヒューマン」を見る

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恵比寿の東京都写真美術館で「杉本博司 ロスト・ヒューマン」(2016/9/3-11/13:1000円)を見た。写真美術館は2年ほど、リニューアルのため閉館していたけど、9月3日から再オープンとなりました。そのリニューアルを飾るが「杉本博司 ロスト・ヒューマン」。そして、写真美術館は今年で開館20周年となる。「杉本博司 ロスト・ヒューマン」にはその記念ということもあるそうです。

2年かけてリニューアルしただけのことはあって、建物内もそこそこ変わった。エレベーターが1機から2機に増えたし、2階から3階への階段が1つになった。以前、2階のカウンターと3階への階段があったあたりには、ミュージアムショップが配置され、以前、ミュージアムショップのあった1階はカフェのスペースが広くなったように見える。そして略称はSYABI(写美)からTOP MUSEUMに変わった。これは、あまりぴんとこない。英語名称のTokyo Photographic Art Museumから抜き出したらしいけど、なんだかよく分からないものになってます。個人的には定着しないな。

さてリニューアルを飾る「ロスト・ヒューマン」ですが、「今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない」「廃墟劇場」「仏の海」の3部構成です。まあ、めでたい開館20周年記念が終末を扱う、というのはなかなかおつなモノだと思います。

「今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない」は「今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない」で始まる世界の終わりについてのモノローグ形式のシナリオが33個、用意され、それに合わせた、杉本さんの蒐集したモノや作品が展示される、というもの。会場は古びたトタン板で区切られていて、全体に廃墟感が漂ってます。

各モノローグは、そのモノローグをつぶやく人物の職業や立場を明示して、始まる。例えば「理想主義者」「比較宗教学者」「養蜂家」といった具合。「比較宗教学者」は「今日、世界は死んだ。もしかすると昨日かもしれない。地球に近づく大隕石の軌道が計算され、3年後に99パーセントの確率で地球に衝突することが報告された。人々は世界の終末を確信し、宗教が大復活を遂げた。しかし一神教と多神教が対立し…」といった感じで、進む。比較宗教学者のパートには「最後の晩餐」を蝋人形で構成したものを杉本さんが撮影した作品が置かれている。そして、この作品は、終末を象徴するにふさわしく、ボロボロになっている。2012年10月にニューヨークをおそったハリケーン・サンディーのおかげで、杉本作品を保存していた倉庫が水没して、作品のかなりの部分が溶解してしまったらしい。結果オーライという感じですが、古色の付いた作品となり、終末らしい味わいとなった。

さらに凝ったことに、各モノローグは紙に肉筆で書かれて展示されている。実際に誰が書いたかというリストは入場時に渡される。最初はなんのリストなのか、分からなかったけど、見ていくうちに、そういうことか、と気がつくことになる。ちなみに「理想主義者」は浅田彰氏で「比較宗教学者」は須田悦弘氏といった感じです。なかなかのキャスティングだと思います。

「廃墟劇場」は劇場シリーズの新作。劇場シリーズは8×10のカメラのシャッターを開放にして、映画1本分露光させた作品です。「廃墟劇場」では廃墟となった映画館を探しだし、そこで、杉本氏自選の映画を上映して、撮影するというもの。ホワイトアウトしたスクリーンの周りは、確かに廃墟で、8件も見つけてきたことに感心してしまう。ちなみに各作品ごとに何を上映したかが明示されていて、それぞれの映画のサマリーが展示されているのですが、そのサマリーが面白かった。

「仏の海」は三十三間堂の千手観音を撮影したもの。図録の解説によると、「今日 世界は死んだ…」のシナリオが33個あるのは、この三十三間堂に由来する、とのこと。33通りの終末を33の千手観音で救った、ということになるらしい。


まあ、1000円でこれだけ拝見できるなら、安いモノでしょう。図録は2500円で、かがり綴じ製本で、見やすいです。表紙の裏表はは以下のようになってます。表が廃墟劇場で、裏はタイトルが刻印されてます。

