カテゴリー「千葉市美術館」の記事

2019.11.18

千葉市美術館で「目  非常にはっきりとわからない」を見る

Ph01_20191118220101

千葉市美術館で「目  非常にはっきりとわからない」(1200円:2019/11/2-12/28)を見た。「」はグループの名前で、現在の中心メンバーはアーティスト荒神明香、ディレクター南川憲二、インストーラー増井宏文の3人らしい。「手法やジャンルにはこだわらず、展示空間や観客を含めた状況、導線を重視」とのこと。今回の展示は「本展では、展示物に加え、鑑賞者の動きや気づきを含む千葉市美術館の施設全体の状況をインスタレーション作品として展開し、突き放された現実としての美術館に人々を誘います」とのこと。

つまり、どういう感じかというと、なかは準備中な感じで、作品らしきものは梱包されたままだったり、展示されている作品を見ていると、いかにも工事業者風の方々が作品にカバーを掛けたりしている。ちなみに下の写真は1階の「さや堂」ですが、これからなんかある、という感じですが、既に会期中です。

Ph02_20191118220101

こちらは8階かな。展示スペースではなく、展示会場の前のスペースですが、いろいろと工事中な感じです。

Ph03_20191118220101

面白いのは8階と7階で展示しているのだけど、その一部には同じ作品が展示されていた。なんかデジャブ感があって、だまし絵のような、仕掛けがあって面白かった。ちなみに、正規の入場料を支払った場合は、会期中何回でもはいることができる、とのこと。つまり、どんどん変わっていく可能性がある展示、ということらしい。また行くか、と思ってます。

えーと、展示会図録は予約中でした。税込2800円で12月末に発売予定とのこと。

追記
もう一回、行って見ました。最初に行ったときはできあがってなかった部分もできあがっていたように見えます。で、8階と7階は同じモノが並んでました。でも微妙に違う気がします。これって間違い探しかもしれない、と思う今日この頃です。まあ図録で答え合わせができるのかもしれないです。

追記 その2
図録はまだ届きませんが、目次情報は公開されてました。Twitterによると2月発送だそうです。

追記 その3
図録が届きました。1月16日です。Twitterの千葉市美術館のアカウントによると「12/13(金)までにご購入いただいた方へは、昨日1/15(水)にレターパックにて発送させていただきました。」とのこと。

Ph04_20200116221801

よく分からないのだけど、複数の大きさの違う冊子を1冊に無理矢理綴じた感じです。

Ph05_20200116221801

上の写真はかがり綴じの部分。段差があります。

Ph06_20200116221801

というわけで、1ページ目のめくるとこうなります。さて読んでみるか。

 

| | コメント (0)

2019.10.14

千葉市美術館で「ミュシャと日本、日本とオルリク」を見る

Ph02_20191013233201

千葉市美術館で「ミュシャと日本、日本とオルリク」(1200円:2019/9/7-10/20)を見た。「この展覧会は、アルフォンス・ミュシャ(Alfons Mucha 1860-1939)とエミール・オルリク(Emil Orlik 1870-1932)というチェコ出身のふたりのアーティストに光をあて、ジャポニスム(日本趣味)の時代に出発した彼らの作品と、彼らから影響を受けた日本の作家たち、さらにはオルリクに木版画を学んだドイツ語圏の作家たちを取りあげ、グラフィックを舞台に展開した東西の影響関係を観察しようとするものです」(プレスリリースから)とのこと。アルフォンス・ミュシャは知っていたけど、エミール・オルリクは知りませんでした。二人はチェコ出身というだけで、特に交流があったということもなさそうです。

実態はよくわかりませんが、エミール・オルリクについての企画展を考えた学芸員さんが、オルリクだけでは絵の点数も話題も持たないので、同じチェコ出身の人気者ミュシャを絡めてみた、という感じのする展覧会です。ちなみに上の写真がミュシャの作品(のコピー)で下の写真がオルリクの作品(のコピー)です。見れば分かりますが、この2人の作家はほぼ共通点がない。

