カテゴリー「FACE」の記事

2019.03.13

損保ジャパン日本興亜美術館の「FACE展 2019」を見る

損保ジャパン日本興亜美術館の「FACE展 2019」(600円:2019/2/23-3/30)を見た。FACE展は2019年で7回目となる公募コンクールです。特徴は年齢と所属を問わないところ。そのためか、年齢はばらばらで、入選した方でも1944年生まれ(74)から2010年生まれ(8)までと幅広い。8歳の作品には驚かされたけど、手法とかもバラエティに富んでいて、かなり面白かった。以下、気になった作品についてメモっておきます。

まず、グランプリ作品。庄司朝美の《18.10.23》(写真下)。アクリル板の裏側に描かれた作品だそうです。なんとなくガラス絵っぽい気がしたけど、アクリル板でした。サイズも200×170cmとなかなか大きい。

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優秀賞をとった松崎森平の《東京》もユニークで漆を使っている。どうやら黒い漆のパネルを作って、その上に蒔絵で夜の東京を描いているらしい。写真に撮ると下のように、周りが映り込んでしまって、分かりにくいけど、夜の闇とか、雨にぬれたアスファルト道路の感じが生々しい。

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以下は賞をとっているワケではないけど、気になった作品について書いておきます。まず久世なつかの《未明(からだ×ハチ2)》。この作家の作品はシェル美術賞展2017で初めて見たのですが、同じテーマを描いてます。ちょっと不思議な感じになってきた。この先、どこに行くのかなあ、と気になるところ。

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川上椰乃子の《団欒》は日本画ですが、特に何か奇をてらったわけでもなく、ごく普通のモチーフを描いているのですが、現代的でもある。縦長のフォーマットもいいです。

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黒田恭章の《朝を待つ》は織物です。それも手織りです。最初の印象は細かな色使いで、どうやって描いたのか、とまあ絵だろうと思って見たのですが、なんか変で、説明を見ると織物でした。

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椛田ちひろの《Dark energy, #x》は紙にボールペンで描いている。その作品をアクリルのパネルで覆っているで、写真に撮ると、いろんなものが映り込んでしまう。線一本一本がとても細かいのだけど、この線が濃密に集まって、何かのうねりになっている。このうねりが面白い。

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吉増麻里子の《Garden》は筆のタッチが面白い。でまあ、よく見ると裸の人と服を着た人が倒れていて、意味が不明です。

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米蒸千穂の《遠浅の空気》は赤いもやに包まれている風景です。まあ、こういう風景はあり得ない。ただこの作家の作品は、青いもやとか、緑のもやに包まれた作品もあるようです。

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2019.01.31

東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で「絵画のゆくえ2019  FACE受賞作家展」を見る

新宿の東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で「絵画のゆくえ2019  FACE受賞作家展」(600円:2019/1/12-2/17)を見た。損保ジャパン日本興亜美術館では公募展「FACE」を実施していて、その受賞者の、受賞後の作品を紹介するのが「絵画のゆくえ」。2016年にも開催していおりました(そのときの紹介記事はこちらです)。今回は「FACE2016からFACE2018までの3年間の「グランプリ」「優秀賞」受賞作家たち11名の近作・新作約100点を展示し、受賞作家たちの受賞後の展開をご紹介します」とのこと。

一応、FACE展は2016年から見ていて、今回の展示でも、ほとんどの作品について、見た覚えはあった。展示はすべて撮影可でしたので、気になった作品を写真で紹介しましょう。

最初はFACE2016でグランプリを受賞した遠藤美香の作品。モノクロの木版画ですが、ともかく大きい。下の写真は《宙返り》というタイトルの作品ですが、そのサイズは縦182×横495cmです。和紙を何枚かを貼り合わせている。グランプリ作品の《水仙》も縦182×横91cmと大きかったけど、さらにそれを発展させた感じ。

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次が唐仁原希(とうじんばら のぞみ)の作品。 大きな目が印象的です。2016年の優秀賞を受賞した作品はベラスケス風の宮廷肖像画のような設定に美少女の顔をしたケンタウロスにまたがった王子を描いた《それでも僕は。》という作品でした。今回の展示で気になったのは下の《ママの声が聞こえる》。225×543cmの巨大な作品です。顔がたくさんなっている木です。

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アップにするとこんな感じ。

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松田麗香の作品は抽象画だけど、顔料で雲肌麻紙に描いたもので、材料的には日本画だけど、テーマはあまり日本画的ではない。それに単純なストライプではなく、小さな円を無数に描いて縞模様を表現している。不思議な絵です。