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ちなみに、初日にいったのでサイン本を購入しました。

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2015.10.31

千葉市美術館で「杉本博司 趣味と芸術-味占郷/今昔三部作」を見る

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 千葉市美術館で「杉本博司 趣味と芸術-味占郷/今昔三部作」(2015/10/28-12/23:1200円)を見た。タイトルだけだとよく分からないのだけど、杉本博司の美術展を2つやっているということでした。千葉市美術館は中央区役所との複合施設で7階と8階が展示スペース。7階が「杉本博司 趣味と芸術-味占郷」、8階が「杉本博司 今昔三部作」を展示している。まあ、2部構成ですね。

 ただ、普通の2部構成と違って、2つの美術展なのでカタログも2種類ある。下の写真の左側の派手な方が「趣味と芸術-味占郷」のカタログとなる「趣味と芸術 謎の割烹 味占郷」。こちらは出版社から市販されている書籍で、書店でも購入できます。版元は婦人画報とかMEN'S CLUBとかを出しているハースト婦人画報社。お値段は2808円。一方、「今昔三部作」のカタログは右側のシンプルな書籍。こちらは普通の美術展カタログで、お値段1500円です。

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 展示ですが、よかったですよ。今昔三部作は「ジオラマ、劇場、海景三部作の、最古作と最新作を展示する」というもの。海景、劇場、ジオラマの順に拝見する。海景は1980年の「カリブ海、ジャマイカ」から1995年の「スペリオル湖、カスケード川」で6点。劇場は7点あって、1978年の「U.A. プレイハウス、ニューヨーク」から2014年の「テアトロ・デイ・ロッツイ、シエナ」。ジオラマは1976年の「ハイエナ・ジャッカル・ハゲタカ」から2012年の「オリンピック雨林」の3点。照明を落として、スポットが作品にあたるようしていて、暗い中に作品が浮き上がる感じ。下の写真のような感じです。

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 すべてのプリントが「ニューヨークの杉本スタジオからお借りした16点の大判プリントにより展観します」とのことで、どれも大きい。だいたいが119.4×149.2cmという大判です。

 「趣味と芸術-味占郷」のテーマは床の間です。解説によると「2013 年秋より、『婦人画報』誌上で「謎の割烹 味占郷」を連載してきました。この連載は、毎回「味占郷」という架空の割烹に文化人や芸能人を招待し、その人物や季節にあったしつらえと料理でおもてなしするという企画です」とのこと。本に書いてあるけど、連載では匿名でやっていて、この本が書店に並んで、ようやくお披露目となったらしい。ついでに引用すると「ゲスト、床のしつらえ、料理が三位一体となったこの連載は、本年 12 月号で最終回を迎えます。展覧会「趣味と芸術-味占郷」では、そこで紹介された床のしつらえを杉本の手により再構成するとともに、料理を盛った器の一部もあわせて展示します」。


 見所は、杉本氏が蒐集した掛け軸と器、そして須田悦弘が作成した植物が添えられること。ちなみに、2015年春にMOA美術館で開催された「尾形光琳300年忌記念特別展『燕子花と紅白梅』光琳アート -光琳と現代美術-」でお披露目された「月下紅白梅図」も展示されていて、そこには須田悦弘作の梅の花が置かれている。この梅の花は尾形光琳300年忌記念特別展では、光琳の紅白梅図屏風の前に置かれていた(写真下)。その時は、梅の花はガラスケースの中にあったのだけど、今回はケースのない状態で拝見できます(写真下)。というわけで須田悦弘ファンも必見ですね。

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追記
最終日にも行きました。なんと撮影可能とのこと。Webサイトを見たところ、2015/11/11から許可がでたとのこと。というわけで、撮影した画像を追加しておきます。