Ph01_20191013233201

共通点はないけど、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパで受け入れられたジャポニズムのなかで、制作してきたわけだから、完全に関係ないとも言えない、という曖昧な前提から始まっているようにも見える。

まあいいんだけど、面白いのは、ミュシャの影響を受けた日本人アーティストはかなりいて、浅井忠、黒田清輝、和田英作といった、当時、日本からフランスに渡っていた画家達は、ミュシャのファンで、その作品を日本に持ち込んでいるそうだし、黒田清輝に私淑していた杉浦非水は、もろのその影響を受けている。あと、与謝野鉄幹が創刊した文芸誌「明星」の表紙はミュシャ風で、印象深いのは藤島武二が描いた与謝野晶子の歌集「みだれ髪」の表紙もミュシャ風であることだ。その辺は今回の展示で、よくわかりました。

そんな日本に、浮世絵に興味を持ったオルリクが日本にきて「浮世絵版画の彫りや摺りといった技術を学び、多色摺りの木版画を制作しました」(プレスリリース)とのことで、それがこの展示会の後半の見どころらしい。面白いのは、オリクルは明星に作品を掲載していて、藤島武二とも交遊があった、ということ。この時期の明星はかなり面白い雑誌だったらしい。

というわけで、この展示で知ったことをざっとまとめると
・ミュシャの版画の縦長のフォーマットは浮世絵の柱絵の影響かもしれない。
・杉浦非水、藤島武二は日本でのミュシャ派であった。
・ヨーロッパや米国のアーティストが来日して、浮世絵の彫摺を学んでいた。その一人はエミール・オルリク。
・米国のアーティストではヘレン・ハイドも浮世絵を学んだ一人。女性です。作品は繊細でなかなかよろしい。
といったところ。

| | コメント (0)

2019.06.12

千葉市美術館で「板橋区美×千葉市美 日本美術コレクション展 ―夢のCHITABASHI美術館!?」を見る

Ph01_8

千葉市美術館で「板橋区美×千葉市美 日本美術コレクション展 ―夢のCHITABASHI美術館!?」(200円:2019/6/1-6/23)を見た。プレス向けの資料によると「千葉市美術館と、改修工事で休館中の板橋区立美術館、2 館の古美術コレクションをご覧いただく、コラボレーション企画! もしも 2 館が合体した「CHITABASHI(ちたばし)」美術館」があったとしたら?というコンセプトのもと、1 度限りの自由な空間をお楽しみください」とのこと。板橋区立美術館は2019年6月29日にリニューアルオープンする。その直前に収蔵作品のなかで江戸期のものを中心に千葉市美術館に持ち込んだ企画です。テーマは以下の4つ。

・江戸琳派とその周辺:江戸琳派中心に明治の作品も取り上げるのだけど、宗達の作品も2つ展示。酒井抱一と鈴木其一そしてその後継者達。
・分類不能な個性派。板橋からは雪村、狩野典信、宋紫山、椿椿山。千葉からは鳥居清倍、懐月堂安度、渓斎英泉といったところ。
・幕末・明治の技巧派。岡本秋暉、渡辺崋山、柴田是真、小原古邨。意外なのは小原古邨の作品が千葉にあるところ。
・江戸の洋風画:秋田蘭画というか小野田直武、司馬江漢、亜欧堂田善、石川孟高。

とまあ、盛りだくさんです。江戸琳派の展示で、久しぶりに千葉の収蔵品で鈴木其一の《芒野図屏風》を拝見できたのが一番うれしかったのですが、 酒井抱一の《大文字屋市兵衛像》、其一と松本交山の共作《繭玉図》あたりが興味深かった。

《大文字屋市兵衛像》は板橋の収蔵品で、下の写真のような絵です。新吉原京町の高名な妓楼大文字屋の主、市兵衛の姿絵です。面白いのは、どう見ても抱一のタッチではないこと。浮世絵師西村重長による古版画の模写、というものらしい。なぜ模写かというと、 抱一は大文字屋市兵衛とは会ったことがなく、大文字屋市兵衛の息子とは親しかった、という背景があるらしい。