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下の作品は《そこにある それもまた84》。とても爽やかな感じ。


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青木恵美子の作品は、色彩が濃厚で惹きつけられる。下の作品はアクリル絵具で作った花びらをキャンバスに貼り付ける、という工程で制作されているそうだ。絵画というよりレリーフに近い。ちなみにタイトルは赤い方が《INFINITY Red》、青い方が《INFINITY Blue No8》。

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《INFINITY Red》をアップに撮影すると、こんな感じ。まあレリーフです。

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最後は仙石裕美の作品。2018年のグランプリ作品を描いた画家です(2018年のFACE展のレビューはこちら)。下の作品のタイトルは《西の水、東の水、水を運ぶ人々》。194×486cmと大きい。この方は、色使いが鮮やかで、独特の遠近感が楽しい。

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ちなみにカタログの解説でFACE展の審査をしている美術史家の本江邦夫さんの「いわゆる『公募展』について」という解説があって、少々興味深かった。そこでは、FACEを含めた公募展がどうして、面白いのか、ということが書かれていた。なるほど、という感じです。

あと、損保ジャパン日本興亜美術館は「2020年5月にビル敷地内に移転オープンする予定」とのこと。2019年9月30日から 2020年2月14日まで休館して、最後に「FACE展2020」を開催して、移転するそうです。


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2018.03.12

損保ジャパン日本興亜美術館で「FACE展2018」を見る

西新宿の東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で「FACE展2018 損保ジャパン日本興亜美術賞展」(2018/2/24-3/30:600円)を見た。FACE展は「本人制作の公募展などで未発表の平面作品」を募集して、審査のうえ、約70点の作品を入選作品として選び出し、そこからグランプリなどの作品を選出するコンクールです。今年で6回目だ。少なくとも2014年から見てます。登場する作品は立体ではなく、動画でもなく、共同制作の作品でもない。一応、厚さとか重さには上限がある。厚さは最大10cm、重さは30kgまでです。ちなみに年齢も国籍も不問で、日本で手続きができればOK、とのこと。年齢不問なので、過去には日本画で主に風景画を描いていた画家が現代的な人物画で出展したりした。ある意味、何が出てくるか分からないところがあって、面白い。

今回も、面白かった。まあ、優秀賞とかにピンとこない作品があったけど、グランプリはかなりユニークな作品だったし、入選した作品も好みの作品が多かった。グランプリは仙石 裕美の《それが来るたびに跳ぶ 降り立つ地面は跳ぶ前のそれとは異なっている》(写真下)。大きさは194×162㎝とそこそこ大きい。圧倒的なデッサン力です。長い縄で縄跳びをしている裸足の人物が妙に筋肉質で、おそらくは女性で、縄を回しているのが男性に見える。次の作品が見たいところです。

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次が優秀賞をとった松本 啓希の《生命の痕跡》。こちらは194×130.3cmと、グランプリ作品ほどではありませんが、そこそこ大きい。おそらくは鴨か何かなんでしょう。画面をはみ出すように描かれていて、妙な迫力がある。ちなみに日本画の画材を使っているところも気になる。

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今回の傾向で、面白かったのは、版画がいくつかあったこと。2016年のグランプリが遠藤美香の「水仙」という版画作品であったことが影響しているのかもしれない。まあ、グランプリでも優秀賞でもないのですが、割と面白い。下の作品は黒石美奈子の《対》。銅版画・エッチング・アクアチント、とのこと。

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そして、松井亜希子の《Blood circulates through the body》。こちらは「エッティング・アクアチント・ドライポイント」とあります。

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ほかにも版画作品がありました。現代美術としての版画をあまり見る機会がないので、新鮮な感じです。どこかの美術館で、現代版画の作品をまとめて紹介してくれないかな、と思います。是非よろしくお願いしたいです。

もう一つの傾向は、日本画の画材を使った作品がわりと増えたこと。数は確認していないけど、優秀賞の鳥の絵もそうですが、こちらも面白い作品がいくつかあった。下の作品は矢島史織の《Monster #15》。シェル美術賞展2015で準グランプリを受賞した作家です。

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それからもう1点。池上真紀の《命の器》。カバです。普通は日本画で描いてない対象ではないかと思います。

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日本画の画材を使って、現代的なモチーフに取り組んでいる作家の作品もまとめて見てみたい、と思うわけです。まあ、来年も楽しみです。