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2015.02.21

MOA美術館で杉本博司の新作を見るために「尾形光琳300年忌記念特別展『燕子花と紅白梅』光琳アート -光琳と現代美術-」へ行く

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 熱海のMOA美術館で「尾形光琳300年忌記念特別展『燕子花と紅白梅』光琳アート -光琳と現代美術-」(1600円、3/3まで)を見る。熱海に来たのは2009年5月以来。そのときもMOA美術館が目的でした(そのときの記事はこちら)。前回は「特別展 江戸と明治の華 -皇室侍医ベルツを魅了した日本美術-」っていう特別展の入場券がもらえたので、熱海に行ってみたんですが、今回は、当たり前だけど、すべて自腹。なんといっても尾形光琳の300年忌記念で、燕子花図と紅白梅図という国宝2点を一度に拝見できるという、豪華な試みですから。燕子花図は根津美術館所蔵、紅白梅図はMOA美術館所蔵、というわけで、2月の梅の時期にMOA美術館で紅白梅図が公開され、5月に燕子花の咲くころに根津美術館で燕子花図が公開されてきたんですが、今年は特別ということです。ちなみに、4月18日からは根津美術館でこの2点が展示されるそうです。

 熱海まで新幹線で来て、駅からMOA美術館にバスで行こうとしたら、長蛇の列。バスの出発時間10分前にはバス停に並んだんですが、既に満杯。20分後の次のバスに乗ってください、とのこと。次のバスがきてもぎりぎり満杯でさらに次のバスってこともありそうな感じだったので、さっさとタクシーで移動。まあバス代170円に対してタクシー代790円でしたが、時間があまりにもったいない。まあ、バスの後ろをタクシーで追う形になりましたが、バスだと降りるだけでも時間がかかるのを見ながら、とっととMOA美術館の中に入りました(上の写真が入り口。高解像度版はこちら)。MOA美術館の入り口から本館までは、結構、距離がある。エスカレーターで総延長200m、高低差60mとのこと。下の写真がエスカレーターね(高解像度版はこちら)。

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 入場料を払うのは、本館に入ってから。とりあえず、秀吉が作らせたという「黄金の茶室」を復元したものを拝見して(写真下、高解像度版はこちら)、展示会場にむかう。ちなみに、黄金の茶室があるのが2階で、展示は2階を見てから1階に降りてさらに見ることになる。

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 展示会場に入ってすぐに目に入ったのが燕子花図、そしてその向かいに紅白梅図が配置されている。まあかなりの混雑ぶりで、ゆっくり見比べることはできないけどね…。えーと、紅白梅図には須田悦弘の「梅」がさりげなく散らしてありました。さて、江戸時代の琳派の絵は光琳だけですが、かなりの点数を拝見しました。このあと、琳派の影響を受けた明治・大正・昭和と近代&現代の作家の作品が、並びます。まあ、いろいろあるけど、気に入ったのは福田美蘭の「風神雷神図」。それもフランシス・ベーコン風というもの。確かにフランシス・ベーコンが風神雷神図を描くとこうなります、というもの。

 そして、今回、ぜひ見たかったのが杉本博司さんの新作「月下紅白梅図」。光琳の紅白梅図をデジタルで撮影して、モノクロでプリントしたモノを屏風に仕立てたもの。銀塩ではなく、プラチナ・パラディウム・プリントという方式でプリントしたとのこと。黒がしまっていて、墨で描いたような感じがする。今回のカタログ「光琳ART 光琳と現代美術」(角川学芸出版、2592円)のカバーを飾っているのが「月下紅白梅図」(写真下)。

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 ちなみに、このカバーを取ると下の写真のように、光琳の「紅白梅図」が現れるのでした。凝ってますね。

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2015.01.19

ギャラリー小柳で「UNSOLD」を見る

 銀座のギャラリー小柳で「UNSOLD」(無料:22015/1/31まで)を見る。杉本博司、ソフィ・カル、青柳龍太の3人による展示なんだけど、名前の通り、売れ残りを展示している。なんの売れ残りかというと、靖国神社の骨董市に3人が出展して、売れ残ったものだ。出展した全品の写真とリアルな売れ残りを並べてみせるというもの。

