カテゴリー「奇想の系譜」の記事

2019.02.16

相国寺承天閣美術館で「温故礼讃―百花繚乱・相国寺文化圏」を見る

所用で関西へ。所用の前後に美術館を巡って見る。まずは相国寺承天閣美術館で「温故礼讃―百花繚乱・相国寺文化圏」(800円:II期 2019/1/13-3/24)を見た。相国寺は室町幕府第三代将軍足利義満によって創建された臨済宗相国寺派の大本山。京都御所の北、同志社大のちょっと先にある。地下鉄の烏丸線今出川駅下車徒歩8分程度のところにあります。相国寺の総門から入って、まっすぐ行って、庫裡に突き当たったら右に折れると下の写真ような感じになる。まっすぐいったところに美術館がある(高解像度版はこちら)。

Ph02

美術館の入口に至る道の脇には、石塔がいくつかあるのだけど、なかなかユニーク。下の写真の石塔は、狛犬のようなものが中間にあって、その頭の上に塔が載っかっている。下の方に刻まれている何やら棒のようなものを持っている人物も、かなり大雑把でいい感じです(高解像度版はこちら)。

Ph03

Ph03_1

しばらく行くと入口があって、入ってすぐのところは下の写真のようになってました(高解像度版はこちら)。左の方に下足があって、そこで靴を脱ぎます。鍵付きの下足棚があって、そこに靴を入れて入場。ちなみにスリッパとか、そういうものはありませんので、靴下のまま、あるいは素足でペタペタと歩いていくことになります。

Ph01

ペタペタと歩いてなかへ。入場券を購入して、第一展示室へ。相国寺の創建に関わる、足利義満の肖像画、中国からわたってきた、墨跡とか絵画が並んでます。ここでは長沢蘆雪の《獅子図屏風》が印象的。右隻に伏せた獅子、左隻にちょっと体を起こした獅子が描かれている。二頭の獅子がこれから戦おうとしているところです。うねるような筆致が面白い。ちなみにこの展示スペースには鹿苑寺境内に建つ、金森宗和造と伝えられる茶室「夕佳亭(せっかてい)」を復元している。

第一展示室からでて、廊下を抜けて、第二展示室へ。第二展示室には伊藤若冲による水墨画、重要文化財「鹿苑寺大書院障壁画」の一部を移設している。《葡萄小禽図》と《月夜芭蕉図》が常設されている。ここでは俵屋宗達の《蔦の細道図屏風》、応挙の《大瀑布図》、柴田是心の《滝桜小禽図》が印象的。京都で活躍した応挙や宗達が収蔵されているのは分かるけど、江戸末期から明治の画家で、東京が本拠地の是心の作品があるのは意外でした。

ちなみに応挙の《大瀑布図》は、巨大な滝を描いているのだけど、縦362.8×横143.8cmととても大きい。その上、写実的に描いていいるので、圧倒されます。夏場なら、見るだけで涼しいでしょう。是心の《滝桜小禽図》も滝の図ですが「描き表装」というものだそうで、本来、裂地で表装するところを、裂地を手書きで表している。そして、桜の枝は表装の上に迫り出し、滝の水は前面に流れ出す、という表現が可能になる。かなりダイナミックな作品です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.11.04

東京ステーションギャラリーで「横山華山」を見る

Ph01

東京ステーションギャラリーで「横山華山」(1100円:2018/9/22-11/11)を見た。横山華山は1781年(天明元年)または1784年(天明4年)に生まれ、1837年(天保8年)に没した絵師。主に京都で活躍した。曾我蕭白や与謝野蕪村が死んだ頃に生まれ、20歳になるあたりで伊藤若冲が死んでいる。ちなみに北斎は華山のなくなった12年後に死んでいる。まあ、活躍した時期は北斎と同じころ、という感じ。

「曾我蕭白に傾倒し、岸駒に入門した後、呉春に私淑して絵の幅を広げ、多くの流派の画法を身につけました。そして、諸画派に属さず、画壇の潮流に左右されない、自由な画風と筆遣いで人気を博しました。その名声は日本中に広がり、ほかの絵師たちにも大きな影響を与え、門人も抱えました」とのことで、なぜ、ほぼ埋もれた作家になってしまったのか、不思議なところです。

実際、展示の冒頭で曾我蕭白と横山崋山の「蝦蟇仙人図」が並んでいて、その横に「寒山拾得図」に置かれているのですが、崋山のことを知らないと3作品とも蕭白作品に見える。蕭白のタッチってそうそう真似のできるものではないと思うのですが、蕭白的なモノを完全に手に入れている、その技巧的な部分で、絵のうまさを感じます。