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2017.03.05

東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で「FACE展 2017」を見る

西新宿の東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で「FACE展 2017」(2017/2/25-3/30:600円)を見た。FACEは平面作品を扱った公募展。第5回となる。「年齢・所属を問わず」というのが方針で「『将来国際的にも通用する可能性を秘めた』品約70点を入選作品とし、その中から合議制でグランプリ、優秀賞、読売新聞社賞を選出し、各審査員が審査員特別賞を決定いたします」とのこと。そのためか、割と年齢がばらけていて、1940年生まれの方もいた。まあ、カタログにある審査経過を概説した資料によると入選者71名の平均年齢は38.8才とのこと。30代が最も多く30人、次が20代の19人となる。つまり基本、若手の作品で、見たことのない作家の作品を拝見できる。昨年も拝見しましたが、そこそこ楽しめました。写真撮影が許可されていたので、印象的な作品を以下に紹介しておきます。

まずグランプリ作品。青木恵美子の「INFINITY Red」。平面だけどかなり絵具が盛られていた作品。配色の妙、とでも言うのだろうか。赤とかオレンジの花が画面いっぱいに並んで、むせるような迫力がある。

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次が優秀賞をとった石橋暢之の「ジオラマの様な風景」。おそらくはお茶の水駅のあたりの風景なんでしょう。緻密なモノトーンなので、鉛筆で書いたかと思ったら、違ってました。ボールペンで書いたそうです。サイズは128×160cmと大きいです。カタログによると作者は1944年生まれで、2012年から個展をひらいている。おそらくは何かの仕事を引退してから、画業に打ち込んでいる方のようだ。


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こちらは版画。チョン・ダウンの「the burning house」。作品の中に3枚の絵が描かれているが、作品のタイトルは真ん中の作品を指しているように思える。この作家の作品は昨年の終わりに見た「シェル美術賞展2016」に入選していて、かなり気になった。続きが見たいところです。

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こちらは日本画とのこと。加納冬樹の「街の河」。この方は1951年生まれとのこと。川面のゆれる感じが見事に表現されている。

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こちらはアクリル、水彩でキャンバスに描いた作品。馬場俊光の「緑の風景-22」。緑色の濃淡だけで描いた作品が面白い。

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こちらは墨と胡粉で和紙に描いた作品。千冬の「MUBE II」。1956年生まれとのこと。藤棚が緻密に描かれているが、現実の風景ではないような気がする。その辺りが面白い。

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最後が焼絵。井伊智美の「残心」。焼絵とは「木材などの表面に熱した鏝などの道具で焼き跡をつけ、それによって絵や文様を描く技法」らしい。現代作家の作品では初めて見ました。かなり細かな描写ができていて、焼絵、恐るべしという感じ。

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なぜかモノトーンの作品に惹かれてしまった。あと、美大出身ではなく、本業を引退して、あるいは本業もやりながら、美術の教育を受けて作品を制作している方々が多くいるのは興味深かった。私も、引退したら絵に取り組んでみたいと思う、今日この頃です。

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2016.03.07

損保ジャパン日本興亜美術館で「FACE展 2016」を見る

 西新宿の東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で「FACE展 2016」(2016/2/20-3/2:600円)を見た。FACEは平面作品を扱った公募展。第4回となる。「「年齢・所属を問わず、真に力がある作品」を公募いたします。美術評論家を中心とした審査員の厳正な審査により、「将来国際的にも通用する可能性を秘めた」作品約70点を入選作品とし、その中から合議制でグランプリ、優秀賞、読売新聞社賞を選出し、各審査員が審査員特別賞を決定いたします。さらに、観覧者投票によりオーディエンス賞を授与いたします」というもの。

 この直前の企画展が「絵画のゆくえ2016 FACE受賞作家展」で、過去3回の受賞者の作品を展示したもので、見応えがありました。まあそのときの感想は「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で「絵画のゆくえ2016 FACE受賞作家展」を見る」に書きましたけど、写真撮影がOKということもあって、印象深いものでした。

 今回は、2016年版の受賞者の作品を展示したモノです。展示は最初の部屋にグランプリ、優秀賞、読売新聞社賞、審査員特別賞、合計9点が並び、次の部屋で入選作品63点が展示されてます。今回は写真撮影が許可されていたので、気になった作品は撮影しました。