 実際に売ったのは、2013年3月。それが、どのようにして、2014年12月までかかったのか、よく分かりませんが、銀座のギャラリーとしては比較的広めの小柳ギャラリーで展示されました。まあ3人3様、スタイルが違っていて面白い。杉本博司の売り物に大げさな、かつ眉唾な由来が手書きでかかれていた。売り物には、海景シリーズのうちの1点もあったけど、売れ残ってました。ソフィ・カルの売り物には、エピソードがタイプされた札がついていた。そして青柳龍太の売り物はミニマルなアートで、由来書きはなかった。

 ちなみに、この展示、珍しくカタログが販売されておりました。500部限定、1部1080円。ちなみに私が購入したカタログには275と番号が振られておりました。

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 UNSOLDとスタンプされた、袋をいただきました。袋の中にはカタログが入っておりました。

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 番号が正しければ、それも番号順に販売されているなら、このカタログもUNSOLDになりそうですね。

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2014.12.15

東京都庭園美術館で「内藤礼 信の感情」を見る:LX100で撮影してみた

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 リニューアルした東京都庭園美術館に行って、久しぶりにいろいろと撮影してみた。庭園美術館は、庭園もいいのだけど、まだ未公開。もう一つの売り物である「朝香宮家の本邸」を見せる「アーキテクツ/1933/Shirokane アール・デコ建築をみる」を拝見する。つまり建物と内装、家具などを鑑賞する。この展示のいいところは、撮影可なところ。平日であればOKということなので、会社で昼飯のついでに、買ったばかりのLX100を持って寄ってみた。入場料は700円。12月25日まで開催している。ちなみに上が正面から撮影したところ(高解像度版はこちら)。


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 こちらは、玄関の裏側。かのルネ・ラリックによる立体的な女神さん達のガラス装飾を裏側から撮影してみました(高解像度版はこちら)。


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本館を見た後は、新館へ。今回のリニューアルでは3年かけて、本館の設備を改修し、この新館を建設した。新館は現代建築で、2つのギャラリーとカフェ、ミュージアムショップからなる。美術家の杉本博司さんをアドバイザーとして迎えて、施工された。今回はこのギャラリーと本館を使って「内藤礼 信の感情」
というインスタレーションと絵画の展示をしている。上の写真は本館を出て渡り廊下から新館の入り口を見たところ(高解像度版はこちら

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こちらは、中に入って、ミュージアムショップの横から庭に出て、庭に向かう路から新館を撮影したところ(高解像度版はこちら)。


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 ガラスの壁が新館入り口のアプローチのところにある。波打った感じが独特で、杉本氏によると「本館を象徴するエントランスのルネ・ラリックのガラス扉と呼応するように波板ガラスを使って、訪れる人々に21世紀の装飾芸術の有り様を密かに問いかけるアプローチとなりました」としている。ガラスは三保谷硝子製とのこと(高解像度版はこちら)。

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えーと、こちらはiPhone 5sで撮影したパノラマ写真。新館と本館の裏側を1枚に納めてみました(高解像度版はこちら)。

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最後の3枚は本館で撮影した「信の感情」のインスタレーション。小さな木彫の人形が部屋の中のどかにいる、という趣向。鏡の前にいたり(上:高解像度版はこちら)、床の上に立っていたりする(下:高解像度版はこちら)。

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人形以外に、毛糸で編んだ帽子、というのもある。下がそれで、中庭にあるペリカンの像が白い帽子をかぶってました(高解像度版はこちら)。

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2014.07.27

「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展」を見る

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 竹橋の近代美術館で「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展」(2014/8/24まで、1200円)を見る。台湾にあるヤゲオ財団のコレクションを74点、展示している。ヤゲオ財団はYAGEO(http://www.yageo.com/)という台湾にある電子部品メーカーのCEOとその家族、およびYAGEOからの寄付金で創立された組織、とのこと。まあ。CEOのピエール・チェン氏のコレクションを管理している財団ということらしい。中国の近現代と西欧の近現代美術を収集している。杉本博司ファンとしては、杉本氏の大作「最後の晩餐」が、海景シリーズとともに展示されると聞いて行ってみました。