華山の才能は、あらゆる画風を吸収して、自分のモノにしていくところにあると思われます。今回の展示では、人物画、花鳥画、風俗画、山水画とさまざまな分野の絵が並んでいるのですが、どれも面白い。例えば《唐子図屛風》に描かれる子供達は蕭白の唐子とは違って、子供らしく可愛いい。《虎図押絵貼屛風》という12カ月分の虎、つまり12種類の虎を描いた作品は、描き分けがうまく、岸駒という虎絵の名手に入門した以上のモノが感じられる。

今回の展示では《紅花屛風》と《祇園祭礼図巻》が見どころとされています。

《紅花屛風》は紅を作成する工程を紅花の栽培から加工まで描いたもので、一種のドキュメンタリー作品です。6曲1双という巨大な作品ですが、かなり精密に描写している。実際、紅花の産地、武州(現在の埼玉県上尾市、桶川市のあたり)や南仙(宮城県)まで行って取材しているそうで、描写は正確らしい。

もう一方の《祇園祭礼図巻》は祇園祭を取材したドキュメンタリーです。上下巻約30mの絵巻で、祇園祭に登場する山鉾をすべて描いたもの。山鉾だけでなく、それを曳く人達の様子も生き生きと描いています。

まあ、これだけの描き手が、どうして埋もれてしまったのか、というのは気になるところですが、おそらくは流派に属さないことや、ほぼオールジャンル的に描いているため、特徴抽出が難しいあたりに、あるような気がします。一方で、《紅花屛風》と《祇園祭礼図巻》から見て分かる、ドキュメンタリー的な手法は、昔は評価しにくかったのかもしれません。あと、今回の出展リストを見ていて思うのは、ほとんどが個人蔵で、美術館に常設されているものが少ないというのも気になります。単純に露出する機会が少ない、ということですから。ちなみに、名前が横山大観と渡辺崋山にかぶっていて、浸透しなかったかも、という見方もあるようです。まあ、そういう側面もあるかも。

東京ステーションギャラリーのあとは宮城県美術館(2019/4/20-6/23)、京都文化博物館(2019/7/2-8/17)に巡回するそうです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017.04.27

東京藝術大学大学美術館で「雪村 奇想の誕生」を見る

Sesson1

東京藝術大学大学美術館で「雪村 奇想の誕生」(2017/3/28- 5/21:1600円)を見た。雪村単独の展覧会を見るのは2002年以来です。2002年に見たのは「雪村展 戦国時代のスーパー・エキセントリック」。千葉市美術館で開催された(その後、松濤美術館、山口県立美術館、福島県立美術館へ巡回)。おそらくは、このとき初めて雪村作品をまとめて見たのだけど、そのとき以来、雪村ファンです。

今回の雪村展は、作品の面では、2002年の展示と大きくは変わらない。龍の頭に乗った「呂洞賓図」(大和文華館が所蔵)、鯉のヒゲを手綱のようにつかんで鯉にまたがる「琴高仙人・群仙図」(京都国立博物館が所蔵)、風に吹かれて軽々と浮遊する「列子御風図」(アルカンシエール美術財団が所蔵)といった作品は今回も拝見できる。ただし雪村作品の数という点では、2002年の方が多かった。図録を見る限り、2002年の展示では134点、2017年は94点です。というわけで前回ほどは、雪村の作品点数は多くないです。まあ点数が多ければいい、というわけでもないけど。

今回、2017年の展示の特徴は、雪村の影響を受けた作家の作品を数多く展示している、というところかと思います。特に尾形光琳については、コーナーを作って、光琳の描いた布袋の絵を見せたりしてます。確かに光琳の布袋は、雪村の布袋に似ている。そして、光琳の紅白梅図屏風の元になったのでは?といわれている「欠伸布袋・紅白梅図」(茨城県立博物館が所蔵)も展示されてます。この絵は左右に梅の絵、真ん中にあくびをする布袋という、よく分からない構成ですが、言われてみれば、紅白梅図の発想の元かもしれない。図録によると、欠伸布袋・紅白梅図は光琳が江戸にいたころに、ある大名が所有していて江戸にあったそうで、光琳が見ている可能性は高いらしい。

展示替えがあるので、もう一度、見に行こうかと思います。ちなみに、滋賀県のMIHO MUSEUMに、巡回する(2017/8/1~ 9/3)そうなので、興味のある方はぜひ、というところかと。

ところで、この展示のキャッチというかコピーとなっている「『ゆきむら』ではなく『せっそん』です」はどうなんだろう、という感じ。まあ、そうなんだけど、ほかにないの? というか、いらないなあと思います。それから、ついでに気にいらないのが、ミュージアムショップで、クレジットカードが使えないこと。いい加減にしてほしい。