Ph03_14

もう一つ、《繭玉図》は一見地味なんです。右側にグレーの鳥居の柱があって、上の方に木の枝が括られていて、木の枝には白い繭が刺さっている。白い繭は餅を繭玉に見立てたもので、縁起物だそうです。そこを鳥居の裏側から、赤い目の白い鼠がのぞいてます。そして、鳥居の柱に「火之用心」の札がはってあるのだけど、この札が松本交山による書なんですね。松本交山は谷文晁の弟子で、其一よりは一回り年上らしいのですが、その当たりの交流が面白い。あと、この作品、個人蔵で、千葉とも板橋とも関係がないようなんですが、どうしてここに展示されているのかも気になる。

ちなみに、狩野典信による巨大な《大黒図》、宋紫山の妙にリアルで気味が悪い《鯉図》が印象的でした。

あと、作品の所蔵元も気になりました。作品リストに所蔵先が書かれているのですが、板橋区美と千葉市美以外のものがあって、「2 館の古美術コレクション」と謳っているわりにはちょっと違うなあと思うわけです。なんせ個人蔵もあるしね。これは、おそらく2つの美術館に寄託しているとか、地域的に関係が深いとか、そういうことがあるかもしれない。というわけで柏市にある摘水軒記念文化振興財団や嬉遊会コレクションは千葉美の関連団体で歸空庵は板橋美関連らしい。

余談ですが、板橋区美は建物の所にある、変な標語のようなモノが有名なんですが、それが1階の入口のあたりに飾ってありました。

Ph04_8

さらに、余談ですが、千葉市美術館が入っている建物は千葉市中央区の区役所でした。今回、行ってみたところ、区役所は移転したらしく、千葉市美術館が拡張されるようです。収蔵品はかなりあるはずなので、これらが常設として拝見できるようになるとしたら、なかなかいいのではないかと思います。

Ph02_9

| | コメント (0)

2019.04.21

千葉市美術館で「メアリー・エインズワース浮世絵コレクション」を見る

千葉市美術館で「オーバリン大学アレン・メモリアル美術館所蔵 メアリ・エインズワース浮世絵コレクション−初期浮世絵から北斎・広重まで」(1200円:2019/4/13-5/26)を見た。タイトルにあるオーバリン大学アレン・メモリアル美術館は米国のオハイオ州にある。米国の東の北です。そしてメアリ・エインズワースという方はアメリカ人女性で1867年(慶応3年)生まれで1950年(昭和25年)に亡くなっている。エインズワースは実業家の娘で、お金持ち。そして大学を卒業しているので、教養もある方のようです。明治39年(1906年)に来日して、初めて浮世絵を購入。そこから1500点に達するコレクションを作り上げた、とのこと。

今回の展示は、1500点のコレクションから200点を選んで紹介する、というものです。興味深いのが歴史的な順を追っていけるように作品が収集されていること。浮世絵の初期の作品、17世紀後半の菱川師宣や奥村政信から始まって、18世紀中頃の鈴木春信、18世紀後半の喜多川歌麿、東洲斎写楽、そして19世紀の北斎、広重、国芳と重要な作家の作品がコレクションされている。

浮世絵について特に詳しいワケではないのですが、今回の展示で初めて知ったことが2つありました。

まず、「柱絵」という判型。今回の出展作品には妙に細長い浮世絵がいくつかあって、その説明には「柱絵」あるいは「幅広柱絵」とある。初期の浮世絵の場合、幅が17cmと25-26cmの2種類があって、25cmぐらいのを「幅広柱絵」という。長さの違いは、元になる紙を二等分するか、三等分するか、だそうです。これが18世紀の鈴木春信の作品あたりなら幅が約
11cmで、これは紙を四等分しているためだそうです。ちなみに縦の長さは70cm前後です。こういう縦長の作品が、カタログで確認すると11点ありまして、過去に見たことはあるのかもしれませんが、これだけ大量に見るのは初めてでした。ちなみに、エインズワースが初めて購入した浮世絵は幅広柱絵で、石川豊重の《提灯と傘を持つ佐野川市松》という作品でした。