 近代美術館の入り口のあたりにある、芝生の上には上の写真のように白い巨大なケイト・モスがヨガのポーズをとったブロンズ作品「神話(スフィンクス)」が鎮座しています(高解像度版はこちら)。マーク・クインの作品です。今作品は会期終了後も2015年春まで展示される、とのことです。ちなみに、この展覧会は名古屋、広島、京都と、2015年5月31日まで巡回するので、それに合わせているような感じですね。

 杉本博司氏の「最後の晩餐」ですが長さ739.1cmの作品で、13人の蝋人形を配置して撮影したもの。海景シリーズに挟まれて展示されます。

 どれもいい作品なんですが、意外と良かったのが、中国の近現代の作品。どの作家の作品も初めて見るもので、新鮮でありました。ホワン・ミンチャン(黄 銘昌)の細密な風景画が印象に残った。

 

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2013.12.10

正木美術館で「物黒無 モノクローム」展を見る

 大阪府の忠岡町にある正木美術館で「物 黒 無」(2014年2月2日まで、1000円)を拝見した。正木美術館は、水墨画を中心とした東洋古美術を収集した美術館。そのコレクションは正木孝之という地元の方が、収集したものだ。コレクションは国宝3件、国の重要文化財12件を含み、約1200点に達するとのこと。この正木コレクションと杉本博司の作品とコレクションを並べて、鑑賞しましょう、という展覧会。正木コレクションの水墨画や墨跡、それに杉本博司のモノクロ写真とコレクションが並んで、基本的にはモノクロームの世界。このところ茶道にこっている杉本さんらしい、コラボレーション的な展覧会です。

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 正木美術館の場所は、南海本線の忠岡駅から徒歩15分。忠岡駅は急行とかは停車しない駅なので、その隣の泉大津駅まで急行で行って、各駅停車に乗り換える。駅前はほとんど何もないところなので、まあ、そこからタクシーって感じではない。特に迷うことなく歩いていきましたが、普通の住宅地なので、目印になる建物がそんなにありません。地図を持って行った方がいいでしょう。上が正木美術館の入り口(高解像度版はこちら)。下が全景(高解像度版はこちら)。

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 展示はなかなか興味深いものでした。例えば、正木コレクションの国宝「大燈国師墨蹟 渓林偈・南嶽偈」の2点の掛け軸の間に、杉本作品のジオラマシリーズから「カリフォルニア・コンドル」を配置する、という具合。杉本作品と杉本コレクションについては、杉本氏が表装している。各作品はすべてモノクロなんだけど、表装だけはカラフルで、それがまた面白い。展示物の見せ方もそこそこ凝っていて、杉本コレクションの「解体新書」は、鏡を使ってその裏側も見せてくれた。

 ちょっと残念なのは、カタログがないこと。各展示のガラスケースの前に、かなりの分量の解説が書かれていたのだけど、覚えきれません。カタログで出すと、売れると思うのですが、いかがでしょう。

 点数はそんなに多くなかったのですが、解説を読むのに時間がかかって、まあ1時間ちかくかけて、見終えたあと、美術館の裏側というか、横にある正木さんのお宅、正木記念邸を拝見した。ちなみに、下の写真は美術館の前にあるお手洗い。理由は不明ですが、美術館内にはない。

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 正木記念邸は、正木美術館の右横を入っていく。その通路はしたように置き石がある(高解像度版はこちら)。

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 こちらが玄関(高解像度版はこちら)。なかなか立派な日本家屋です。正木美術館の館長ブログによると、1949年築とのこと。最近、国の登録有形文化財に指定されたらしい。

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 なかに上がらせてもらった(高解像度版はこちら)。メインの広間のあたりはガラス戸に囲われていて、外の庭が見渡せる。