追記
大きな展示替えが4月25日にあって、そこそこ入れ替わっていたので、再度、見に行きました。各地の美術館や博物館から借りてきているし、会場の広さの面でも、しょうがないのだろうけど、前期に見たら割引にするとか、もう少し考えていただきたい。まあ、それでも大きな鯉にまたがった「琴高仙人・群仙図」とか、根津美術館所蔵の「龍虎図屏風」(5/7まで)が拝見できたので、いいんじゃないでしょうか。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016.06.03

神戸市立博物館で「我が名は鶴亭」を見る

Ph01

神戸市立博物館で「我が名は鶴亭―若冲、大雅も憧れた花鳥画(かっちょいいが)!?」(2016/4/9-5/29:1100円:写真上の高解像度版はこちら)を見た。神戸市立博物館は三ノ宮や元町から徒歩10分のところにある。場所は旧居留地。江戸末期に海外へ開港したときに外国人が住み、そのための建物が立った場所です。建物は横浜正金銀行神戸支店として建設されたものだそうです(写真下:高解像度版はこちら)。

Ph02

さて、鶴亭(かくてい)ですが、1722年に長崎で生まれ、1785年に江戸の下谷池之端で亡くなった絵師で黄檗宗の僧侶。20才のころ、長崎で、熊斐(ゆうひ)に南蘋風(なんぴんふう)花鳥画を学び、黄檗宗の僧侶としても修行。25-6才で還俗して大阪・京都で絵師として活躍し、江戸にも進出、30代から40代は大阪で絵師として人気を博す、といった方です。時代的には若冲や池大雅とかぶっていて、池大雅とは親交があったらしい。晩年は再度、黄檗宗の僧侶に戻り、絵も描きながら、住持にもなっている。まあ画僧という職業かも。

鶴亭の師匠となる熊斐は、中国人画家、沈南蘋(しんなんぴん)が長崎に来日したときに、唯一、絵の教えを受けた人で、鶴亭も南蘋風花鳥画を得意とする。この南蘋風花鳥画は若冲の「動植綵絵」のベースになるもので、大阪で活躍した鶴亭の影響を若冲が受けている可能性はかなり高い、とのことだ。実際、若冲と関係の深い木村蒹葭堂とも深く交友している。

まあ、そういう絵師なので、そこそこ面白いのではないかと、旅の途中で寄ってみたのですが、予想を超えて面白かったです。実際、鶴などの鳥の絵や鳥と花の組み合わせなどは精密かつ多彩で華やかなものでした。それだけでなく、水墨画もなかなか達者な感じです。筆の勢いで描いた作品から精密に描いた作品まで、幅広い作風を見せてくれます。そういった幅の広さは若冲に通じるところがあります。展示でも、同じテーマを描いた鶴亭作品と若冲作品を並べて見せてまして、この二人の向いている方向は同じだな、と感じました。ただ、若冲の方が金銭的にも時間的にも、より粘着的に執着して絵を描ける環境にいたんだろうな、とも思いましたが。

そういう意味では、若冲さんの絵がどのような歴史的な流れの中で、出来上がってきたのかが、おぼろげに見えてきた、というのも収穫かもしれません。若冲さんが、単独で、あの境地にたどり着いたわけではなく、沈南蘋の作品が長崎から鶴亭などの絵師を通じて、大阪・京都に拡散し、そこをベースに若冲の作品に結実する、というイメージが見えてきました。

それから、鶴亭が黄檗宗の僧侶であることや、若冲が晩年に黄檗宗の石峯寺の門前に住んでいて、墓も石峯寺にあること、などを見ていると、黄檗宗をベースにした美術の流れを見てみたい、という気になりました。

そして、実は、一番気になるのは、鶴亭が江戸で亡くなっていること。それも池之端で亡くなっている。鶴亭はかなりの頻度で旅にでていたことがうかがえるのだけど、鶴亭が所属していた黄檗宗という集団と、鶴亭のもう一つの顔である俳諧師という集団は、旅することと、どう関わってくるのか。この辺も気になる。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016.05.02

府中市美術館で「ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想」を見る

Ph01


 府中市美術館で「ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想」(2016/3/12-5/8:700円)を見た。府中市美術館は京王線府中駅から徒歩20分ぐらいのところで、都立府中の森公園の敷地のなかにある。この公園は旧米軍府中基地の跡地を利用した公園で、そこそこ広い。美術館はその北の端にある。バスでも行けますが、まあ天気は悪くなかったので、桜を見ながら歩いていきました。