もう一つは「紅嫌い」。説明によると「着彩に紅色を用いず、墨、紫、緑、黄などごく絞った色数を用いた作品」のことだそうで、「独特の清澄な趣が好まれ天明~寛政年間(1781-1801)に流行した」とのことです。鳥文斎栄之の《風流やつし源氏 朝顔》1点だけなんですが、とても目立っていた。

併催で「千葉市美術館所蔵作品展 受託記念  ピーター・ドラッカー・コレクション水墨画名品展」というのもやってました。前に見たことがあるなあと思ったら、2015年春に開催していたそうです。ピーター・ドラッカーといえば「マネジメントの父」と呼ばれている経営学者ですが、水墨画のコレクターでもあって、そのコレクションを日本の企業が購入し、千葉市美術館に寄託したとのことで、それを記念して、お披露目したということのようです。浮世絵と水墨画を名品を拝見できて、1200円は安いな、という感じです。

| | コメント (0)

2018.10.01

千葉市美術館で「1968年 激動の時代の芸術」を見る

Ph01

 

千葉市美術館で「1968年 激動の時代の芸術」(1200円:2018/9/19- 11/11 )を見た。今から50年前、1968年(昭和43年)というのは政治的にも、文化的にも転換点となるような年だったらしい。「日本でも、全共闘運動やベトナム反戦運動などで社会が騒然とするなか、カウンターカルチャーやアングラのような過激でエキセントリックな動向が隆盛を極めました」とのこと。万博の準備期間中でもあり、アンチ万博派がいたりと、いろんな思惑が渦を巻いていたらしい。

 

ここでは現代美術を中心に「激動の1968年」「1968年の現代美術」「領域を超える芸術」「新世代の台頭」という4部構成で展示してます。「激動の1968年」ではこの時期の事件、学生運動、成田の三里塚闘争の写真作品などによる解説と、それに関わる作品が展示されてます。赤瀬川源平の「櫻画報」の原画とか、木村恒久のフォト・コラージュ、そして橋本治による駒場祭のポスター。「とめてくれるな おっかさん 背中のいちょうが 泣いている 男東大どこへ行く」で有名なヤツです。改めて見ると、パワーのある作品が、ごった煮にされている。まあ、この時期は朝日ジャーナルが元気で、少年マガジンは横尾忠則さんが表紙を担当していたわけで、本当に入り乱れている感じです。

 

「1968年の現代美術」では赤瀬川源平さんの「千円札裁判」と「万博とアンチ万博」。「領域を超える芸術」では演劇と舞踏、マンガ、イラストレーション。つまり寺山修司と唐十郎の演劇ポスター、土方巽の舞踏を撮影した細江英公の写真。ちなみに唐十郎の状況劇場のポスターは横尾忠則が中心で、寺山修司の天井桟敷のポスターは宇野亜喜良が中心という感じだった。マンガではつげ義春の「ねじ式」が登場。タイガー立石の作品も展示されてます。もう一つ、サイケデリック・ムーブメントもこの時期だそうで、田名網敬一の作品や、その当時のディスコ「MUGEN」での映像投影を再現してます(写真下)。

 

Ph020

 

「新世代の台頭」では「もの派」と「プロヴォーグ」。もの派は石、紙、木材、鉄板、ガラス板などの素材をそのまま組み合わせて作品とした一派で、そのきっかけとなったのが1968年に発表された関根伸夫の《位相―大地》という作品。カタログによると「1968年10月~11月に開催された『神戸須磨離宮公園現代彫刻展』で朝日新聞社賞を受賞した、直径2.2m、高さ2.7mの円筒形の土の塊からなる作品である。関根は、展覧会場となった神戸須磨離宮公園の一角に、巨大な穴を掘り、掘った土を積み上げることにより、それを作品として発表した。展覧会終了後に土は穴に埋め戻され、作品は現存していない」とのこと。ここでは、その作成中の映像を流していた。もう一つの「プロヴォーグ」は先鋭的な写真雑誌で評論家の多木浩二と写真家の中平卓馬が発案し、高梨豊や森山大道などの作品を取り上げている。