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2013.03.06

「HOUSE VISION」で杉本博司さんの茶室を堪能する

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杉本博司さんが茶室を建てたというので、お台場でやっている「HOUSE VISION 2013 TOKYO EXHIBITION」(3/24まで、1800円)に開催日の3月2日に行ってみた。上の写真がその茶室の外観です(フル解像度のデータはこちら)。丁度、3月2日に杉本博司さんと茶人の千 宗屋さんのトークセッションがあったので、それを拝聴すべく、12時半ちょい前に到着するようにやってきた。

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HOUSE VISIONの会場は、お台場のゆりかもめの青海駅からすぐのところ。トークセッションは、蔦屋書店が入っている入り口横の建物。上のような感じの会場で、80名ぐらいは座れる。今回は茶室で最初の茶会を開き、その様子をビデオで撮影して、トークセッションの前に上映した。

まあ、パナソニックの巨大なプラズマテレビを置いて、見せていたんだけど、これが異様に見にくい。建物がガラス張りなので、そこから入ってくる光が反射して、ちょっと暗いシーンでは何も見えない。映像を映すときは、カーテンを引くとか、ブラインドを入れるとか、主催者も、ちょっとは考えてほしかったね。まあ、カーテンも、ブラインドも付けられそうにない建物だけどね。

さて、トークセッションですが、モデレーターがデザイナーの原研哉さんで、なぜ、杉本さんが茶道に傾倒していったかを聞いていました。まあ、写真家が茶室を作ってしまうわけで、なぜって感じはある。その答えは、まあ一字一句を覚えているわけではないけど、茶道ってものが総合芸術で、特に安土桃山で一旦、それまでの芸術をまとめ、その辺を守りながら、現在まで発展させてきたってところにあるような話だった。そして、見立てや、組み合わせであらゆる時代の芸術を取り込んでいけるところ、のように聞こえました。

あと、千 宗屋さんが、茶道というと、緋毛氈に赤い大きな傘、和服の女性っていうイメージを、本来の茶道に、たぶん、安土桃山的な茶道に回帰させたい、っていうような言っていたように思える。まあ、正確じゃないし、なんとなくだけどね。

でまあ、肝心の茶室ですが、これが凝っていて、建物自体は作りかけなんですが、その周りはかなり作り込んでありました。

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千利休が作ったという国宝の茶室、待庵を本歌とする、とのこと。名前は「雨聴天(うちょうてん)」。屋根は小田原のみかん小屋で使われていた経年変化したトタン板を葺いたもの。トタン板だから、雨が降ってくると音がする。というわけで「天から降る雨の音を聴く」という意味で「雨聴天」。

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壁はスカスカで、土壁を塗っていない骨組みだけの状態。晒竹と呼ぶらしい。この会場では、茶室は半分まで作って、あとは小田原に持っていって、完成させる、とのこと。杉本さんは小田原文化財団という組織を作って、小田原の江之浦という土地に「舞台、作品展示室、茶室などを配した芸術文化施設」を作る、としていて、茶室はそこに持っていくらしい。

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敷石とか沓脱ぎの石もなかなか凝ったもの。沓脱ぎの石はガラス製です。

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中はこんな感じ。床の間にかかっているのは、利休の書とのこと。花入は銅製。竹を模したものらしい。杉本さんは、拾ってきた、とかおしゃってました。

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ちなみに、茶室を囲っているのは竹ほうき。原美術館にも飾ってあって、アートのほうき、とか言っていた。この竹箒は1本150円とのこと。

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もう一つの展示が、今風の数寄屋で、このときは床の間に大きな銅の鉢があって、鉢に白い石を敷き詰めて、そこに花を生けていた。鉢は天平時代のものらしい。花を生けたのは、銀閣慈照寺の花をいけている方との事。なんかかなりかっこいい方でした。

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ちなみに、杉本作品の展示は、住友林業がサポートしていて、茶室の費用も半分は持ってくれたらしい。偉いね住友林業。ところで、HOUSE VISIONですが、建築家とメーカーが組んで、家を通して未来を見せるというもの。まあ、いろいろと面白いんですが、実は、どうも建築家のプレゼンってのはもう一つピンとこない。実に一番、興味深かったのは、蔦屋書店と東京R不動産による「編集の家」でした。