 建物は2階建てで、展示スペースは2階にある。今回の展示のキーワードは「ファンタスティック」だそうだ。カタログでは「本展の目的は、この現代の日本において、あえてこの片仮名の言葉を通して江戸絵画の魅力を再発見することにある」としている。そういう意味では江戸絵画の奇想系、若冲とか蕭白、蘆雪の作品が登場するし、司馬江漢の遠近法を持ち込んだ絵とか国芳の地獄図もある。幻想系もあるし、見たことのないはずの動物、例えば虎、や行ったことのない風景、中国や西欧の絵画もある。範囲は広い印象だ。その意味で飽きないし、そこそこ発見もあった。

 その上、4月10日までと4月12日からの前期と後期に分かれて、作品が完全に入れ替わる。そのため、なんとまあ入場券には2回目の半額割引券付きでした(下)。 ちなみにスマホアプリの「みゅーぽん」を使って20%引き、つまり540円で入場しました。後半は350円で拝見できるというので、電車賃はかかっても行く気になってます。

Ph00

 展示構成は
 1.身のまわりにある別世界
 2.見ることができないもの
 3.ファンタスティックな造形
 4.江戸絵画の「ファンタスティック」に遊ぶ
 となっております。

 1の身のまわりにある別世界、ではいわゆる花鳥風月的な絵を中心に扱ってます。まず月を描いた絵から始まり、「太陽」「気象」「黄昏と夜」「花」といったジャンルが並んでいきます。終わりの方で、「天空を考える」というコーナーがあって、原鵬雲による気球の絵「気球図」(徳島市立徳島城博物館)が展示されたりしますので、単純な花鳥風月というわけでもないようです。前期の絵では山口素絢の「四条河原夕涼図屛風」が印象深かった。「6月7日から18日の間、夕暮れに催される四条河原の夕涼み」を描いた6曲1隻の大作で、幅369×高さ166.7cmもある。風俗画なんですが、いろんな階級の人物が描かれ、物売りの屋台のほかに人魚の見世物小屋とかあって面白い。そして、遠景の処理でシルエットだけをぼんやりと描いていたりして、近代的な表現手法を感じます。

 2の見ることができないもの、では「海の向こう」「伝説と歴史」「神仏、神聖な動物」「地獄」「妖怪、妖術」の構成。西洋の風景を描いたガラス絵かた始まり、南蛮図屏風と続く。ここだと英一蝶の「かぐや姫図」が好きです。墨で描かれた竹から、色鮮やかな十二単みたいなのを着たかぐや姫が現れて、天に向かう感じです。原在中の「飛竜図」も印象に残りました。顔と頭は竜なんだけど他は鯉、という寸足らずな感じの竜らしきものが描かれている。解説によると、鯉が滝を登り切って、竜へと変身する途中を描いた、とのことで、珍しいものらしい。絵の精密な感じに目が持って行かれました。

 3のファンタスティックな造形、では「視点を変えて『ファンタスティック』と感じさせる『造形』に注目したい」としている。ファンタスティックな造形とは、金、霞といったものらしい。ここでは「柳橋水車図屛風」を例に解説されている。柳橋水車図屛風は川、水車、橋、そして柳が描かれる。そして不思議なことに橋や水車、空は金箔とか金泥で描かれる。そこにくねくねとした柳と川が、銀か何かで描かれる。銀は酸化して黒くなっている。黒から金へのモノトーンで画面が構成されているのが素敵だ。

 4の江戸絵画の「ファンタスティック」に遊ぶ、ではちょっと分類不能な絵が並ぶ。どれもユニークでいい作品です。前期では巨野泉祐(おおのせんゆう)の「月中之竜図」が印象に残った。月の中に竜がいる絵なのだけど、濃紺のバックに金で竜と雲を、銀で月を描いている。竜が妙に精緻に描いているのがいい。

 全体としてキュレーションの腕の良さが感じられる展示です。ほとんどが個人蔵の作品なので、見逃すと、滅多にお目にかかれない可能性がありそうで、後半を見に、府中に行く気になってます。カタログは2400円で、最近見たカタログの中では、最も解説の充実した、かつ読みやすいものでした。買う価値はあると思います、

 企画展示のあと、常設も拝見。「明治・大正・昭和の洋画」というタイトルでした。高橋由一の桜の絵「墨水桜花輝耀の景」と長谷川利行の「花」が印象的。鶴岡政男、小山田二郎、桂ゆきとかもあって、わりと多彩です。谷中安規の版画もあって、面白かった。

追記

後半も見てきました。前半に見たチケットのおかげで入場料が半額になり350円です。安いです。それにほとんど混んでいないし、ゆっくり拝見できます。

後半で気になったのは、まず小泉斐(あやる)。前半にも3点、展示されていて気になっていたのですが、後半で展示された「竜に馬師皇図屏風」はかなり独自なモノでした。横長の画面にとぐろを巻く竜と馬師皇という仙人が穏やかに笑っているのが描かれている。竜とバックのモヤモヤした感じは曾我蕭白風で、人物は多少気味が悪いけど蕭白の描く狂人風ではないけど、なんとなく変な笑い顔です。ちなみに、この穏やかだがどこか気持ち悪い笑い顔は、小泉斐の他の作品にも登場する。解説によると、曾我蕭白に影響を与えたという高田敬輔の孫弟子にあたるそうで、その関係で蕭白との関連があるのかもしれない。