 

まあ、なんというかお腹いっぱい、という感じです。一方で、今までバラバラに見てきた、赤瀬川原平作品やタイガー立石、横尾忠則、つげ義春といった方々の作品が1968年という時代でいったんまとめることができる、というのがかなり新鮮でした。

 

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017.11.29

千葉市美術館で「没後70年 北野恒富展」を見る

Img_9140

 

千葉市美術館で「没後70年 北野恒富展」(2017/11/3- 12/17:1200円)を見た。北野恒富は1880年に金沢に生まれ、大阪で活躍した画家。1947年に67歳に亡くなっている。展覧会の説明では「東京の鏑木清方、京都の上村松園と並ぶ、大阪を代表する美人画家として活躍を続けました」としている。鏑木清方と上村松園の個展を見たが、北野恒富の個展を見たことはなかった。断片的に、いくつか代表作を見てきただけで、なかなか全体像がわからないままでした。そういうわけで、今回の展覧会はかなり期待してました。そして、うれしいことに、ほぼ期待通りのものでした。

 

北野恒富は日本画で一貫して美人画を描いているのだけど、前期と後期で作風ががらりと変わっているように見えた。北野恒富の作品で見た覚えがあるのが、前期の代表作、大正2年(1913年)に描いた2曲1双の屏風絵「道行」と後期の代表作、昭和11年(1936年)に描いた2曲1双の屏風絵「いとさんこいさん」。

 

「道行」は近松門左衛門の「心中天の綱島」をテーマにした作品で、カタログによると「遊女小春と紙屋治兵衛の死出の旅が象徴的に描かれている」。屏風には男女2人と、からすが金地の上に3羽描かれていて、黒と金の色彩の対比が印象深く、退廃的で死の臭いが漂っている。

 

一方、「いとさんこいさん」はどろどろしたものがなく、色調も明るい。おそらくは十代のお嬢さんが2人、談笑しているところを描いている。カタログの解説によると「本作は、谷崎潤一郎作『細雪』と共通する世界観があることがしばしば指摘されてきた」としている。

 

つまり明治末から大正期は「画壇の悪魔派」と呼ばれ、退廃的で妖艶な女性を描き、昭和期はモダンですっきりとした、「はんなり」した作風に変化している。この中間にあるのが大正の後半で、今回の展示では第2章「深化する内面表現」で展示されている。特に「淀君」という大阪城の落城直前の淀君を描いた作品がもの凄く、ぞっとする。作風も日本画的になっていく。悪魔派から「はんなり」に時間をかけて移行していくのが見えてくる。

 

今回の展示では、恒富のもう一つの顔である、グラフィックデザイナー的な面についても、展示している。ほとんどが美人画を中心にしたポスターで、ビールとか日本酒、和服の宣伝です。このなかで、森村泰昌が恒富の作品を再現した高島屋のポスターも展示されているのが興味深いところ。

 

カタログには森村泰昌の、同じ大阪で美術家として生きた、北野恒富についてのエッセイも掲載されている。小出楢重と谷崎潤一郎、北野恒富について、論じているのですが、これもなかなか面白い。谷崎の小説の挿絵を小出も恒富も描いていて、この3人は縁が深いようだ。森村は細雪を取り上げながら、谷崎、小出、恒富がいた大阪の雰囲気を説いているのですが、大阪に縁の無い私にはあまりよく分からない。分からないけど、細雪を読めば、少しはその世界に近づけそうな気がする。というわけで、細雪を読んでみようかと思う今日この頃です。ちなみに千葉市美術館の展示は展示替えがあるので、後半もいってみようかと思います。

 

 

 

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017.09.20

千葉市美術館で「ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信」を見る

千葉市美術館で「ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信」(2017/9/6- 10/23:1200円)を見た。ボストン美術館の所蔵品から鈴木春信作品と関連作品、約150点で構成されている。最大の見所は、ボストン美術館の収蔵品ならではの保存状態良好な作品の発色の良さだろう。まあ、きれいなものだ。そして、改めて鈴木春信という絵師の不思議なところを浮き彫りにした展示でもありました。