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ここでは、リフォームのことを「編集」と呼んでいる。80平米を800万円でリフォームする、とのこと。確かに面白そうな素材が展示されていた。下の写真は塗料なんだけど、塗ると磁石がくっつくようになるらしい。

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まあ、この辺の素材やら、サービスなどの話をまとめた本「toolbox 家を編集するために」が売っていたので、つい、購入してしまった。賃貸でも利用できそうなリフォーム素材があるので、なんかのときに試してみたいなあ、と思う今日このごろです。

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2013.02.13

川村記念美術館で「BLACKS」を見る

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千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館で「BLACKS ルイーズ・ニーヴェルスン|アド・ラインハート|杉本博司」(4/14まで、1300円)を見た。

3人は黒を作品の要素とした点で結びつく美術家だ、という考えでキュレーションされたもの。ルイーズ・ニーヴェルスンは黒く塗装したモノを組み合わせた彫刻作品で、作品によっては巨大な黒い書棚に見えたりする。アド・ラインハートは黒い抽象画で、これも作品によっては黒一色に見えたりするが、しばらく見ているとそうでもないことが何となく分かってくる、という不思議な作品。一見、一番、わかりやすいのが杉本博司の作品だ。モノクロの写真ですから。今回は劇場シリーズをたっぷり拝見できた。

川村記念美術館は佐倉の山の中にある。旧大日本インキ化学工業、現DICの研究所の敷地内にある美術館で同社の創業者や歴代の社長や会社としてのコレクションを展示している。コレクションは多岐にわたっていて、レンブラントの自画像があるかと思えば、印象派や日本の近代、近世の絵画もある。長谷川等伯の重文「烏鷺図屏風」なんてのがあったりする。まあ、それくらいならいいけど、現代美術のコレクションもなかなかで、ジョセフ・コーネルの箱、フランク・ステラの大作なんてのもある。特筆すべきはマーク・ロスコの「シーグラム壁画」とバーネット・ニューマンの「アンナの光」という巨大な抽象画で、どちらも専用の部屋を用意して、展示されている。

これらのコレクションを見てから,「BLACKS」の展示スペースへと移動する。特に,マーク・ロスコやバーネット・ニューマンの赤い作品や,フランク・ステラのあらゆる色を使った彩度が高い作品を見た後に,基本,無彩色の「BLACKS」を拝見するというのは,なかなか目の快楽である。

部屋に入ると,杉本博司の劇場シリーズが壁に掛けられ,白い革張りのいすが部屋の中央にいくつか置かれている。劇場シリーズでは,その作品すべてで,作品の中央あたりに真っ白いスクリーンがあって,暗がりの中に劇場の舞台周辺が映っている。8×10で撮影されたモノクロ作品で,常に決まった方法で撮影されている。それは舞台のスクリーンで映画を1本,映写するのだが,映画を始めるときにシャッターを開いて,終わったときにシャッターを閉じるという,いわゆる長時間露光だ。そのため,スクリーンは白く映り,その周りの映画の光が反射した部分だけが,フィルムに映りこむ。

この部屋を抜けても,まだ杉本作品がある細長い部屋があり,そこを見終わると,ルイーズ・ニーヴェルスンの黒い彫刻の部屋に移る。照明が落としてあって,全体的に暗いところに,黒い大きなモノがある感じ。黒く塗装されているので、素材がよく分からない部分もあるが全て木彫とのこと。箱を積み重ねたような作りで、本棚のような感じがするが、すべて黒い。この存在感はなかなか。