このほか、長沢蘆雪の「朧月図」、河鍋暁斎の「波乗り観音図屛風」がよかったんだけど、「釜から出る駕籠図」という作者不明の作品も気になりました。「釜から出る駕籠図」は縦長の画面で、下半分に火がたかれ湯気がでている巨大な釜から駕籠かき2人と提灯を持った女性、誰か乗っている駕籠があらわれたところで、上半分が逆さまに描かれた男性5人がその駕籠を見上げている絵です。解説によると「幽霊は逆立ちする格好や生きている人とはさかさまになった様子で描かれることが多いという」とあり、ここでは現世を逆さまにして、幽霊を普通に描いているらしい。なんとも不思議な絵でした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016.05.01

東京都美術館で「生誕300年記念 若冲展」を見る

上野の東京都美術館で「生誕300年記念 若冲展」(2016/4/22-5/24:1600円)を見た。伊藤若冲は1716年に生まれて1800年に没している。というわけで、2000年には没後200年を記念した展覧会が京都国立博物館で開催されて、今の若冲ブームが始まった。そして今年は、生誕300年で、東京で大規模な展覧会を開催した。それが「生誕300年記念 若冲展」です。

Img_1367
事前の宣伝もかなりあって、かなり混雑するだろうなあ、と思ったんだけど、やっぱり混んでます。行くときは、WebサイトのトップページTwitterアカウントを事前に見ておいて、傾向を確認しておいたほうがいいでしょう。

チケットはオンラインチケットなどで購入しておきましょう。若冲展のサイトにチケット購入の案内があります。入場券がないとチケット購入の行列に並んで購入してから、再度、入場の行列に並ぶことになります。今回は、前売り券を購入して、朝の8時45分ごろに並びました。チケット購入窓口は9時半に開くので、チケットを持っていない方々はどんなに早く来ても入場の行列に並ぶことはできません。私が見に行ったときは8時45分ぐらいで100人程度は並んでいたと思われます。そして9時半の段階では1000人程度の待ち行列にはなっていたのではないかと思われます。そのときもチケット購入まで5分待ち程度の行列はありました。ちなみに見終わって、出てきたとき、入場待ちは50分になってました。

どうしてこんなに混むのかというと、その理由は若冲の代表作である動植綵絵の全30幅と釈迦三尊像3幅が一つの部屋に飾られることにあります。一つの部屋で一望できます。これだけでも大変なことなのに、国内と海外にある代表作が集められて、ファンなら見ないわけにはいかない状態になっているのでしょう。特に動植綵絵の全30幅と釈迦三尊像3幅の組み合わせが東京で展示されるのは初めてです。その前は2007年の京都の相国寺にある承天閣美術館で飾られただけで、そうそうないことなんです。

動植綵絵は宮内庁三の丸尚蔵館が所蔵していて、釈迦三尊像は相国寺の所蔵で、持ち主が分かれてますから、簡単には同時に展示できないわけです。皇室の持ち物である動植綵絵自体もそんなに簡単に見ることができない作品で筆者が見たのは2006年に宮内庁三の丸尚蔵館での展示でした。このときは全部まとめて展示するのではなく、何回かに分けて展示してました。といううわけで、全部まとめて展示されるというのは、本当に滅多にないことなので、これは混むよね、と思うわけです。

混雑するのは分かっていたので、2回、行くことにしています。会期中、5/8までと5/10からで展示替えがあるので、当然、前期と後期をそれぞれ拝見したいと思います。ということで、展示替えのある作品はじっくり見る。メインは動植綵絵の全30幅と釈迦三尊像3幅ですので、そこはさらにじっくり見る。今回の展示では地下1階、1階、2階の3つの会場に分かれていて、動植綵絵と釈迦三尊像は1階に展示されています。地下1階は比較的、見たことのある作品が多いので、ざっと流してみて、速やかに1階に上がり、動植綵絵を拝見して、2階も見たことがある作品が多いのですが、ブライスコレクションがあるし、MIHO MUSEUMから「象と鯨屏風図」がきてるし、大阪・西福寺の「蓮池図」は見たことなし、でしっかり見ておきたいと思ったわけです。

Picture0067

ちなみに、展示替えの関係で5/8以降、展示から消える作品は
地下1階
・糸瓜群虫図
・雪中雄鶏図
・鳳凰之図
・月に叭々鳥図
2階
・雪梅雄鶏図
・百犬図
・三十六歌仙図屛風(前期が右隻、後期が左隻)
といったところです。