 

構成としては、春信登場の直前、先行して登場した奥村政信(1686-1764)、石川豊信(1711-85)、鳥居清広(生没年不詳)と、初期の、錦絵ではない春信作品から始まる。これが宝暦期(1751-64)。次が錦絵が登場する明和期(1764-72)のはじめ、絵暦交換会での作品。あとはテーマ別に見立絵、恋人達、日常生活、江戸の風俗と並んで、最後に春信の亡くなった1770年以降の春信フォロワーの作品となる。

 

春信は、1725年に生まれたらしいのだが、正確なところは分かっていない。没年は1770年で、デビューは1760年。不思議なのは10年と短い活動期間で多色摺りの錦絵を完成させ、さらにテーマを広げてていること。デビューしたのが36歳と遅いのも不思議だ。そして多色摺りが始まるのはデビューから5年後の1765年である。活動期の終わりの方では、実在の評判娘や江戸の名所を積極的に主題とする作品を作成し、その後の浮世絵の方向性を決めてしまった。

 

図録の解説を読むと、どうやら春信は「生活のために筆を執る必要はなく趣味が高じて浮世絵師になった可能性もある」とのことで、お金と時間はあったらしい。また、ご近所に平賀源内がいて春信と交遊していたらしく、平賀源内が多色摺り完成に関わったのかもしれない。

 

千葉市美術館では、春信展に合わせて、千葉市美術館の所蔵作品で構成する「江戸美術の革命−春信の時代」を併せて開催している。「多色摺版画で浮世絵の歴史に革命を起こした鈴木春信が活躍した宝暦後期から明和期、それはまさに江戸美術の革命期でもあったのです」として、若冲や曾我蕭白の作品を展示している。春信と若冲や蕭白が同時代の絵師である、というのは、言われてみればその通りですが、あまり私の頭の中では結びついていなかったので、少し感心してしまいました。

 

春信展は千葉市美術館のあと、名古屋ボストン美術館(2017/11/3-2018/1/21)、あべのハルカス美術館(2018/4/24-6/24)、福岡市博物館(2018/7/7-8/26)へと巡回する、とのことです。

 

 

 

 

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015.10.31

千葉市美術館で「杉本博司 趣味と芸術-味占郷/今昔三部作」を見る

Main

 

 千葉市美術館で「杉本博司 趣味と芸術-味占郷/今昔三部作」(2015/10/28-12/23:1200円)を見た。タイトルだけだとよく分からないのだけど、杉本博司の美術展を2つやっているということでした。千葉市美術館は中央区役所との複合施設で7階と8階が展示スペース。7階が「杉本博司 趣味と芸術-味占郷」、8階が「杉本博司 今昔三部作」を展示している。まあ、2部構成ですね。

 

 ただ、普通の2部構成と違って、2つの美術展なのでカタログも2種類ある。下の写真の左側の派手な方が「趣味と芸術-味占郷」のカタログとなる「趣味と芸術 謎の割烹 味占郷」。こちらは出版社から市販されている書籍で、書店でも購入できます。版元は婦人画報とかMEN'S CLUBとかを出しているハースト婦人画報社。お値段は2808円。一方、「今昔三部作」のカタログは右側のシンプルな書籍。こちらは普通の美術展カタログで、お値段1500円です。

 

Catalog1

 

 展示ですが、よかったですよ。今昔三部作は「ジオラマ、劇場、海景三部作の、最古作と最新作を展示する」というもの。海景、劇場、ジオラマの順に拝見する。海景は1980年の「カリブ海、ジャマイカ」から1995年の「スペリオル湖、カスケード川」で6点。劇場は7点あって、1978年の「U.A. プレイハウス、ニューヨーク」から2014年の「テアトロ・デイ・ロッツイ、シエナ」。ジオラマは1976年の「ハイエナ・ジャッカル・ハゲタカ」から2012年の「オリンピック雨林」の3点。照明を落として、スポットが作品にあたるようしていて、暗い中に作品が浮き上がる感じ。下の写真のような感じです。