 まずグランプリが下の作品。遠藤美香の「水仙」。なんと木版画です。サイズは縦182×横91cmと大きいです。大きいのに細かくパターンが刻まれていて、少しぞっとします。フォーマットのせいか竹橋の近代美術館に収蔵されている萬鉄五郎の「裸体美人」を思い出しておりました。

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 次が優秀賞で、唐仁原 希の「それでも僕は。」。物語が収められた絵画。ほかの作品はどんなものだろうか、と続きが見たくなる。

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 こちらも優秀賞で、抽象的な作品。松田麗香の「そこにある それもまた84」。遠目にストライプなのかと近寄ると、円をつなげたものが線に見えていた、という作品。顔料で雲肌麻紙に描くという、日本画の素材で抽象表現というのが、新鮮でした。

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 こちらは入選作品。信國由佳理の「厨file」。形が長方形ではない、技法が「エッチング・アクワチント・ペン・和紙他」となっているのも面白いのだけど、その前に緻密さに誘われて、近寄ったら、変わった手法だった、という感じ。個人的にはこういった緻密にゴチャゴチャした感じが好きなんだな、と…。

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 こちらも入選。吉井宏平の「夜光 2015」。具象なんだけど、実態は抽象なんじゃないかとという印象。おそらくは、こういった風景はあるのかもしれないが、そこにたどり着くことはできないと思わせる。絶対零度的な風景。

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 図録にあった講評では、数は増えたが、品質は落ちた、とのこと。グランプリなどはすんあり決まったらしい。まあでも、十分に楽しめました。ここで見た美術家の作品を、別のところで拝見できることを祈っております。

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2016.01.21

東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で「絵画のゆくえ2016 FACE受賞作家展」を見る

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 西新宿の東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で「絵画のゆくえ2016 FACE受賞作家展」(2016/1/9-2/14:600円)を見た。FACEは損保ジャパン日本興亜が主催している公募展。2013年から続くもので、年齢・所属を問わないあたりがユニークなところ。

 公募の審査内容ですが「美術評論家を中心とした審査員の公平な審査により、「将来国際的にも通用する可能性を秘めた」作品約70点を入選作品とし、その中から合議制でグランプリ、優秀賞、読売新聞社賞を選出し、各審査員が審査員特別賞を決定いたします。さらに、観覧者投票によりオーディエンス賞を授与いたします」としてます。

 おそらく2013年と2014年の受賞展示は見に来た覚えがある。今回は2016年の受賞展示かと思って美術館にきたら、違いました。「各回のグランプリ、優秀賞の受賞作家4名には、3年毎に開催予定の12名グループ展『絵画ゆくえ』にご出品いただきます」というモノで、受賞作家が受賞後、どういった活動をしているか、といったことを報告する展覧会でした。ちなみに2016年の受賞作は決まっていて、2016年2月20日から3月27日まで「FACE展 2016」で公開されます。

 公募の条件は「油彩、アクリル、岩絵具、水彩、版画、染色、写真、ミクストメディアなど」で「立体作品、映像作品、共同制作作品は不可」というところ。平面の作品です。特に傾向があるわけでもないのですが、独特な世界観を持っていて、技術的にも高度な作家が受賞している印象があります。

 今回は作品のほとんどが撮影OKでしたので、気になった作品を掲載しておきます。
 まず、FACE2013 優秀賞の永原トミヒロ。《UNTITLED 12-02》。ほかの作品も青のモノトーンで、人物は描かれていない町の風景です。ピントがあっていなくて、電信柱のような柱が異様に長い。何か不安をかき立てられる作品です。

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 FACE2014 優秀賞の二川 和之。《瞬差二態》と《秒差二態》。日本画の素材を使った現代アートです。風景画を描いてきた中堅の日本画家が、まったく違った作風に挑戦した、ということらしい。2つの視点で描いた一人の人物像を真ん中でつなぎ合わせている。背景は金箔や金泥で描き、人物は墨だけで表現するというのがいいです。

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 FACE2014 グランプリの川島 優。こちらもモノトーンな感じ絵で、独特のうつろな表情をもった少女を描く。独特のひんやりした印象が好きです。

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 FACE2013 優秀賞の近藤 オリガ。《希望の枯葉》。なんとなくヨーロッパ的な印象を持ったのですが、ベラルーシ共和国出身でした。幻想的です。

Kondo

 FACE2013 優秀賞の田中 千智。《この世の終わりに何が残るのか》。不思議な表情というか、表情のない表情をした人物が印象的です。

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