「百犬図」は美術手帳、「月に叭々鳥図」は芸術新潮の表紙を飾っていたこともあって、なかなか印象深い作品ですので、お見逃しないようように…。そういえば、見逃したくない作品として注意したいのが、地下1階に展示された「孔雀鳳凰図」。この作品は大正15年に「國華」という美術研究誌に掲載されて以来、行方不明になっていたが2015年、83年ぶりに発見されたもの。経緯はよくわかりませんが、「大正15年の掲載当時は、広島藩主浅野家12代当主・浅野長勲(1842~1937)侯爵の所蔵」とのことで、大名家とのつながりがうかがえる作品としても貴重、というモノだそうです。図録によると「昭和8年に他の多くの浅野家所蔵の絵画とともに国の重要美術品に認定されている。…その後の所有経路は不明なまま、今回の再浮上となった」とあります。作品的には動植綵絵に図柄がそっくりな絵があるので、動植綵絵の試作として描かれたらしい。

個人的には、佐野市立吉澤記念美術館所蔵の「菜蟲譜」を再び拝見できたのが、少しうれしかった。この作品は2009年に栃木県佐野市葛生にある佐野市立吉澤記念美術館で公開されたときに見ている。若冲作品としては珍しい巻物で、若冲77歳の作品。動植綵絵と比べると色彩は枯れた感じですが、洗練されたユーモアを漂っています。この絵巻に描かれている、ギョロ目の蛙が好きなもので、再開できてよかった。ちなみに、2011年に国庫補助・県費補助を受けて解体修理をした、とのことで、かなりきれいになってました。

さて、結局、1階の動植綵絵は一巡して見た程度で、あまりじっくりとは拝見できませんでした。さすがに早く来て並んだ方々は、目標を1階の動植綵絵にしていたらしく、あまり地下1階は混んでなかったので、ここは思ったよりもしっかり拝見できたのですが、1階はあっという間に人が増え、まあそれぞれ33点の絵を1回は見たのでまあいいかと、2階に移動。どうも動植綵絵に夢中の方々が多いらしく、2階は人もまばら。各作品を独占しながら拝見できました。その後、売店に移動。ここも、おそらくは相当に混雑すると思われますが、オープンしたばかりなので、お店の人の方が多いくらいでした。

図録とグッズですが、図録は展示作品を全て収録してます。3000円ですが、解説が豊富で、図版のクローズアップも多く、お得な感じです。表紙は動植綵絵の「梅花群鶴図」のアップと「芍薬群蝶図」のアップです(写真下)。グッズはいろいろありましたが、期待していたiPhoneのケースがなく、残念です。Tシャツとか団扇とかがありましたけど、結局、マグネットを購入しておきました。このほかお酒がありましたが、どうなんでしょう。私は購入しませんでした。

Img_1377

ちなみに、グッズの販売コーナーでは1万円以上じゃないとクレジットカードは使えないので、ご注意ください。今時、カードを使うのに金額制限があるなんて、相当に時代遅れな感じがします。あと、行列に並ぶとき、結構、屋根のないところにいるので、日傘はあったほうが良さそうです。このあたりの、都美術館側の手配はいまいちでした。


【追記】
展示替え後の後半も見てきました。

相変わらず、混んでます。普通、展覧会は後半になるほど混みますので、別に驚きませんが、強烈です。金曜の夜は20時までやっていますので、昼ほどは混まないと見込んで、行ってきました。通常、閉館の30分前までに入場しないといけないので、19時20分に行列に並びました、この時点で90分待ちです。この待ち時間が意外と正しく、21時少し前に入場。ほぼ最後尾だったので、という、わざと最後尾になって、徐々に人が引いてくのを待ちながら、拝見していきました。でも、割と後から入ってくる方々がいて、それは、退場する経路から、するりと抜けてもう1周しようという強者達でした。ちなみに21時半には追い立てられて、展示会場か退出させられました。ここでなんとなく見えてきたのですが、最終時間は入場最終時間での入場待ち時間に30分追加した時間であることでした。

ちなみに、以下の作品が後半、公開されました。

地下1階
・花卉雄鶏図
・梅花小禽図
・亀図
・虎図
2階
・果蔬涅槃図
・石峰寺図
・三十六歌仙図屛風(左隻)

注意したいのは、物販ですね。そこそこ、再入荷待ちの品物が目に付いたし、購入に時間がかかるらしく、ここにも長い行列ができてました。その上、図録は別の場所(美術館の屋外)で販売ということで、ここにも行列ができてました。なんか大変ですね。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015.10.09