 

Ph01

 

 

 すべてのプリントが「ニューヨークの杉本スタジオからお借りした16点の大判プリントにより展観します」とのことで、どれも大きい。だいたいが119.4×149.2cmという大判です。

 

 「趣味と芸術-味占郷」のテーマは床の間です。解説によると「2013 年秋より、『婦人画報』誌上で「謎の割烹 味占郷」を連載してきました。この連載は、毎回「味占郷」という架空の割烹に文化人や芸能人を招待し、その人物や季節にあったしつらえと料理でおもてなしするという企画です」とのこと。本に書いてあるけど、連載では匿名でやっていて、この本が書店に並んで、ようやくお披露目となったらしい。ついでに引用すると「ゲスト、床のしつらえ、料理が三位一体となったこの連載は、本年 12 月号で最終回を迎えます。展覧会「趣味と芸術-味占郷」では、そこで紹介された床のしつらえを杉本の手により再構成するとともに、料理を盛った器の一部もあわせて展示します」。

 

 

 見所は、杉本氏が蒐集した掛け軸と器、そして須田悦弘が作成した植物が添えられること。ちなみに、2015年春にMOA美術館で開催された「尾形光琳300年忌記念特別展『燕子花と紅白梅』光琳アート -光琳と現代美術-」でお披露目された「月下紅白梅図」も展示されていて、そこには須田悦弘作の梅の花が置かれている。この梅の花は尾形光琳300年忌記念特別展では、光琳の紅白梅図屏風の前に置かれていた(写真下)。その時は、梅の花はガラスケースの中にあったのだけど、今回はケースのない状態で拝見できます(写真下)。というわけで須田悦弘ファンも必見ですね。

 

Ph02

 

Ph03

 

追記 最終日にも行きました。なんと撮影可能とのこと。Webサイトを見たところ、2015/11/11から許可がでたとのこと。というわけで、撮影した画像を追加しておきます。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.05

千葉市美術館で「赤瀬川原平の芸術原論展」を見る

Akasegawa

 

 千葉市美術館で「赤瀬川原平の芸術原論展」(12/23まで、1000円)を見た。しかし、10月28日から開催したのだけど、赤瀬川さんがお亡くなりになったのが10月26日、というあたりになんとも言えないモノを感じます。ともかくご冥福を祈ります。

 

 この展覧会では、赤瀬川さんの制作した作品をおそらくはほぼ網羅している。まあ、改めて、この偉大なアーティストというか、ともかくいろんなことをやってきた才人の幅の広さと、常にどこかへ移動し続けるエネルギーみたいなものを感じます。あんまり同じ事しないのね。

 

 改めて見ると、自分が初めて赤瀬川作品に触れたのが、ペンで書かれた漫画風のもので、確か現代詩手帳のコラムだった気がする。気がつくと鉛筆がなくしてしまうのだけど、その喪失がいつ起こるのか、ぎりぎりまで削って使った鉛筆をガラスの瓶に入れて観察する、といった話だった。今回の展覧会でそのちびた鉛筆が大量に入ったリアルなガラス瓶を見て、私と赤瀬川作品の出会いは。これだなあと少々感動してしまった。

 

 そんなもんだから、ネオダダ、ハイレッドセンター、千円札裁判あたりまでは歴史的事実として知っているだけで、特に今回の千円札裁判の展示はかなり興味深く、じっくり見てしまった。あと櫻画報などの作品群も原画が展示されているので、こちらもじっくり拝見した。しかし、櫻画報などの名作がすぐには読めない、書籍として販売されていないのは、いかがなものだろう。

 

 あと、今更ながら、赤瀬川さんの作品のタイトルがいいなあと思いましたよ。天才なんだな。巨大な千円札を描いた「復讐の形態学(殺す前に相手をよく見る)」とか「植物的無意識が含むπの採集」とかは秀逸である。やはり、トマソンから路上観察学会へと向かうあたりも、リアルタイムに見てきたけど、改めて拝見して、再度、真似したくなった。

 