最後がアド・ラインハートは黒い抽象画。まあ、赤い抽象画があるんだから黒い抽象画あってもいいんですが、どうもそういうレベルではない。最初に版画集があって、色見本のような感じがしたけど、よく見ると、微妙に色が違っていて、十字に分かれていたりする。この色の差がぱっと見て分かるものではないのだ。さらに部屋に入っていくと、高さが1.5mぐらいの油彩画があって、いくつかは、ぱっと見たところ全部、黒く見える。たまたま学芸員の方がいらして、説明を聞いて、しゃがんだりして角度を変えながら見ていくと、ある瞬間から十字架風の区切りが見えてくるようになる、ってのをお聞きして、実際にやってみたら、その通りでした。黒という色も奥が深いのね、と思わせる瞬間だ。

ちなみに、カタログは2000円。小さいけど、色の感じもでていて、よろしいかと思います。

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2011.01.22

「杉本博司 アートの起源|科学」を見る

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丸亀城を見たあと、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館に向かう。杉本博司の「アートの起源」(2010/11/21〜2011/11/6、950円)を見るためだ。アートの起源は1年間を4期に分けて開催する。期間ごとにテーマが決まっていて、最初に「科学」(〜2011/2/20)、次に「建築」(2011/3/6〜5/15)、そして「歴史」(2011/5/29〜8/21)、「宗教」(2011/8/28〜11/6)と続く。「1年まるごと杉本博司」とのこと。

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館は地方美術館とは思えないような、展覧会を企画するところで、過去に見たかった展覧会もかなりあった。やなぎみわ展とか、ヤン・ファーブル展とかね。今回の杉本博司展もかなり、エッジの立った企画だ。特に一人のアーティストに対して1年間、貸し切りというのは過去に例を見ない。まあ、たまたま、神戸まできたので、四国までよることができた。なかなか、このためだけに丸亀に来るってのは難しいと思っていたが、この内容なら、またきてみたいと思ったところ。大阪や京都まで、来たら、丸亀に寄って見るのはありだな、と思う今日この頃。

さて、この美術館、場所はJR丸亀駅から徒歩1-2分と本当に駅前。設計は谷口吉生で、入り口の前が広々として、気持ちがいい。奥行きもあって、全体に広くて、天井も高い。ちなみに夜はライトアップされている。

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展示室は3つあって、常設の猪熊弦一郎作品が1部屋、残りの2部屋を杉本博司展に使っていた。猪熊弦一郎の作品もなかなか面白い。今回は50歳を過ぎてから、20年間滞在したニューヨークで制作した作品を中心に展示していた。あとオモチャのコレクション。常設展は撮影可能なので、一応、撮っておきました。


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さて、杉本展は「今、読めない先を見るためには、振り返らなければならない時がきたのだ」として、「起源」をテーマにしたとのこと。最初の「科学」では写真を発明したタルボットや電磁気学の祖ファラデーへのオマージュといったところ。さまざまな色のグラデーションをポラロイド写真に印画した50枚の作品と、自ら電極を持って放電した結果を印画紙に記録した「放電場」シリーズを展示している。50枚並ぶポラロイドもきれいだったけど、放電場シリーズの方はこの場所のためのインスタレーション込みの作品で大きさが魅力。巨大な木製の階段とその先に雷神さんのような像が飾られているし、実際の放電も拝見できる。ポラロイド写真は2階、放電場は3階で展示。展示を見終わって、展示会場の外にでると下のような感じ。

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さて、この展覧会、さらにユニークなのが「アートの起源サポーター」というサービス。美術館の受付で申し込めば、以下のバッチと千客万雷カード10枚がもらえる。千客万雷カードがあれば入場料20%引きとなる。まあ、このカードを配って、応援してちょうだい、というもの。ちなみに、カタログは1年まとめて作成するらしい。今は、ありません。

Succession_of_visitors

追記
カタログですが、ようやく予約が始まったようです。amazonで見たところタイトルは「アートの起源」。お値段は2730円とのこと。版元は新潮社らしい。(2012/1/5)

さらに追記。
カタログは販売開始となりました。タイトルは「アートの起源」。早速、購入しました。でもこの本は図録というものではない。一応、会場で撮影された写真があるけど、帯にもあるように「懐古的美術評論集」っていう感じです。杉本博司さんと中沢新一さんの対談付きです。(2012/1/22)


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