千葉市立美術館で「唐画もん—武禅に閬苑、若冲も」を見る

Ph01

 千葉市立美術館で「唐画もん—武禅に閬苑、若冲も」(10/18まで、1000円)を見た。唐画とは、中国が文化的にあこがれの的だった江戸時代中期に、中国に由来するテーマや技法で描かれた絵、ということらしい。その唐画を描いた唐画師。まあ、この時代に狩野派とかじゃなくて、文人画とか山水画、南蘋派の絵画などを描いていた蕪村とか蕭白、若冲も唐画師ではあるのですが…、今回は大阪の唐画師として、墨江武禅と林閬苑をメインに取り上げ、合わせて京都と大阪の同時代の画家の作品も展示する構成となっている。そのおかげで、若冲、蕭白、蕪村などの作品が並んでます。

 リリースによると「全 150 点のうち、墨江武禅、林閬苑の作品がそれぞれ約 50 点、その他の作品を約 50 点展示します」とのことで、このところ若冲さんの絵を見てなかったので、若冲につられて見に行ったら、ほぼ何も知らないというか見た記憶があまりない、墨江武禅と林閬苑の作品を堪能した、という感じです。なかなか印象的でした。この二人に名前を覚えておこう、と思う今日この頃です。

 墨江武禅は月岡雪鼎に師事して、雪鼎風の美人画を描いているのだけど、山水画もなかなか細かくて素敵です。山水画の先にあるのが、占景盤という、鉢に盆栽に石や模型の家なんかを配した、ジオラマの小さいものなんですが、手先の器用さを感じます。

 林閬苑(ろうえん)は、作風がかなり若冲に近い感じで、墨だけで即興的に描いた作品が印象に残っている。当然、山水画とか孔子十哲みたいな中国的なスタティックな絵も手掛けてますが、南蘋派の絵も描いていて、こちらはダイナミックで色彩感覚も優れています。この辺りは若冲さんに通じるところがあるなあと思うわけです。ちなみに下の写真は閬苑の作品からつくった顔ハメ風の看板で、撮影可とのこと。

Rouen

 このほか、若冲の拓版画「乗興舟」とかを堪能し、初めて知った松本奉時という方の蝦蟇図とか象鯨図を見入っておりました。蝦蟇図は下のようなもの。これも顔ハメ風看板がいい感じです。ちなみに象鯨図は若冲の「象と鯨図屏風」の模写のようです。さらにちなみに、図録にある年表によると、若冲と松本奉時の没年が同じ1800年でした。どうも、そこそこ関係のある二人のようです。

Matumoto

 あと、耳鳥斎(にちょうさい)の地獄絵巻がよかった。地獄に落ちると、こういう目にあう、というのを描いている。本当は残酷なシーンがユーモラスなものになっていて、笑えます。

 この展覧会、大阪歴史博物館に2015年10月31日〜12月13日の日程で巡回する、とのことです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013.01.19

京都で若冲&琳派、そして須田国太郎展

P1000862

年始の挨拶にいった神戸から京都に移動して美術館へ。1月3日に開いているのは、細見美術館京都市美術館。上が細見美術館(フルサイズの画像はこちら)。JR京都駅から地下鉄で東西線東山駅へ移動して,そこから徒歩で7-8分。この美術館はコレクションもいいんだけど,建物が面白い。1階から入場して地下1階・2階へと展示室が展開されている。地下へ降りながら,美術品を見ていく,という独特の展示構成が私は好きだ。

今回は開館15周年記念特別展Ⅰ「江戸絵画の至宝-琳派と若冲-」(3/10まで,800円)ってのを開催していた。なんとなく漫然と見てしまったけど,なぜか江戸琳派の酒井抱一と鈴木其一があったのが印象に残ってます。京都で江戸琳派か?とでも思ったのかな。このほか江戸後期の大阪で活躍した中村芳中という作家も気になった。名前は覚えておこう。

細見美術館では,入館のときに入場料と引き替えにシールをもらって,どこか見えるところに貼っておくんだけど,このシールは,京都近美や京都市美術館へと行くのなら,捨てないこと。京都近美と細見,京都市美術館と細見は「相互優待」ってのをやっていて,団体割引の料金になる。まあ100〜200円安くなる。ちなみに細見美術館は江戸絵画の至宝展はWebサイトに優待券を掲載していたので,それを印刷して持って行った。これで200円引き。細見美術館でこの優待券を使い,相互優待を利用して京都市美術館も100円引きというのが今回の作戦である。