 さて、ちなみにカタログは重い。ページ数が442、図版数が420。それで2300円。終わりの方に「赤瀬川原平について—関係者の証言」って章があって篠原有司男から荒俣宏、山口晃といった方々が1ページほど書いているんだけど、見方によっては追悼文的で、これはこれでいいんじゃないの、と思うわけです。

 

Cgiba

 

 上の写真が、会場のある千葉市中央区の区役所。美術館の展示室は7階と8階にある。ちなみに高解像度版はこちら

 

Chiba2

 

 会場への入り口前の柱。若き日の赤瀬川さんの姿がありました。

 

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012.11.12

「須田悦弘展」を見る

千葉市美術館で「須田悦弘展」(12/16まで,1000円)を見る。久しぶりに発見する楽しみを味わいました。

 

須田悦弘の作品は木彫に色づけした植物で,かなりリアルなモノ。それを,あるときは専用の巨大な箱の中に入れ,観客が一人ずつ,その箱の中にはいって見ることもあれば,ある展示スペースに3点ある,という情報だけを観客に提示して,観客はそれがどこにあるかを探し回る,というのもある。最近は古美術の展示に合わせて仕掛けるというのもあって,例えば,藤の木を描いた屏風の足下に小さな藤の花を一輪(?)忍ばせるというか,ちょんと置いておく,というのもある。ちょうど,その絵からこぼれてきたようですな,という感じである。

 

今回は,その3つのパターンをすべて味わえる,なかなか気合いの入った展示でありました。

 

まず,8階の展示室1に入場すると下のような感じ。暗い中に展示の箱があって,一人ひとり靴脱いで,拝見するようになってます。ちなみに写真はクリックすると,かなり大きく表示されます。カメラはLumix LX7です。

 

P1000365

 

入るとこんな感じ。

 

P1000360

 

こういう展示がいくつか続きます。

 

壁の上の方に何気なくライトアップされていたりします。見逃さないように。

 

P1000369_2

 

8階の最後の展示,展示室4は,展示ケースには何もなく,パンフレットには雑草が2点とスミレが1点あるとのこと。雑草のうちの一つは例えば下の写真のように展示。

 

P1000377

 

一番,見つけにくいのはスミレですな。ほぼ同時に入場した方々のほとんどいが見逃したまま,立ち去っていきました。ちなみに,こんな感じでひっそり咲いてます。

 

P1000382

 

続いて,下の7階に移動して「須田悦弘による江戸の美」(200円)を拝見。こちらは千葉市美術館のコレクションから須田悦弘が選んだ作品を展示してます。

 

前半は浮世絵。展示の仕方がすばらしく,壁に垂直に吊すのではなく,腰の高さぐらいの台に水平に置かれています。その台を一つひとつライティングしているので,浮き上がるように見えてくる。

 

P1000383

 

浮世絵を水平に置いて,上から見る,というのは,あまり経験がないけど,例えば国芳の「相馬の古内裏」の骸骨がかなり立体的に見えてくるのは,意外でした。

 

P1000388

 

ちなみに,ここでも,須田作品があって,長澤蘆雪の「花鳥蟲獣図絵」の雀のあたりに米粒とか,あったりします。

 

P1000397

 

最後に1階の「さや堂ホール」。旧川崎銀行千葉支店の建物を再現したもので,天井も高く,広々としている。ここには4つ作品が配置されてます。まあ,真ん中の白いバラは分かりやすいけど,2つある桔梗がどこにあるのか,よくわかんないかも。まあ,1つは以下のような感じです。

 

P1000411

 

追記
11月26日,ようやく図録が届いた。価格は1700円。千葉市美術館のサイトには11月18日に図録が入荷した,とあったので,そろそろ来るかと待っていたんですが,意外と時間がかかった。

 

中身はなかなかなもの。表紙まわりは黒く,小口とかも黒く塗られている。黒漆を塗ったような感じだ。須田自身が撮影した今回のインスタレーションと,千葉市美術館の学芸員との対談,これまでの作品の写真集という構成で,特に過去の作品の主な写真が載っているのは,資料としても価値がある。

 

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)