P1000869

そこで京都市美術館へ(写真上:高解像度版はこちら)。ちなみにもう一つの相互優待している京都国立近代美術館は現在,改修中です。3月15日まで休館だ。京都市美術館では「須田国太郎展 没後50年に顧みる」(2/3まで,1000円)を拝見した。須田国太郎は京都大学で美学・美術史を学んで,そこから画家への道を進んだ美術家。かなり独特のタッチで,暗いんだけど深い色調が印象的な作家だ。東京国立近代美術館が収蔵している「書斎」ぐらいしか知らないのだけど,この作品が気に入っているので,見に来ました。大学時代の作品から絶筆までほぼ網羅して展示しているので,どういう作品を描いてきたが,よーく分かった。まあ,動物を描いた絵が気に入りましたね。

P1000867

ところで,京都市美術館の建物も興味深い。昭和8年11月に設立された美術館ですから,今年で創立80年になる。建物はたぶん,設立以来のものなんでしょう。京都市美術館のWebサイトの解説によると「 設立の機縁となったのは、昭和3年に京都で挙行された天皇即位の大典であり、その記念事業として、関西の財界はもとより多数の市民の協力を得て「大礼記念京都美術館」との名称で開設されました」とある。京都市美術館の門のところに,文字が消えて読めなくなっているプレート(上の写真:高解像度版はこちら)があるけど,読めないところは「大礼記念」のようだ。

今回の展覧会は1階の右側を使って展示している。まあ,ちょっと古いなあ,とは思っていたけど,80年とはね。確かに天井は高めなのはいいけど,入り口が狭くて,混雑するような展覧会だと運営は難しいだろうなあ。あとトイレが入り口付近になくて,なぜか展示会場の奥にあるのが不思議であった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012.04.21

「ボストン美術館 日本美術の至宝」を見る

東京国立博物館で「ボストン美術館 日本美術の至宝」を見た。上野の東博では6月10日まで、入場料は1500円。見所はたくさんあるんだろうが、まずは吉備大臣入唐絵巻と曾我蕭白の作品だろう。特に曾我蕭白の作品は、巨大な襖絵「雲竜図」、諸々渦巻く「風仙図屏風」などが拝見できる。特に雲竜図は、今回の展示に合わせて、きれいに修復されている。まあ、見ないと損だよね。

会場は例によって、平成館の2階。階段の左側が第1会場になっているが、それは無視して、逆周りで拝見する。Webで見た限り、全体が6つのブロックに分かれていて、5つめが曾我蕭白だったので、右側の第2会場の真ん中に蕭白の作品ならんでいるはず、と思ったら、なぜか6つめの「第6章 アメリカ人を魅了した日本のわざ-刀剣と染織」が先にきて、曾我蕭白の作品は最後にありました。まあいいか。

とにかく蕭白の「雲竜図」は圧倒的な存在であった。大きいし、タッチにも勢いがあり、迫力がある。よく見ると、あちこちに修復の跡が残っているけど、かなり丁寧に直していて、そのあたりもいい感じ。現代人の我々から見ると極めてマンガ的な龍の困った表情も気に入ってしまった。左半分と右半分のつながりが悪いのもこういった古い作品ならではの味だと思う。おそらくは中間に何かあったのだろうと、想像できるのは悪くない。

吉備大臣入唐絵巻は見るのに時間がかかるので、今回はパスして次回にまわすことにする。遠目に見た感じでは、かなり保存状態がいいようだ。

まあ、最後に売店によって散在してみた。まずカタログは2300円。蕭白の「雲竜図」がカバーになっている。解説も多いし、いいんじゃないでしょうか。それから、マグネット(下の写真)。初めて見たんですが、「きもの」の形をしたものです。これが1つ600円。

1

それから、「雲竜図」の携帯ストラップ、740円。

2

このほか、いろいろあったけど、カプセルトイで額装したり掛け軸のレプリカもあたりは、どうなんだろう。私は買いませんけどね。

Img_3132


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.12.21

京都で少し和む 石峰寺にいって見る

Sekihouji1

祇園から京阪電車に乗って南へ。深草駅で下車して東口へ。そこからざっと500mぐらいのところに、石峰寺がある。石峰寺は伊藤若冲のお墓と若冲が下絵を描いたという五百羅漢がある黄檗宗の禅寺だ。上の写真はお寺の門。門の前には、五百羅漢のスケッチ、写真禁止って札が立っている。一緒に行った相方によると、この前、春ごろ来たときはなかった、とのこと。まあ、300円の拝観料を払ったけど、写真は撮影せず、スケッチもせずに五百羅漢を拝見する。五百羅漢は素朴ですが300円です。

Skihouji2

さて、五百羅漢は撮影不可だが、若冲のお墓は撮影可。上が、その写真。墓の横に筆形の石碑がある。ちなみに若冲のお墓は相国寺にもあるが、そちらは生前墓、とのこと。実際は石峰寺のお墓に埋葬されている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)